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ニワトコの葉裏で見られたヒラタアブの蛹のサンプル
この写真では中段の4個は既に脱出孔が空けられていて、それぞれある成虫が脱出済みである。 |
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採取した蛹は台紙に糊で貼り付け、ガラスシャーレの中で様子を観察した。
採取した直後の蛹はいずれも色は淡褐色〜褐色であるが、時間の経過とともに総じてやや暗色となった。
蛹の表面の模様を見ると、全体に暗色の斑紋のあるもの、直線状に斑紋が並んでいるもの、横縞模様のあるもの、特段の模様が見られないものが確認された。これらから複数種のヒラタアブが登場すれば、蛹の模様から種類ごとの参考情報が得られる可能性をがあると考えたのであるが
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1 |
観察結果 |
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(1) |
ニワトコで採取したヒラタアブの蛹の場合 |
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1個の蛹からフタスジヒラタアブが羽化 (先の蛹写真の中段、一番左) |
4個の蛹から寄生バチA(種名未確認)が羽化 薄茶色 体長約6ミリ |
2個の蛹から寄生バチB(種名未確認)が羽化 黒色 体長約5ミリ |
2個の蛹から寄生バチC(種名未確認)が羽化 縞 体長約7ミリ |
1個の蛹の寄生バチ幼虫が蛹化できずに死亡 |
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(2) |
シャリンバイで採取したヒラタアブの蛹の場合 |
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1個の蛹から寄生バチC(種名未確認)が羽化 縞 |
7個の蛹からそれぞれ多数(10〜30匹程度)の小型の寄生バチが羽化 |
1個の蛹内の寄生バチ幼虫が蛹化できずに死亡 |
1個の蛹内で多数の小型寄生バチの成虫が死亡(脱出失敗か) |
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(3) |
総括 |
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合計20個のヒラタアブの蛹から、本来のヒラタアブの仲間が羽化したものはたったの1個のみであった。ヒラタアブの幼虫たちは立派な大人になるために、モリモリとアブラムシを一生懸命に食べていたはずであるが、ほとんどが寄生バチの餌食となっていたということは驚くべきことであり、何とも厳しい昆虫の世界を垣間見ることになった。
ヒラタアブのお母さんは、かわいい子供たちが食べ物に不自由することなく、アブラムシを好きなだけ食べられそうな(正確には体液を吸汁する。)ところに卵を産み付け、無事大人になることを願っていたはずである。
一方、寄生バチのお母さんは、あまりにも直接的で、子供たちが孵化した際に、餌を探し廻る手間もいらないように、餌であるヒラタアブの幼虫の体に直接卵を産み付けていたようである。情け容赦ない世界である。
なお、経験則によると、蛹が総じて暗色となったのは、寄生バチに乗っ取られた場合の現象のようである。 |
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2 |
羽化した成虫の顔ぶれ |
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単独で羽化した寄生バチは、種類が同定できなくても外観の違い、特に色の違いはわかりやすいから、外観上は3種類が登場したことは確認できたが、多数が一度に羽化する小型の寄生バチについては外観がほとんど同じように見えて、複数種が存在したのか否かは判断が困難であった。そもそも蛹から数十匹もの小型寄生バチが登場するということは、複数の小型寄生バチが複数回にわたって産卵している可能性を感じる |
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フタスジヒラタアブ(と思われる) |
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フタスジヒラタアブ 1(背側)
本ヒラタアブは、通常体長は12〜14ミリとされる。先の蛹の写真中、中段の左の蛹から出現したものである。 |
フタスジヒラタアブ 2(腹側) |
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フタスジヒラタアブ 3 |
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フタスジヒラタアブ 4 |
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フタスジヒラタアブ 5(腹側) |
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A |
寄生バチA |
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寄生バチAの蛹の様子
ヒラタアブの蛹の端を切り開いたところ、寄生バチ(追ってAタイプと確認)の蛹が出てきた。蛹の中から蛹が登場したわけであり、マトリョーシカのようである。写真の右側にあるものは、寄生バチの幼虫時代の糞であろう。
ヒラタアブの幼虫に寄生バチが卵を産み付けたということであり、ヒラタアブ幼虫の中で寄生バチが孵化して成長し始め、ヒラタアブ幼虫が蛹になると、その体をすべて食い尽くして蛹となり、羽化した際はヒラタアブの空っぽの蛹の殻に内側から丸い孔を開けて出てくる。荒々しいヒラタアブの幼虫も大変な目にあっている。 |
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寄生バチA−1
本寄生バチの体長は約6ミリであった。 |
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寄生バチA−2 |
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寄生バチA−3(背側) |
寄生バチA−4(腹側) |
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B |
寄生バチB |
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寄生バチB−1
本寄生バチの体長は約5ミリであった。 |
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寄生バチB−2 |
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寄生バチB−3(腹側) |
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C |
寄生バチC |
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寄生バチC−1
本寄生バチの体長は約7ミリであった。 |
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寄生バチC−2 |
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寄生バチC−3(腹側) |
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D |
小型寄生バチ |
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蛹内で見られた多数の小型寄生バチの幼虫
蛹を破ってみたところ、多数の小型寄生バチの幼虫が蠢いていた。ぞっとする風景である。 |
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小型寄生バチA−1(背側)
本寄生バチの体長は約2ミリであった。 |
小型寄生バチA−2(腹側) |
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小型寄生バチA−3 |
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小型寄生バチA−4(腹側) |
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次の小型寄生バチは、上の小型寄生バチと同種なのか異種なのか、確信が持てない。 |
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小型寄生バチB−1(背側)
本寄生バチの体長は約1.3ミリであった。 |
小型寄生バチB−2(腹側) |
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小型寄生バチB−3 |
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小型寄生バチB−4(腹側) |
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膨大な種類が存在するという寄生バチについて、日常的にその姿を認知するのは難しく、たまたま特定の宿主を観察してその存在を確認できても、素人にはまったくその種類も同定できない。一部の寄生バチは害虫の防除に応用されているといわれるが、寄生バチに関する知見の集積はまだまだといった印象である。
生活感覚での感想を言えば、微小なコナジラミやキジラミの幼虫、アブラムシの無翅虫、チャタテムシの0.5ミリにも満たない小さな卵までもが寄生バチによる産卵の対象となっている現実を知ると、その宿主がきわめて広汎にわたっていること、さらには肉眼では確認しにくいようなミクロの世界で、寄生バチたちが大暴れしていることに今更ながら驚かされる。 |
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★ チャタテムシ(卵)の寄生バチの例についてはこちらを参照 |
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★ キジラミ(幼虫)の寄生バチの例についてはこちらを参照 |
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