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続・樹の散歩道
  ヤツデの葉裏の昆虫たち 2
   葉裏のワンダーランド その4


 先にヤツデの葉裏を少々観察したところ、複数の昆虫たち(こちらを参照)を確認できた。そこで、さらに注意して観察したところ、似てはいるものの別物らしきものや、小さな蛹も目にすることができた。小さな虫の同定は素人には困難であり、また、中にはたまたまの通りすがりのものや、単に一服していただけのものもいたかも知れないが、やはり、ヤツデの葉裏は身近な生物多様性の世界であり、よい教材であった。 【2019.5】 


 コナカゲロウ科の仲間の蛹と成虫  
 
   本種の繭(まゆ)は2重になった薄い糸の膜で形成されていて、うっすらと中が透けて見える状態となっていた。中の蛹を見ても正体は不明であったが、成虫(後出)の姿を見て初めてコナカゲロウの仲間であることが判明した。   
 
       コナカゲロウの仲間の繭 1 
 外側の糸の膜の長径は11ミリほどである。
       コナカゲロウの仲間の繭 2
 外側の膜を剥がすと、内側の膜が現れ、蛹の姿がはっきりと透けて見える。
   
      コナカゲロウの仲間の蛹 1
 内側の糸の膜を剥がした状態である。蛹の体長は1.5ミリほどである。
       コナカゲロウの仲間の蛹 2
 脚、長い触覚、翅が行儀よく収まっているのがわかる。 左下に見えるブラシ状のものは幼虫時の触角である。
 
 
 やがて、以下の成虫が羽化した。コナカゲロウの仲間と見て間違いなさそうである。

 アミメカゲロウ目の仲間は成虫・幼虫ともにほとんどが捕食性(昆虫博士入門)とされ、幼虫は肛門絹糸腺をもち、ここから絹糸をだして葉上に2重の繭をつくる(世界文化生物大図鑑・原色日本昆虫図鑑)という。

 アミメカゲロウ目・コナカゲロウ上科・コナカゲロウ科の仲間は翅や胴体が白粉で覆われ、日本産は7種ほどが知られている模様である。

 7種(日本産昆虫目録)はマダラコナカゲロウ(翅に斑紋あり)ムツボシコナカゲロウキバラコナカゲロウオキナワコナカゲロウヒメコナカゲロウアトコバネコナカゲロウシロコナカゲロウ(幼虫は斑紋あり)で、都内ではアトコバネコナカゲロウキバラコナカゲロウシロコナカゲロウの3種が見られる(弘前大学・フィールドサイエンス研究会)という。 
 
     
 
                  コナカゲロウの仲間の成虫 1
 体長は2.5ミリほど、全長は4ミリほどである。全身が粉っぽいことが本科の名前の由来のようである。
 
                   コナカゲロウの仲間の成虫 2
 
                  コナカゲロウの仲間の成虫 3
 
                   コナカゲロウの仲間の成虫 4
 
                  コナカゲロウの仲間の成虫 4 
 口器の部位の呼称はよくわからないが、単純な咀嚼口を持つとされる。 
 
     
 コナカゲロウ科の仲間の幼虫  
     
 以下の幼虫はコナカゲロウ科の仲間と考えられるが、前出の成虫と同一種とは限らない。さらに、白黒模様のシロコナカゲロウでもない。  
     
      コナカゲロウの仲間の幼虫 1
 本種は、腹部の末端に吸着器を持つタイプで、この吸着器を使った尺取り虫のような運動が見られた。
      コナカゲロウの仲間の幼虫 2 
 ただのうじ虫のようにしか見えないが、触角と6本の脚がある。マメアブラムシを与えてみたが好みではなかったのか、全く受け付けず、餓死してしまった。
   
      コナカゲロウの仲間の幼虫 3
 口器には成虫に似た器官が見られる。ブラシ状(羽毛状)の触角が個性的で、成虫時のものとは全く異なっている。 
      コナカゲロウの仲間の幼虫 4
 腹部末端のペタペタ張り付く吸着器部分の機能がどんな構造に由来するのかはよくわからない。
 
 
 その他  
 
   そのほかに何種類かの翅を持った小さな昆虫が見られた。   
     
             コバチの仲間 1
 ヤツデの葉裏で何をしていたのかは不明。
          コバチの仲間 2 
 腹側の様子である。
   
  ウスイロチャタテ科のチャタテムシの仲間? 1
 体長は2ミリほどで、翅に黒斑がある。
   ウスイロチャタテ科のチャタテムシの仲間? 2 
 ヤツデの葉のすす病に引き寄せられてきたものか? 
 
     
 
                  ユスリカの仲間(雄)
 たまたまヤツデの葉に止まっていたということなのであろうか?
 
     
   ヤツデの葉は昆虫の学習には実に都合のよい存在であった。ただし、多くの昆虫を抱えた葉は、少々汚いのが難である。