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     木の雑記帳  木造建築用語のお勉強

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彩色石綿セメント版 さいしょくせきめんせめんとばん カラーベスト類。石綿とセメントを混ぜて五角形状に成形したもので,色彩が比較的豊富で不燃材料なのが特徴。幅91センチ,長さ41.4センチ,厚4.5ミリの大きさで,重さも瓦の半分以下と軽くなっている。勾配の緩急に適応し,施工も容易。しかし,釘止めなのと重ねが大きく厚みが薄いため,日本瓦のように,欠損したらその部分だけ取り替えるというのには不合理(欠損部分の取り替えは,破れた板と釘を抜き取り,新材に接着剤ををつけて差し込む)。
⇒近年,素材の非石綿化が進行し,石綿の字を落として「セメント系カラー平板」の語を見る。
竿縁 さおぶち 天井板を下から支える細い部材の総称。天井板とは直角に配置される。45センチくらいの間隔に入れる。
差し金 さしがね ⇒ まがりじゃく
指し床 さしどこ 天上の竿縁が,床の間の正面に向かって直角に設けられているのを指し床という。古典的な建物にその例が残ると言われるが,竿縁が床の間に突き刺さるような形から,「切腹床」といって武家社会では避けられていたといわれ,これが現在でも伝わっている。竿縁を必要としない目透し張りの天井でも,天井板は床の間に平行に張られ手,目透しの目地が潜在意識的に指し床の形にならないようにされているのが一般的。
三六,四八 さぶろく,しはち 尺貫法による板類の定尺呼称。三六板:3尺(91センチ)×6尺(182センチ),四八板:4尺(122センチ)×8尺(243センチ)。
さる 板戸などの戸締まりのための木製ロックシステム。縦方向の木⇒「上げ落とし猿」,左右方向の木⇒「猿」。昔の戸袋に収まった雨戸はすべてこの方式であった。
桟瓦葺き さんがわらぶき 正しくは引掛け桟瓦葺き。江戸期に開発されて,土を乗せないのでかなりの重さの軽減になり,現代まで続いている。
建築には地という名の付く用語がいくつか数えられる。地回り,地貫,地板,地窓,地袋等。畳の面を地面になぞらえ,同一面にあるもの,ぞろになっているもの,あるいは地面そのものに近いものなどに付けられている。
地板1 じいた2 畳面とぞろに板を入れると,地板と呼ぶ。欅や脂松などが多く使われている。床の間を地板にしたものが,踏込み床である。
地板2 じいた2 室内に床と同じレベルで敷かれた板。畳敷き部屋で窓際や壁際に敷かれる。床の間の脇に敷かれることもある。
地瓦 じがわら その地方で造られている瓦をいう。
敷居 しきい  建物の側回りや内部間仕切の開口部の下方に取り付けられた丈の低い横木をいう。元来は門の内外を限るもので,閾(しきみ)あるいは敷見(しきみ)といった。【百科】
 敷は鴫(しぎ)の伏せ字か。【木山】
式台 しきだい 玄関の土間から床に上がるところで,一段広い板を置いて上がりやすくした台のこと。床と玄関土間の段差が少ない場合は必要ないが,道路から玄関までのアプローチで段差が解消できず,このような台が必要となる。下部を履き物入れにすることもある。古くは正式の出入り口の屋外部分に,駕籠着き場所に使われた。さらに,沓脱石を備える場合もある。
地形 じぎょう @建築をする前に地面をならしかためること。地がため。
A建築物を安全に支えるための基礎工事。くいうち地形・コンクリート地形など。
☆基礎によって伝えられる建物の荷重を安全に受け止めるために施す工事である。一般に堀土をしたあとに,割りぐり砂利や玉石を入れ,その上にコンクリートを流し込み基礎を造る。地盤が軟弱な場合は,杭打ちを行う。
地形2 じぎょう2 地形には建物の規模と地盤の土質によって以下の種類がある。
@割栗地形:一般に行われている。大きさ10から15センチくらいの割栗石を根切りの底へ縦に立てて並べ,石の隙間に目つぶし砂利を入れてランマーで突き固めて,その上には捨てコンクリートを打って水平にし,基礎の高さの基準面にする。 
A砂利地形:硬い地盤時に有効
B砂地形:軟弱な地盤や軽量な建物に有効
C杭打ち地形:根切り底に硬い地盤まで達する木杭・コンクリート杭を打つ。大規模の建物に適用。
治具 じぐ 各種加工作業で一般に使われる用語で,由来は英語の jig 。木工作では,正確な鋸断(ノコギリで切ること),鉋削(カンナで削ること)のための固定用の補助具・作業台を指す。広くは工作機械等の刃物を正しく当てる働きをする補助具で,漢字の治具はいわゆる「借字」。日曜大工でおなじみのジグソーは Jig saw 。英語の jig の語意には幅広でダンスのジグもこれ。
仕口 しぐち 「しくち」とも読む。基本的な仕口はほぞ(木偏+内)。二つの部材を直角または斜めに組み合わせるときの接合方法の総称。
例:ほぞ組,大入れ,大入れ短ほぞ差し,大入れ蟻掛け,長ほぞ差し込み栓打ち,傾(かた)ぎ大入れ短ほぞ差し
下見板張り1 したみいたばり1  下見板張りは板を横に重ねて張り上げるもので,合理的で雨仕舞にすぐれている。特に和風の押縁下見(おしぶちしたみ)・ささら子下見板張りは,雨に濡れれば膨張し,乾燥すれば壁下地の通風が可能となり,ちょうど校倉造りと似た機能を持っている。しかし,幅広の杉板は高価なため,最近は輸入材によるよろい下見(南京下見)や箱目地下見(ドイツ下見)板張りが用いられている。
@よろい下見:押縁を使わず板厚15〜20ミリ,幅12〜20センチの板材を羽重ね相决り,あるいは長押びきにした板を張った下見。
A箱目地下見:板と板を相决り,または本ざね加工とし,はぎ目に目地を入れて平に張る仕上げ。
【参考】羽目板張り:相决りや本ざね加工した板を縦方向に平らに張ったもの。現代的な感じのする工法ではあるが,雨仕舞に劣るので,下地には必ず防水紙などを張ることが必要である。
下見板張り2 したみいたばり2 構成:下見板,押縁,雨押え
【例】下見板の板厚は4分(12ミリ)以上を使用し,取り付けは下方から羽重(はがさ)ねし上部に向け7分(21ミリ)目の位置に釘打ちする。対して板幅の中央部付近に釘を打つと板が割れる。取り付けた下見板は3尺間に縁(えん)で押さえる。その押縁(おしえん)6分(18ミリ)厚の板を下見板の形に羽刻(はきざ)みに加工する。最下段の下見板の下部に雨押(あめおさ)えする。雨押えは下見板の腐食を防止する。下見板張りした後クレオソート液を,2,3回板の表面に塗布すれば10年間は腐食を防止し手を入れずに永く風雨に耐える。下見板は取り付ける前に押縁に反対側から釘打ちし,そのあと下見板全体を壁に取り付けるため,釘の頭は表面にでない。
下見板張り3 したみいたばり3 ささらこ(簓子)下見:裏をギザギザに刻んだ(羽きざみ)押縁(おしぶち)⇒「ささら子」を下見板の押さえとしたした外壁。押縁下見より上等の仕上げとされる。
押縁下見:押縁にギザギザなし 【内田】
漆喰 しっくい  壁塗りの素材。日本で古代以来用いられてきた石灰プラスターというべきもので,消石灰にすさ(草かんむり+切:きざんだ麻糸などの繊維質)と糊(フノリ,ツノマタなどの膠着剤)を加えて水練りした左官材料である。壁,天井に塗られ,瓦や鮭瓦の目地などに用いられる。砂を加えた耐久力のある漆喰が用いられるようになったのは近世になってからである。砂を配合しない漆喰を鹿子(かのこ)ずりと呼んでいる。なお,プラスターは元来は焼セッコウの意味であるが,日本では漆喰の意味で用いられている。【百科】
 水や湿気に弱いので,軒下とか妻壁の三角部分のように雨のかからないところに用いるのがよい。保護のため防水塗料を塗ることもある。
<参考>
石灰石(炭酸カルシウム CaCO3)→焼成→生石灰(酸化カルシウム CaO 。左官業界では「きせっかい」と呼ぶ。→水→消石灰(水酸化カルシウム Ca(OH)2)→二酸化炭素→炭酸カルシウム CaCO3
地袋 じぶくろ 書院造りの床の間の脇などに設ける背の低いもの入れ。 ⇒天袋
地窓 じまど 畳とぞろに窓を設ける。
地回り じまわり 軒桁のことを古くは地回りと呼び,今でもそのような呼び方をされる。
地虫 じむし 本名は「箱無双」。埋め込み金具の一種。
斜線制限 しゃせんせいげん 斜線制限には,@道路の上空を確保するための前面道路斜線制限とA北側の住居の日射を確保するための北側斜線制限とがある。
ジャロジー窓 じゃろじーまど よろい戸(ガラリ)式ガラス戸。
聚楽壁 じゅらくかべ 伝統的な土壁仕上げの一つ。京都,大阪地方で出土する,砂粒を含まない,黄褐色,薄茶色の粘着度の高い壁土(古来から使われたのは京都近郊で採れる聚楽土)で仕上げる。桃山時代から使われていて,京都で豊臣秀吉が建てた聚楽第付近の土といわれているところから,この名を使う。京壁の一つ。聚楽壁の色をした繊維質の壁材もある。
書院 しょいん 座敷の床の間と縁側の間につくられた,書籍を読むための明かりとりの窓を平書院,縁側にはみ出して窓と書物や筆などを置く棚があるものを付け書院という。古くは武家屋敷で儀式用の一室となったものがある。寺院では高僧の思索の場所でもあった。書院のある場所から,表書院,奥書院の名もある。
書院造り しょいんづくり 伝統的な格式ある和風の形式。中世に完成した武家住宅の様式。角柱を使い畳敷きで,部屋と部屋の間は襖または障子で仕切られる,主室には座敷飾りがなされる。民家で大屋根を付け,このような様式を持つものを,書院風民家という。近代では和風住宅の様式の主流となった。
障子 しょうじ 障子の各部名称:上かまち,下かまち,たてかまち,組子,中かまち,腰板
棟上げ式(上棟式) じょうとうしき 木造家屋の棟木が組み上がった時点で一つの区切りとして行うまつりごと。棟木に幣串(へいぐし)を立て,魔除けの弓矢「破魔矢」を乗せて酒や米を添え施主が大工に酒を出してごちそうするのが慣わしとなっている。撒いた餅は焼いて食べるとその家族が火災に遭うということから生でそのまま食べることが習わしとなっている。
上屋と下屋のルール じょうやとげや 民家では上屋(母屋)に当たる居室部分である座敷や囲炉裏端などを丈夫な架構でつくり、痛みやすい水廻りや廊下などは下屋(母屋以外の外周部)に設けて、痛んだ場合に取り替えができるように工夫していた。【松本郁夫】
真壁造 しんかべつくり 我が国古来の伝統的な和風構造で,壁面が柱面と柱面との内側に仕上がる。
仕上げ塗りの材料によって,土壁(じゅらく壁),大津壁,しっくい壁,繊維壁などと呼んでいる。
芯芯距離 しんしんきょり 心心,真真とも。部材と部材の間の距離を芯から芯までの距離で示したもの。木造建築では内法の距離と大差なく,日本の建築では芯芯で床面積が示されてきた。
透かし板 すかしいた 肥松のはめ込み板は高価。
杉皮 すぎかわ <京都府京北町> 杉皮をとる時期は,7月20日から9月10日。これを夏皮という。これをすぎると剥ぎにくくなり,また春からこの時期以前に採集した春皮は虫害を受けやすく,耐久性が劣る。【杉皮採集に使う道具】@シャゴカキ:表面の荒皮(シャゴ)をシャゴカキで掻き取る(シャゴトリ)。塀用の杉皮にはシャゴを残しておく。Aテキガマ:一般には2杓寸の長さを,棒を定規にしてはかりとり(塀用には6尺の長さにする),テキガマで周囲に切れ目を入れる(スジツケ)。Bヘラ:ヘラで剥ぐ(カワムキ)。伝統的な木のヘラは,とが(つが)の枝で作るのがよいとされる。現在は,金属製のヘラも使われる。
杉皮2 すぎかわ2 杉皮は表皮に繊維が少なく,立木から表皮だけをはぎ取ることは出来ない。そこで伐木してから甘肌と呼ばれる木部に密着している形成層(白い内樹皮)ぐるみ剥ぎ取る。(原田)
数寄屋造り すきやづくり 禅宗の僧侶から始まって武士や町人の間に茶の湯が流行し茶会の場として室町時代より茶室建築が発生した。その様子は簡素で数寄屋と呼ばれる。桂離宮はその代表的な建築物。
スコヤ すこや 大工道具で,小型の直角定規をいう。「完全スコヤ」の名称が使用されていますが,完全に直角であることを主張しているのか趣旨不明。そもそも不完全な物は販売してはいけません。
筋違い,火打材 すじかい,ひうちざい 筋かいは垂直ゆがみを防ぎ,火打材は水平ねじれを防ぐ。〔火打梁,火打土台〕
スランプ すらんぷ 生コンクリートの粘度,硬度をはかる尺度。スランプ20センチは,山の高さが10センチのこと。スランプの大きいものほど軟らかい生コンクリートであるということになる。
スレート1 すれーと  日本で天然スレートを建築材料として使うようになったのは,明治にはいって各地に西洋館が出現してからである。南三陸地方と呼ばれたあたりで産出する粘板岩がヨーロッパと同じものとわかったのは明治も10年代にはいってからのこと。その後,日本の天然スレート(玄昌石)は雄勝(雄勝石),登米(登米玄昌石),豊里,志津川,陸前高田など,宮城県から岩手県にかけてのリアス式海岸をひかえた地方で盛んに生産された。その中のひとつ宮城県桃生(ものう)郡(現石巻市)雄勝町は,雄勝硯の生産地として600年以上の歴史を持つ町である。【高井 潔】
 
スレート2 すれーと 現在では一般に、スレートといえば波形の石綿スレート(波板石綿スレート)を指すようになっている。石綿スレートは主に石綿とセメントでつくられたもので、耐久性があるが、衝撃には弱い。【内田ほか】
工場や倉庫の屋根材に利用されてきた。 
石材1 せきざい1 @大理石:酸に弱い。ウィスキー・除光液にも注意。小便も天敵。
⇒トラバーチン 参考参照 
A御影石:名前は産地として有名な神戸市東灘区の御影(六甲山麓)に因む。⇒本御影。高温に弱い。国会議事堂。国内で大量に供給できるのは稲田御影石のみ。
B蛇紋岩:高級感を演出する効果が大きい。恵比寿のウェスティンホテル東京。
C粘板岩(天然スレート):法務省旧本館屋根。
D凝灰岩:栃木県大谷町は有名。⇒大谷石 耐火性・保存性よし。旧帝国ホテル。
石材2
デパートの内装例
せきざい2 日本橋三越⇒化石の入ったベージュ系の石材
新宿伊勢丹本店⇒アンモナイトは有名
日本橋高島屋⇒常陸寒水石という白色大理石を多く使用している
石材3
ビルの場合
せきざい3 現代のビル建築では,玄関ロビーやエレベーターホールなど,重要な部分の壁面や床などを全面的に大理石張りとするのが最も普通な使用法である。大理石をビルの外装に張るのはヨーロッパやアメリカではさして珍しいことではないが,日本ではより耐候性のある御影石を用い,大理石はまず使用しない。【百科】
石材4
御影石
せきざい4
御影石
@白御影⇒大半が国産
A桜御影⇒大半が国産
B赤御影⇒すべてが輸入材であり,高価なので建築の内外装,敷石などの装飾用目的にのみ用いられる。
C黒御影⇒黒御影の需要としては墓石材が最大であるが,今日ではそのほとんどがインド,南アフリカ,スウェーデンからの輸入原石である。【百科】
石州瓦 せきしゅうかわら 石州瓦は耐寒用に釉薬をかけた桟瓦で,その名の通り石見地方(島根県南部)の伝統的な瓦である。現在も江津,浜田,益田などで盛んに製造されてい手,山陰地方や北陸方面にも広く分布している。古いものはほとんど赤瓦だったが,近年は黒瓦も増えてきている。
石綿 せきめん 不燃材として古くから利用されている天然の無機繊維状鉱物の総称で,石綿(いしわた),アスベストとも呼ぶ。蛇紋石族または角セン石族の鉱物のうち,繊維状にほぐすことのできるものをいい,蛇紋石族の一種であるクリソタイル chrysotile は温石綿(おんじやくめん)とも呼ばれる。
石綿スレート板 せきめんすれーとばん セメントと石綿を混練し,強圧して成型したもの。屋根材。
ぞうきんずり ぞうきんずり ⇒幅木
傍軒 そばのき 切妻屋根などの妻側の軒を傍軒(cf.軒)という。軒の出,傍軒の出は,ともに1メートルを超えると,超えた分は建築面積に加算される。