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小さな虫は植物を吸汁するか、葉などの植物体を食べて生きているが、その虫がしばしばより大きな虫の餌になってしまうことがあるのはごくふつうの風景である。その食べ方はいろいろで、カマキリのようにバリバリ、ムシャムシャと一気に噛み砕いてたべたり、クモであれば糸で簀巻きにして自由を奪った上で、必殺の消化液で獲物をじわじわと溶かしながら吸収したりと、端から見ていれば、どちらも残酷振りではいい勝負である。鳥のようにぺろっと食べてあげればあっという間に昇天できるから苦しみは少ないに違いない。
そこで、ヒラタアブのお食事風景であるが、この場合はアブラムシが気の毒で見ていられないほどであった。といいながら、じっくりと興味深く観察させてもらった。 |
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1 |
ニワトコの様子 |
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開花期のニワトコ
ガマズミ科ニワトコ属の落葉小高木又は低木。花はこの写真のように白いものと、下の写真のように淡黄色のものを目にしたが、ときに淡紫色のものもあるという。 |
果実をつけたニワトコ
葉は対生し、奇数羽状複葉。 |
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ニワトコの花
花は、萼片5個、花冠5深裂、雄しべ5個で、柱頭は3裂する。雄しべがときに4個、6個のものも見る。 |
ニワトコの果実
この鮮やかな赤い果実(核果)はだれが食べるのであろうか。 |
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ニワトコで群れるニワトコヒゲナガアブラムシと怪獣ヒラタアブ(幼虫) |
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ニワトコヒゲナガアブラムシ 1
ニワトコフクレアブラムシとも。一般的な有翅型のものが見られるほか、ひょうたん型のものが見られるが、これが生活環の中の定型なのかよくわからない。赤矢印は小さなヒラタアブの幼虫であるが、アブラムシはとんでもない乱暴者が存在していることをまったく認識していない。
このアブラムシは周年ニワトコで生活し、一時期のみ他の植物に分散するという。 |
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ニワトコヒゲナガアブラムシ 2
仔虫は孵化直後のヒラタアブの幼虫にとってはよい餌になると思われる。赤矢印はヒラタアブの卵である。新葉の時期に、ニワトコの葉裏で群れていた。成虫、有翅虫とも頭部、胸部が赤みを帯びている。 |
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ヒラタアブの幼虫 A
ホソヒラタアブの幼虫の可能性がある。体は半透明で、内蔵が奇妙な運動をしているのが透けて見える。右側の突起は後気門で、左側の頭部に隠れている口器は吸収式で口鉤(こうこう)をもつとされる。 |
ヒラタアブの幼虫 B
背部にこの模様をもつタイプはクロヒラタアブの幼虫の可能性がある。白色の細かい筋状のものも、透けて見える内蔵の器官である。 |
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ヒラタアブの幼虫 C
素性未確認。 |
ヒラタアブの蛹
蛹は個性的な滴型で左側が頭部側で、殻を破って羽化する。寄生バチが出てくることも多い。 |
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ヒラタアブの卵
1ミリちょっとの小さな卵であるが、アブラムシが群れるところにはどこにでもふつうに見られる。やさしいヒラタアブのお母さんが、我が子がスクスクと成長することを祈って産み付ける。表面に微細な模様がある。 |
ヒラタアブの孵化直後の幼虫
孵化直後の微小な幼虫であるが、早速ながらやはり微小なアブラムシの仔虫を餌食とするのであろうか。 |
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3 |
ヒラタアブのお食事風景 |
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(1) |
ニワトコヒゲナガアブラムシを食べるヒラタアブ幼虫 |
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ニワトコでのヒラタアブ幼虫のお食事風景は一応確認したわけであるが、やや迫力に欠けるのが残念であった。ヒラタアブ自身は大柄で、セイウチあるいはトドのような体型あったのに対して、アブラムシが相対的に小さすぎることが原因であったと思われる。そこで、仕切り直しで、今度は近所で確保しやすいカラスノエンドウで見られるヒラタアブ幼虫とソラマメヒゲナガアブラムシに登場を願うことにした。 |
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(2) |
ソラマメヒゲナガアブラムシを食べるヒラタアブ幼虫 |
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小振りのヒラタアブ幼虫がソラマメヒゲナガアブラムシ幼虫を食べる様子 |
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このヒラタアブ幼虫の体長は約4ミリほどで小さいが、一丁前の振る舞いをしている。しかし、できれば大きめのアブラムシを捕捉してくれれば、さらにたくましい姿を披露してくれるに違いない。 |
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A |
小振りのヒラタアブ幼虫がソラマメヒゲナガアブラムシ成虫を食べる様子 |
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そこで、上で出演していた同じヒラタアブ幼虫に再度出演願って、同等の大きさのアブラムシの成虫に食らいついてくれれば、インパクトのある場面を見られるのではと考え、小さなアブラムシを食べた直後ではあったが、1匹の成虫を差し出したところ、ヒラタアブは眼がないはずなのに素早くこれを捕らえてくれた。そして、しっかり期待に応えてくれた!! ただし、小さなヒラタアブ幼虫がアブラムシの成虫をすっかり平らげるには、さずがに時間を要し、体液を吸い尽くした屍骸をポイッと放り投げるまでには約2時間を費やしたことから、観察する側もすっかり疲れてしまった。 |
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ブラムシの体液を吸うヒラタアブ NO.1
脇を通りかかったアブラムシを捕捉した。 |
アブラムシの体液を吸うヒラタアブ NO.2
必ず高々と持ち上げた状態で体液を吸う。 |
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アブラムシの体液を吸うヒラタアブ NO.3 |
アブラムシの体液を吸うヒラタアブ NO.4 |
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アブラムシの体液を吸うヒラタアブ NO.5 |
アブラムシの体液を吸うヒラタアブ NO.6 |
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アブラムシの体液を吸うヒラタアブ NO.7
腹部は既にほぼペチャンコになっている。 |
ポイ捨てされたアブラムシの屍骸
腹部は完全にペチャンコで、空気の抜けた紙風船のようで、尻の角状管が空しく残っている。
実はこの状態で、触角がわずかにヒクヒクと動いた。 |
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約2時間にわたるお食事風景であったため、適宜編集の上、早回しした動画は以下のとおりである。 |
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★ ソラマメヒゲナガアブラムシの様子はこちらを参照。 |
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<ヒラタアブ幼虫の食事風景の観察メモ> |
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ヒラタアブの幼虫(要はウジ虫)には眼がなく、獲物にありつくための行動として、体の前半部を浮かした状態で左右に振りながら、口をペタペタと葉の面に押し当てながら探索をしている。 |
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口器の口鉤で獲物の腹部(皮が極薄で、何よりもジューシーである。)に食らいつくと、必ず獲物をくわえたままで高々と持ち上げた状態で体液を吸収し始める。このスタイルはヒラタアブの迫力あるお食事の決めポーズとなっている。獲物を高くかかげるのは、獲物が脚をばたつかせて、脚の届く物につかまって逃走を試みる行動を封じるため、脚を浮いた状態にすることが目的と思われる。 |
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ヒラタアブ幼虫の複雑な口器の詳細についてはわかりやすい参考書がなくてわからないが、体液をチュパチュパと吸っている際には、口付近で黒い器官が前後しているのが透けて見える。まさにゴックンゴックンしているようであり、あるいはのど越しを楽しんでいるようにも見える。 |
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アブラムシは眼があるにもかかわらず、直ぐ脇でヒラタアブ幼虫が凶行に及んでいても、これに気づいて逃げだすこともなく、平穏に行動している。中にはヒラタアブ幼虫の背中を平気で乗り越えているアブラムシも見るから、アブラムシはヒラタアブ幼虫に対する危険意識がまったくないようである。 |
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体液を吸い尽くした後に、屍骸を放り投げる行動が見られ、これがまた荒々しい決めポーズとなっている。これは口鉤で引っかけていた獲物を単に振り落とすための行動に起因しているものと思われる。 |
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