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続・樹の散歩道
  タブノキの果実は本当にアボカドの味がするのか?


 以前に、アボカド はタブノキと同じクスノキ科の近縁の常緑高木で、属は違っていても、タブノキの果実はアボカドの果実と似た味がするとの講釈を聞いたことがある。仮にこれが甘酸っぱい味でポリフェノールもたっぷりということであればよいのであるが、アボカド風ではあまりにも魅力がない。それに、タブノキなどどこにでもある樹で、そんな話を聞いても、改めであの小さな果実をかじってみようなどという気など全く起きないままになっていた。しかし、あるとき、お散歩中に特に興味を持てる樹がなくて退屈していると、目の高さに艶やかな黒紫色の果実をたっぷり付けたタブノキが目に入った。ふと、先の話を思い出し、まあ一度経験しておくのもいいかとの思いで、この ミニアボカド ≠フ数粒の果実をポケットに放り込んだ。 【2016.8】 


     タブノキの果実の様子   
 
      タブノキの果序
 赤い果柄は鳥にアピールできる。
   タブノキの熟した果実
 緑色のままで落ちる果実も多い。
     タブノキの半割果実
 あまり食欲をそそる姿ではない。
 
   
     アボカドの葉、花、果実の様子  
 
 
      アボカドの葉
 クスノキ科ワニナシ属の常緑高木
 Persea americana 
 (都内の薬用植物園の小さな木)
    アボカドの花の蕾
 
閉じた花ばかりで、残念ながら開いた花は1つも見られなかった。タイミングが悪かったようである、花被片が開けばタブノキの花に似ているとのことである。(3月下旬) 
    アボカドの半割果実
 お馴染みの姿で、大きな種子はトチノキの実のようである。これはもちろん購入品である。大きいものでは種子の径が4センチを超える。
 
 
     
     
   タブノキの果実を2つに割って見ると、アボカドに較べていかに果肉が薄いかを実感できる。要はほとんどが種子ということである。この果実の果肉のみを味わうためには、多くを占める種子を除いた半割の果肉の内側をティースプーンでそぎ落とさなければならない。そして、早速ながらそれを口に入れたのであるが・・・ねっとりして甘くもないその味・・・うーん、アボカドも確かこんな味に近い、美味しくも何ともない代物であったかも知れないなあ・・・と思い出した。

 実は、家族に1名だけアボカド好きがいて、しばしばサラダ等にアボカドの切れ端が入っていて、なぜこんなものを金を出して買うのか、あまりにも感性が異なることにため息が出るほどの思いであった。したがって積極的に食べることなどなく、近年は全く口にしていないことを思い出した。

 しかし、微妙な味を表現するためにはそれほど好きでもないアボカドをもう一度口にする必要があり、久しぶりにちょっとだけ食べてみた。まあ、確かに似た雰囲気がないこともないのかなあといった感じはあるが、タブノキの果肉ははまずいことではアボカドを上回ることを確認した。そこで、本件はこれにて打ち止めとしたい。二度と口にすることはないであろう。実は、かつてはいつもひもじい思いをしていた日本の子供達でも、さすがにタブノキの果実をしばしば口にしていたなどという話は一切聞かないから、これ以上の説明は要しないであろう。

 そもそも、アボカドがけしからんのは、果物のくせに全く甘くないことで、果物の風上にも置けない代物であり、どうしても食べたい人だけが食べる果物もどきである。アボカドのカリフォルニア巻きなど、狂気の沙汰である。

 なお、同じクスノキ科の属は異なるクスノキ属(ニッケイ属)のクスノキの果実は各種の鳥がふつうに食べることが確認されているが、試しに口に含んでみると非常にまずいことを確認した。ある公園ではハトが落下したクスノキの果実をツンツンとついばみ、果肉だけを食べているのを見かけた。餌をくれる人がいなくて、いかにも仕方なくクスノキの果実をついばんでるといった風情であった。鳥にとってはタブノキの果実はクスノキの果実に比べればはるかに上質の味であろうことは想像できる。 
 
   
  <メモ>   
   タブノキ:
 タブノキ Machilus thunbergiiクスノキ科タブノキ属の常緑高木で、分類上はアボカドと同じワニナシ属(この場合の学名はPersea thunbergii )とすることもあるそうである。
 タブノキの果実は人にとっては全く美味しくないが、野生動物にとっては貴重な、栄養に富んだ餌になっているようである。その理由は、しばしば果肉がきれいに消化された状態の種子がまとまって落ちているのを見ることができるからである。
 
 
   アボカド:
 アボカド Persea americana は、メキシコからコロンビア周辺の地域原産のクスノキ科ワニナシ属(アボカド属)の常緑高木で、数千年前から栽培されていたとされる。果実の果肉は脂肪分に富み(注:幸いにして不飽和脂肪酸とされる。)、タンパク質、ビタミンも多いとされるが、糖分は1%以下という、奇妙な果実である。
 アステカ人はアボカドのことを「森のバター」(butter of the forest)を意味する ahuacatl と名付けていたとされる。  
 
     
  【追記 1】   
  散歩中に見かけたある落とし物    
     
   散歩中に、小さな丸い種らしきものがまとまって落ちているのが目に入った。よく見ると、見覚えのあるやや扁平な種子で、どう見てもタブノキの種子である。きれいに果肉が消化されているといった風情で、どなたかが落としたのであろう。具体的な落とし主は、とりあえずは不明であるが、ミニアボカドをたっぷり堪能しているようである。うわさによれば、例えばムクドリなどのやや大きめの鳥は可能性ありのようである。また聞くところによると、落下した果実はカラスやタヌキもよく食べるらしい。  
     
 
 
       うんち その1 
 雨に洗われたのか、きれいなものである。
       うんち その2 
 まるで漂白したような色合いである。
   (比較用)タブノキの種子
 こちらはもちろん人為的に果肉を除いたものである。
 
     
  【追記 2】 アボカドの栽培試験  
   アボカド果実の種子はあまりにも大きく、このために食べる部分がひどく減らされていることにもなっていて、見ていると腹が立ってくる。果実全体の重量比としても相当なものである。これ自体を食べる方法があれがいいのであるが、全く利用価値のない廃棄物である。こうしたもどかしい実態から、多くの人が仕方がないから試しに植えてみるか・・・となるようである。
 で、自分も植えてみた。花の写真を撮るのが目標であったが、30センチほどになったところで、残念ながら根腐れで枯れてしまった。気楽にやり直しができるから、また再挑戦予定である。 
 
     
 
 
   アボカドの芽生え 1
 子葉がぱっくり割れて芽を出す。
   アボカドの芽生え 2
 葉が開いてきた。植物の芽生えは愛おしいものである。
       展開したアボカドの葉
 大きな子葉にたっぷり栄養が貯えてあるせいか、ここまでは元気がよかった。
 
     
*タブノキの樹皮の粉(タブ粉)線香の話はこちらを参照  
  都内某所の実をつけるアボカドの花と木の様子についてはこちらを参照