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          木の利用曼陀羅〜歴史と現在

あ行 か行 さ行 た行 な行 は行 ま行 や行 らわ行

語意 や。車輪の轂(こしき)と周りの輪をつないで,放射状に並ぶ細長い棒。スポーク。
用材 輻(や)としてはシラカシ,ナラ,オノオレを用ふ
柳行李1 やなぎこうり 語意 コリヤナギの枝の皮をはいで干したものを麻糸で編んで作った行李で,底や角の部分を皮等で補強し,長期の使用に耐えるようになっている。土佐柳が最高の品物が出来るといわれていた。
柳行李2 やなぎこうり 語意 柳行李は堅牢にして軽く伸縮自在にして包装用に最も適す 最も古くより有名なりしは兵庫県但馬の豊岡にしてコリヤナギが各地に栽培せらるるに至りしも其産額は兵庫県と他の諸県全体と匹敵すべく又製品としては豊岡は全国の八割を占むといふ【工藝】
柳行李3 やなぎこうり 参考 家庭用としてはほぼ絶滅したものの,豊岡杞柳細工として伝統的工芸品に指定されて技術は継承されている。小物としての飯行李(めしごうり)や現代風にデザインされた行李鞄、アタッシュケースも製作されている。【2003】
柳箸 やなぎばし 用材 やなぎばし。楊箸,雑煮箸,菓子箸等にミズクサ,サハグルミ,ドロノキ等を用ふ【工藝】
屋柱 やばしら 語意 家屋の柱。
山駕籠 やまかご 語意 山道などで用いる粗末な駕籠。竹で円く編んだ底を丸棒や丸竹からつるし,網代(あじろ)の屋根を掛けただけの,垂れも囲いもないもの。山輿(やまごし)。
山駕籠 やまかご 用材 山駕籠の擔(=担)棒には桐の丸太を用ふ 軽軟にして擔夫の肩及手を痛めず【工藝】
遊動圓木遊動円木
ゆうどうえんぼく 語意 圓=円。運動具の一。丸太を鉄鎖で低く吊り下げて前後に揺れ動くようにし,その上をたどりながら歩いて渡るようにしたもの。
遊動圓木
遊動円木
ゆうどうえんぼく 用材 圓木は背割りをしたるスギ材にして笠木はヒノキ材を用ふ【工藝】
湯かき棒  ゆかきぼう  語意
用材
棒の先端に方形の板を取り付けたもので、風呂の湯の攪拌に用いる。水湿に耐えるヒノキが一般的に使用される。 
湯殿板 ゆどのいた 語意 [伝説による習慣]アララギ:水の毒を消す故湯殿の板とし又水瓶の蓋となす(大和木経)【工藝】
弓1 ゆみ 用材 ミズメ,マユミ,ハゼノキ等。平安時代には,木弓の外側片面に竹をニベ膠(にべにかわ)で貼った,いわゆる「伏竹弓」に発達した。(注:にべにかわは「にべ」(スズキ目ニベ科の海産魚)又は鯉,鰻,鮫などの鰾(にべ、浮き袋)からつくった膠。)その後木部の外側内側の両面に竹を貼った「三枚打弓」が現れ,室町時代には木部の両側にも竹を貼った「四方竹弓」となり,さらに籐を巻き次第に強力なものになった。江戸時代以降現在に至る弓は「弓胎弓」といい,竹ひごをハゼノキの側木(そばぎ)で挟んだ構造の芯材が使用されており,ニベ膠で貼り合わせながらその乾き具合に応じて,50本から100本の楔を使って曲げながらつくる。俗に「外竹七節,内六節」といい竹の節を内外交互に配置して弾力の平均化を図っている。
(注)鰾膠は、後年、代替材料としての鹿皮から作られるようになり,さらに近年は合成接着剤に移行している。
弓2 ゆみ 用材 弓の材料には苦竹,藤,ハゼ,ケヤキ,クワ,ウルシ,サクラ,クロガキ,唐木類にして薩摩弓(注:都城の製品はこの流れを汲むという。)には通常ハゼを用ふ「ニベ」を接合の材料とす【工藝】
<補足>藤は握り部の矢摺の巻き材で、サクラ、クロガキ、唐木類は弓の上下の関板素材で、その他が弓本体の素材として掲げられているもの。
弓3 ゆみ 用材 北海道のアイヌの用ふる弓矢はオンコの材にて作り之に桜皮を巻き鮭の皮と肉との間にある「ニベ」にて付け長三尺五寸あり弦は「カラムシ」の類にして矢は茅に鳥の羽を付け長一尺九寸あり矢尻は竹にて製し松脂にて付け毒は「ブシ」と称する草の実にして之を矢尻に塗る此矢尻は獣体中に入れば脱出して止まる【工藝】
弓4 ゆみ 用材 十勝地方では、アイヌの弓の材料にはハシドイ(どすなら)又はイチイ(おんこ)を用いた。【アイヌ民族誌】
弓5 ゆみ 用材 アイヌのイチイ弓:他の木では長い間弦を張っておくと次第に曲がって弾力を失ってしまうが,この材のよく乾燥したものは雨露に晒されてもなまって弾力を失うことはないといわれている。【平井】
弓6 ゆみ 用材 イチイの学名である Taxus(イチイ属)はギリシャ語の弓を意味するタキソンtaxonに由来し,英語の毒toxinの語源にもなっている。セイヨウイチイ(ヨーロッパイチイ)T.baccata L.(英名 common yew)は硬くてよくしなり,その弓は長い距離を射るのに抜群の効果があった。イングランド軍の弓隊はイチイの木で作られた長弓をひくことでヨーロッパ中に恐れられていたという。
弓7 ゆみ 用材 梓弓:い,いる,ひく,はる,もと,すえ,つる,よる,かえる,や,音などにかかる枕詞として歌に詠まれた梓弓の梓にあたる植物には,古来キササゲ,アカメガシワ,オノオレ,リンボク(ヒイラギガシ)などの諸説があり一定しなかった。ところが白井光太郎がカバノキ科のヨグソミネバリ(ミズメ)説を唱え,正倉院の梓弓についての顕微鏡的調査の結果からも実証され,現在これが定説になっている。
弓8 ゆみ 用材 弓の側木(そばぎ)は土佐、伊予産のハゼにして心を去り辺心材の境界部を柾目に取りて用ふ【工藝】
弓9 ゆみ 用材 弓の芯材として,ハゼノキと竹を組み合わせている(都城等)。ハゼノキは芯に当たる黄色の部分使う。芯の部分が最も弾性に富み,やわらかいため弓に適しているという。
湯屋流し ゆやながし 用材 湯屋(風呂場)流しはスギ,同土台はヒノキ,ヒバ 湯屋の流しはスギに限る他の木材を以てすれば滑る欠点あり。【工藝】
洋琴・風琴 ようきん 語意 日本で明治時代に音楽取調掛(おんがくとりしらべがかり)でピアノを洋琴(ようきん)と称した。本来は別物。風琴(ふうきん)はオルガン(又はアコーディオンを意味した「手風琴」の略)のこと。
<参考>本来の洋琴は近世,中国・朝鮮の打弦楽器。平たい箱状の木製胴の上面に真鍮(しんちゆう)弦を平行に張り竹製の細い棒(琴竹)を左右の手に持ち打ち鳴らす。
楊枝1 ようじ 語意 @物を食べたあと歯の間にはさまったものを取るためなどに用いる,先をとがらせた短い木の棒。爪楊枝(つまようじ)。小楊枝。
A歯の洗浄のために用いた道具。楊柳(ようりゆう)の材の先端を打ちくだいて総(ふさ)状にしたもの。総楊枝。【大辞林】 
・爪楊枝は爪先で持つ楊枝の意。業界では昔から習慣的に妻楊枝の字を充ててきた。【稲葉】
楊枝2 ようじ 語意 中央区日本橋小網町18-10の「さるや」は創業・宝永元年(1704年)の本邦随一の楊枝専門店として健在。
楊枝3 ようじ 語意 現在の楊枝は手に持つ方にこけし状の刻みが入っているがこれは単なる飾りである。この飾りは昭和36年に考案されたもの。それまでは楊枝の長さの倍の寸法の丸軸両端を削り,それを真ん中で切って二本の楊枝を作っていた。切断には丸い鋸を使っていたが,切り口が痛むことが多かったので砥石で切ることにしたが摩擦の熱で切り口が黒く焦げてしまった。そこで,先端のところを頭に見立てて,その少し下の部分に刻みを入れこけし状にした。【稲葉】 
楊枝4 ようじ 語意 大阪府河内長野(かわちながの)市上原町の株式会社広栄社は三角ようじの製造で知られ,また「つまようじ資料室」があってこれを公開している。河内長野は中国で完成品ができるまでは長く全国の96%の出荷比率を誇ってきたが,現在(1998年)は約80%に落ちた。【稲葉】
楊枝5 ようじ 語意 欧米では,いわゆる楊枝(平楊枝)のことはトゥースピック TOOTH PICK (英語では必ず平楊枝を指す),丸い楊枝はカクテルピック COCKTAIL PICK(オードブル等に利用),三角楊枝をデンタルピックDENTAL PICK と呼んで用途によって使い分けている。【稲葉】
楊枝1・(楊子) ようじ 用材 クロモジは香気あり材質柔軟にして最も用に適するもウツギは香気なきを以て下等品に製せらる【工芸】
楊枝2・(楊子) ようじ 用材 材料としてはヤナギ,ハコヤナギ(ヤマナラシ),コブヤナギ,クロモジ,カンボク(肝木),モモ,スギ,タケなどが用いられた。【百科】
*楊子/楊枝の名は,もと楊柳(ヨウリュウ:カワヤナギとシダレヤナギ)の材を用いたからという【広辞苑】 。
楊枝3・(楊子) ようじ 用材 房楊子にカンボク,ヤナギ,ドロを用ひカンボクを上等品とす小楊枝にヤナギ,クロモジ,ウツギ,モミジ,チシャ,ゴンゼ(マメブシの大阪方言=キブシ)を用ふ【工藝】
楊枝4・(楊子) ようじ 用材 「やなぎ楊枝」で知られる「やなぎプロダクツ株式会社」では,日常用の楊枝はほとんどがシラカバを使用しており,大半は中国で生産しているという。【2003】
楊枝5・(楊子) ようじ 用材 シラカバの楊枝は程良く堅く,折れにくく,折れても先が離れない程の粘りがあるという条件を満たしている。【稲葉】
楊枝・房楊子1 ようじ・ふさようじ 語意 柳の小片を箸(はし)のように削り,先端を叩いて総のようにした楊枝。打ち楊枝。【大辞林】
楊枝・房楊子2 ようじ・ふさようじ 語意 房楊枝は旧幕時代大名各家にて夫々他と異なれる形状に製せしめて使用したるものにして敢て之を紊(乱)ることなかりしといふ維新後は此習慣消滅したれども今尚ほ旧式のものを使用する向きありといふ其他は花柳社会又は旅館等にて用ひらるるのみ【工藝】
楊枝・房楊子 ようじ・ふさようじ 用材 用材はカンボク,ドロ。カンボクはドロに比すれば材質柔軟にして房の落つること少く歯当しなやかなり。【工藝】
浴槽  よくそう  用材  風呂桶と同様にヒノキ,ヒバ,サワラが一般的。水湿に耐えることが必要であることから,スギを使用する時は赤身が好ましい。また,コウヤマキの浴槽は古くから上級品として存在する。
葭戸/葦戸 よしど 語意 よしど。よしずを張った戸。夏,襖(ふすま)・障子などを外して代わりに使う。簾戸(すど)。簀戸(すど)。葭障子。
四つ目垣 よつめがき 語意 よつめがき。竹垣の一。丸太の柱の間に,竹をまばらに縦横に組んで,四角にすき間をあけたもの。
四谷丸太 よつやまるた 語意 江戸時代に杉の産地だった四谷で杉の若木の皮を剥いで「四谷丸太」として売り出していた。四谷丸太の産地は高井戸付近が主であった。