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     木の雑記帳  木造建築用語のお勉強


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相欠(き) あいがき つなぎ合わせる相互の部材に同じ形状の欠き込みを入れて合体させる方法。
相抉り あいじゃくり 「合い抉り」とも。板と板が接する長辺の部分が互い違いに上下に重なり合うようにして,隙間なく接合する方法。床板や天板を張り合わせるときなどに使う。このほか板張りの方法としては,板と板の間に細い板を敷く敷き目板継ぎ,継ぎ目をそれぞれ凸凹にする本実継ぎがある。
★「抉」の字は「えぐる」の読みを持つ。「決」又はこの異体字の「决」の字を使っている場合も多い。
上がり框 あがりかまち 床に段差がある場所で,上がる床の端に付けられる横材。損傷が激しいため,ケヤキや桜などの堅い木が使われる。
上げ下げ障子 あげさげしょうじ 雪見障子,摺り上げ障子,猫間障子ともいう。障子の下部にはめ込んだ小障子が上下し,外が見えるようにしたもの。普通外側にガラスを入れる。
網代 あじろ 杉柾,竹などを,へぎ板のようにして,これを網目に組み上げたもの。網代組。建築では天井材などによく使われる。網目の角度を直角にして市松文様に組みあげたものを「市松網代」と呼んでいる。
網代張り あじろばり 板や竹による床,壁,天井の仕上げ方法で,細く薄く長く削ったスギやヒノキの板,あるいは竹などを,網のように編んで面を作ったもの。垣根などの仕上げにも見られる。
東障子 あずましょうじ 紙を貼る代わりに,ガラスを入れた明かり障子。塵(ちり)落としといって,障子の桟に傾斜をつけたりする。
畦(畔),樋端 あぜ,ひばた 敷居,鴨居の溝の間の高い仕切の部分。その側面を樋端という。
雨押さえ あまおさえ 外壁を流れる雨水が建物内部に入らないように取り付ける板材。外壁から屋根が出る場所,外壁上部の塗り壁から下部の板壁に代わる変わり目などに3/10程度の勾配で付けられる。
天仕舞い あまじまい 家の内部に雨が入らないように処理すること。
雨戸 あまど 和風建築の開口部の外側に設ける板戸で,一本溝の敷居の上を走り,不用時には戸袋に納められるのが普通である。戸締りのためには〈上げ猿〉や〈落し猿〉を用いる。 猿の項参照。
蟻落し ありおとし 蟻掛(ありかけ)とも。真壁造りの住宅の玄関外部の袖壁などの納まりとして,土台の木口を見せないための工法。建築の仕口(しくち)の一。一方の材の端に蟻(ありほぞ)を作り他の材に蟻穴を切ってはめ込む。
行燈部屋 あんどんべや @〔建築〕四方に窓のない部屋。建築基準法にいう居室になれない部屋。
A行燈をしまっておく部屋。
[易+鳥]継ぎ いすかつぎ イスカという鳥はくちばしが食い違っていて,それを利用して松ぼっくりをこじ開けて実を食べる。木材の継ぎ手として両材をお互いに中央から斜めにそいでかみ合わせる方法をイスカ継ぎという。天井竿縁などによく行われたが今はほとんど見られない。また,家を建てる前に基礎中心線を設定するために杭を打つが,この頭をイスカに切っておき,人が腰掛けたり,さらに打ち込んだりしてレベルを狂わすのを防ぐ。これも今はあまり行われていない。
板葺き1 いたぶき1 屋根を木材の板で葺くことをいい,日本建築では板の寸法,形状,葺き方によって,こけら葺き,木賊(とくさ)葺き,栩(とち)葺き,長板葺き,木瓦葺き,石置き板葺きなどがある。板葺きは古くから用いられており,中世以降の町家でも,京では桃山時代まで,江戸では江戸時代初期までほとんどが流し板葺きや石置き板葺きであった。【百科】
板葺き2 いたぶき2 こけら葺き:木羽(こば)葺きともいい,長さ30cm前後,厚さ3mm前後のサワラやスギの手割り板を竹釘を使って細かく(3cm前後の葺き足)葺くもので,板葺きの中では最も高級で品が良い。中世以降社寺建築や書院,客殿に用いられ,代表的な例として桂離宮の書院があげられる。 ⇒ 「こけら葺き」の項を参照【百科】
板葺き3 いたぶき3 木賊(とくさ)葺き:柿葺きと栩葺きの中間ぐらいの厚さの板を葺くものを木賊葺きというが,柿葺き・木賊葺き・栩葺きの境界は明確でない。【百科】
板葺き4 いたぶき4 栩(とち)葺き:厚さ9mm前後の板を葺くもので,柿葺きよりは素朴であり山間や地方の社寺建築にみられる。【百科】
板葺き5 いたぶき5 長板葺き:長板を縦に葺く長板葺きには,薄板を屋根面のたるみに合わせて葺く流し板葺き,厚板を2段,3段にこう配を変えて葺く厚板段葺き,板の合せ目に目板を打つ目板葺きなどさまざまな葺き方があり,地方によっては呼名も違う。長板葺きは小規模な神社本殿などに例が多い。【百科】
板葺き6 いたぶき6 木瓦葺き:本瓦葺きの形を長板で平と丸別々に造って葺くもので,中尊寺金色堂はその例。【百科】
板葺き7 いたぶき7 石置き板葺き:長さ60〜90cmの薄板を敷き並べ,石を置いて押さえるもので,北日本の民家に多くみられる。
板屋根1 いたやね1 「石置屋根」といった方がわかりやすい。茅(かや)の入手しにくい山間部や漁村など,かつては全国的に分布していた。ことに信濃や飛弾の街道筋に多く見られたが,今ではほとんど姿を消した。〔小羽葺き,押え木,置石,風返し〕
板屋根2 いたやね2 割りやすく腐りにくいナラ,クリ,サワラなどが一般的。高標高ではネズコ,トウヒなど。その他腐れには弱いがスギも。【長野県・長澤】
犬走り いぬばしり 犬が走るための場所ではない。建物の軒下や外壁の周囲を砂利やコンクリートなどで固めたもの。雨水の跳ね返りから建物の袖を守る目的で軒の出によって変わるが,約60センチの幅で固められる。建物の袖を引き締める効果もある。コンクリート,煉瓦,小石,石板などの材料が使われる。京風の町屋では犬矢来が置かれる。土工関係では,小段,ベンチのことを犬走りと呼んでいる。なお,犬ならぬ猫に転じて,キャットウォークは土木建築の仮設の吊り足場。
犬矢来 いぬやらい 塀や建物の外壁の腰を保護するために,割竹を曲げて造られた囲い。「駒防ぎ」ともいう。関西の町屋によく見られるが,京風をイメージするものとして装飾的に捉えられ,和風の商業建築にもしつらえられたりする。犬の小便の直撃を回避するガードかと思ったら,家のすそを泥はねなどから保護するのが本来の目的であるとのこと。
入り隅,出隅 いりすみ,ですみ ・建物の折れ曲がった隅を入り隅,出張ったかどを出隅と呼ぶ。
・二つの壁面が交差したところに出来る外側の隅部のことを出隅,内側に出来る隅を入隅という。
鶯張り うぐいすばり 板張り床で,歩くと鶯のような音を出すように造られたもの。京都知恩院の本堂から方丈に至る廊下が有名。
[木偏+兄の上に八] うだち/うだつ @梁(はり)の上に立て棟木(むなぎ)を支える短い柱。うだつ。
A妻壁を屋根より一段高く上げて小屋根を付けた部分。
B(「卯建」とも書く) 江戸時代の民家で,建物の両側に「卯」字形に張り出した小屋根付きの袖壁。長屋建ての戸ごとの境に設けたものもあり,装飾と防火を兼ねる。
C民家の妻側にある棟持柱(むなもちばしら)。
「うだつ」の読みはウダチの転。【広辞苑】
卯建1 うだつ1 卯建は「火回し」と呼ばれるように,漆喰で塗り回したものは延焼防止の目的がうかがわれないこともないが,むしろ「うだつのあがらない」などと使われるように,一戸の家を構えた者の誇りと力の象徴としての装飾性の方が勝ると見られている。
卯立2 うだつ2 古くは梁の上にたつ束柱を意味した。室町時代以後は,民家の妻壁を大屋根面より一段高く突出させて小屋根をつけたものをもさす。〈うだつ〉は,富や格式の高さを象徴する一つの方法であり,〈うだつが上がらぬ〉はよい身分になれないことのたとえである。大和・河内地方でおこなわれている高塀造,いわゆる大和棟は,〈うだつ〉の上がった家構えであり,江戸時代には大庄屋,庄屋層などの家の格式を示す形式であり,18世紀中ごろ以降に成立し,明治以降は一般農家にも普及するようになった。ただ〈うだつ〉は,全国的には農家でなく,町家に多く用いられ,富の蓄積を示すこととなった。一方,〈うだつ〉は,厚い土壁で塗られるため,その上の小屋根が草や板でふいてあっても防火の機能をもっていた。この種の〈うだつ〉には,屋根の上に突出するものばかりでなく,二階の軒下に張り出した袖壁,すなわち袖うだつもある。袖うだつは,軒下を伝わってくる火を防ぐ効果をもったと考えられる。時代が下り,大正期には,軒下に付けるだけでなく,下の基礎から立ちあげ,2段3段の小屋根をあげた黒しっくい塗の袖うだつが,全国各地の町場にあらわれ,その家の富を示す形式となった。【百科・抄】
内法長押 うちのりなげし 鴨居の上にある長押。通常長押と呼ぶのはこの内法長押のこと。
埋樫 うめがし @ 敷居の溝の摩耗を防ぎ,滑りをよくするために溝に埋められた樫。昨今の集成材では,桜などがサンドイッチのようにはさんで造られており,溝をつけば桜が顔を出すように造られている。
A 敷居の溝に,滑りをよくし,溝の摩耗を防ぐために,硬くて滑りのよい樫の木の薄板を入れることをいう。プラスチック製でも埋めがしという。
ALC エーエルシー Autoclaved Lightweight Concrete 和製英語
(オートクレーブ養生)軽量気泡コンクリート,旭化成のへーベルハウスの壁体はその例。
江戸間 えどま ⇒ 京間を参照
縁桁 えんげた 縁側の垂木(たるき)を受けるために縁先の柱上に取りつけた横木。
えんこ えんこ 縁甲板(張り)の略。
縁甲板1 えんこういた2 厚さ15ミリから18ミリ程度の板の長手方向の両側面を機械加工して本実决(ほんざねしゃく)りとした幅8センチから12センチ程度の板。床用のほかに壁,天井などにも使われる。「木口面の加工もしてあるフロアリングボードと区別している。」との説明もある。略して「えんこいた」,「えんこ」ともいう。
⇒ 一般には和の縁甲板,洋のフローリングとして区分。
縁甲板2 えんこういた2 一般的には檜の縁甲板を指すことが多い。かつては極上品として松の白太の縁甲板もあった。通常の檜の縁甲板は,縁側や廊下などに多く使われ,両側に実矧(さねはぎ)加工されており,裏には縁甲决(しゃく)りがされている。塗装しないのが本来の姿。
縁甲板3 えんこういた3

日本建築の縁側などに使われていた床用木材。主にヒノキやスギなど長い板が採りやすい針葉樹を製材したもの。内廊下や床のほか壁や天井にも使われる。縁甲板は縁側,つまり外廊下の甲板として使われたのが語源で,今では広く包含してフローリングという名称が一般的であるが,かつては短いものをフローリング,1.8m以上の長いものを縁甲板と呼んでいたという。

鉛丹 えんたん 最も古くから使われている錆止め塗料。光明丹の商品名が一般名化している。
大壁造り おおかべつくり 塗り壁又は板張りなどとして,柱を壁面にあらわさない構造で,洋風建築といわれた頃もあったが,現在では和風にもさかんに取り上げられるようになった。明治時代に外国から導入された洋風構造で,柱は壁体に包まれ開口部の一部に見えるだけとなる。
大津壁 おおつかべ 滋賀や京都地方で産出する黄色系の壁土に,消石灰と麻スサを混ぜ合わせたものを,鏝で押さえながら塗る。平滑な仕上がりが特徴。色調により,黄大津,茶大津,泥大津,鼠大津などがある。
大引き1 おおびき1 尾引とも。床組において,(床)束(つか)の上にあって,根太(ねだ)を保持する水平材をいう。通常9〜12cm角の杉を用い,1m前後の間隔で配列する。
大引き2 おおびき2 一階の根太を支える横架材。約90センチ間隔に配置し,土台と束によって支えられている。木材の寸法は90×90ミリの角材が普通である。二階の根太を支えている横架材は床ばりあるいは小ばりである。
拝み治し おがみなおし 正しくは「歪み直し」だが,拝み直しという言い回しの方が通りがいいためか使われる。棟上げの完了後に柱の垂直を調整して,仮筋交いで仮止めする。
送り継ぎ おくりつぎ 丸太の送り継ぎは,木の元口を下にし,末口を上にのせて接合する継ぎ手で,ボルトを使って補強する。小屋梁に使う。
押角 おしかく 「おし」「へしかく」ともいう。角材の一部に丸みが残っているもの。
押縁 おしぶち 板や合板,ガラスなどの板状の部材の継ぎ目を,押さえて留める細くて長い材料。木製,金属製,プラスチック製のものがある。
汚垂石 おだれいし 小便器の下に置かれた「しずく」受け。小便は大理石にとって天敵であるため,これに大理石は使わない。
追掛け大栓継ぎ おっかけだいせんつぎ 角材と角材を継ぎ足して接合する方法で,相対する部材の接合面に勾配と段差を付け,合体させたものに,さらに側面から木片を貫通させて埋め込む方法。木片の代わりに金属ボルトが使われることもある。角材の断面が比較的大きな部材で使われる。
落し掛け おとしがけ 床(とこ)の間の正面など,天井からのさがり小壁を受けて,下端に取り付けられている横木。床の間の基本パーツ。
帯戸 おびと 木の一枚板を上下左右の框(かまち)で固定した板戸を〈杉戸〉と呼び,書院造の住宅で,広縁(ひろえん)など直接外気に面する部分の間仕切建具に絵を描くために考え出されたものである。この杉戸の,上下框の中ほどに幅の広い横桟を入れたものを〈帯戸〉〈帯桟戸〉といい,江戸時代中期以降,民家の間仕切りの戸として盛んに用いられるようになる。書院造住宅では間仕切りに襖(ふすま)を用いるのが普通だが,一般の民家では板戸を用いる場合が多く,帯戸は杉戸と並んで上等の建具であった。【百科】