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続・樹の散歩道
  トキリマメの奇妙な黄色の腺点


 先に別項でホップの黄色の腺点であるルプリン腺こちらを参照)を観察したところであるが、トキリマメでは子房に黄色の腺点が見られると聞いた。そこで図鑑情報を調べてみると、トキリマメやタンキリマメを含むタンキリマメ属では葉の裏面や萼黄色(黄褐色、)の腺点があり、またノアズキを含むノアズキ属でも葉の裏面や萼赤褐色の腺点があるとしている。ただし、図鑑では子房部分に腺点があるとは書いていない。さらに、これらの腺点に特別の機能があるのかについても情報がないが、興味を感じるため、とりあえずはトキリマメで黄色の腺点の存在を確認してみることにした。 【2018.10】 


 トキリマメの様子  
 
           トキリマメの蝶形花
 花は黄色の蝶形花。 マメ科トキリマメ属のつる性多年草。名前の由来は不詳。 Rhynchosia acuminatifolia 
          トキリマメの3小葉
 マメ科の野草の葉はポイントを覚えないと識別が困難である(後述)。本種の別名はオオバタンキリマメ。 
   
          トキリマメの果実(豆果) 
 成熟した豆果は鮮やかな紅色でよく目立つ。
      種子を見せたトキリマメの豆果 
 豆果が裂開すると艶やかな黒色の種子を2個出し、赤と黒の対比が美しい。さやの表面をよーく見ると、短毛と淡色の点が肉眼でも何とか見える。
 
 
 トキリマメの腺点(腺体)                
 
   植物の腺点(腺体)についてはいろいろな外観、属性のものが知られていて、蜜腺体以外のものでもそれぞれ何らかの機能を有するものであるはずであるが、残念なことに現在のところはよくわからないようであある。ホップの腺点のように植物にとっての本当の機能はよくわからないままに、古くから利用されているケースもある。もどかしいことであるが、とりあえずは鑑賞するしかない。
注;蜜腺体のうち、花外蜜腺についてもその役割について明確にはわかっていないようである。 
 
     
 
            トキリマメの萼
 裸眼ではわからないが、萼は黄色の腺点が分布している。
        トキリマメの萼の腺点(腺体)
  腺点の形状は球状である。
   
       トキリマメの雄しべと雌しべ 
 雄しべは9本の合着した雄しべと1本の離生雄しべで構成されている。花粉も黄色。さすがに花糸や花柱には腺点は見られない。
      トキリマメの雌しべと離生雄しべ 
 子房が黄色に見える理由は・・・・・・次を参照
   
          トキリマメの子房部分 
 子房は粒状の黄色の腺点が全体を被っている。これだけビッシリと被っているということは、子房を保護することに役立っているのかも知れない。
         トキリマメの子房の腺点
 腺点には大小が見られる。大きいものはやや横長である。
   
        トキリマメの葉裏の腺点 1 
 裸眼ではわからないが、葉裏には黄色の腺点が分布している。  
        トキリマメの葉裏の腺点 2 
 腺点は球状である。 
   
       トキリマメの若い豆果の腺点
 子房で見られた腺点の名残ということか。まばらに見られる。 
  トキリマメの成熟豆果の表面(前出写真の部分) 
 先の成熟した豆果の莢の腺点である。 
   
 
   トキリマメの茎の謎の橙色のいぼ状突起 1 
 謎の突起で、これが何なのかさっぱりわからない。 
   トキリマメの葉裏の謎の橙色のいぼ状突起 2 
 黄色の腺点よりはるかに大きい。
 
 
 豆果を付けるマメ科の野草の例   
 
 トキリマメのような3小葉を付けるマメ科の野草が色々あって、目を慣らさないと識別が難しい。以下はその一部である。  
 
 マメ科の野草の例 (説明文は野に咲く花、日本の野生植物から抜粋)  
タンキリマメ タンキリマメ属 頂小葉は倒卵形で、上半分が広く(中央より上が最も広く)、先は尖らない。蝶形花は黄色、豆果は紅色で、黒い種子が2個。
小葉の裏面や萼に黄褐色の腺点がある
トキリマメ
別名 オオバタンキリマメ
タンキリマメ属 頂小葉は卵形、下半分の幅が広く、先は急にとがる。蝶形花は黄色、豆果は紅色で、黒い種子が2個。
★小葉の裏面や萼に黄褐色の腺点がある。
ヤブマメ ヤブマメ属 小葉は広卵形、両面に伏した白短毛があり、裏面は色が淡い。蝶形花は淡紅色、豆果は扁平で、縫合腺沿いに毛があり、種子は3〜5個。
ツルマメ ダイズ属 小葉は狭卵形から披針形で、短伏毛がある。蝶形花は淡紫紅色、豆果は淡褐色の毛が密生し、種子は2〜3個。大豆の原種。
ヤブツルアズキ ササゲ属
(アズキ属)
小葉は狭卵形〜卵形で浅く3裂するものもある。花は黄色でわかりにくいが、「翼弁は左右不同で、右側のものは1/2〜3/4回転する竜骨弁を抱き、左側のは左側に突き出た竜骨弁の距に内側から押し広げられて平開する(日本の野生植物)。」豆果は線形で無毛、種子は6〜14個。小豆はこれを改良したものとされる。
ノアズキ ノアズキ属 小葉は卵状菱形。変わった形の蝶形花は黄色・大型、左右不同で非相称。豆果は広線形で短毛が密生、種子は6〜7個。
★小葉の裏面や萼に赤褐色の腺点がある。
ノササゲ ノササゲ属 頂小葉は長卵形。花は淡黄色、豆果は紫色、種子は黒紫色で3〜5個。
 
 
@ タンキリマメ  
 
タンキリマメの3小葉   タンキリマメの葉裏の腺点 タンキリマメの豆果と種子 
 
  :タンキリマメの花の子房の腺点の有無は未確認。   
     
  A ヤブマメ  
 
 ヤブマメの蝶形花  ヤブマメの3小葉 ヤブマメの豆果と種子 
 
     
  B ツルマメ  
 
ツルマメの蝶形花  ツルマメの3小葉  ツルマメの豆果 
 
     
  C ヤブツルアズキ  
 
ヤブツルアズキの変則的な蝶形花
若い豆果 
ヤブツルアズキの3小葉  ヤブツルアズキの種子 
 
 
  D ノササゲ  
 ノササゲの蝶形花 ノササゲの3小葉  ノササゲの裂開した豆果