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サンゴジュとそのダニ室の様子 |
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サンゴジュの花期の様子
サンゴジュはスイカズラ科(APGではレンプクソウ科)ガマズミ属の常緑高木。都内の木場公園ではこの木がなぜか多数植栽されている。 |
サンゴジュの円錐花序
枝先に大きな花序をつける。 |
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サンゴジュの花
花冠の上部は5裂し、雄しべは5個。 |
サンゴジュの果実
果実は鮮やかな赤色になり、その後黒熟する。写真のように果序の枝も赤くなるが、こうした姿を見ても、率直に言って、「サンゴ」はイメージできない。 |
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サンゴジュのダニ室(葉表の全体)
葉表では、側脈の基部の腋にプックリと膨らみが見られる。葉先の方では膨らみが少なく貧相である。 |
サンゴジュのダニ室(葉表側)
葉表のダニ室の膨らみ具合は、葉によって差が見られる。 |
サンゴジュのダニ室(葉裏側)
葉裏では小さな凹みが確認できる。 |
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サンゴジュのダニ室(葉裏側)
穴の奥に見える赤っぽいものはダニである。暗色の点状のものは紛らわしいがダニではなく腺点である。 |
サンゴジュのダニ室(葉裏側 ・ さらなる拡大)
穴の縁には星状毛があって、穴をゆるく塞ぐ構造となっている。暗赤色に見えるものは腺点である。 |
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サンゴジュのダニ室のダニの姿 |
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サンゴジュのダニ A-1
赤い大きめのダニがダニ室から出てきたところである。 |
サンゴジュのダニ A-2
全身を見せた左写真のダニである。8本足である。これがナガヒシダニ類であれば、捕食性のダニである。 |
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サンゴジュのダニ B
複数の白い小さなダニがダニ室で蠢いていた。ダニ室では卵のようなものも見られた。クスノキのダニ室でも見られた植食性のフシダニ類と思われる。 |
サンゴジュのダニ C
葉裏で徘徊していた大きめの淡黄色のダニである。やはり8本足である。名称不詳。その他非常に小さな白いダニが素早い動きを見せていたが、撮影は困難であった。 |
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<参考比較> コバノガマズミとヤマボウシのダニ室(ドマティア)の様子
サンゴジュが属するガマズミ属では、葉裏の脈腋の毛叢からなるダニ室をもつもの多くあり、コバノガマズミもそのひとつである。また、ミズキ属のヤマボウシの葉裏の毛叢でもダニが見られた。ということは、サンシュユでも同様と思われる。
なお、脈液の毛叢については局所的に毛むくじゃらとなっているもので、「ダニ室」の呼称がどうもしっくり来ないことから、ここでは以下しばしば用いられている外来語の「ドマティア」と暫定的に呼ぶこととする。 |
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コバノガマズミのドマティア(ダニ室)
葉裏の脈腋のもじゃもじゃの毛の中に複数の淡黄色のダニと卵のようなものが見られた。 |
コバノガマズミのドマティア室付近のダニの例
姿形は、サンゴジュで見られた淡黄色のダニと同種のように見える。こちらでも葉の表面のあちこちで、小さな赤ちゃんダニなのか、非常に素早い動きで走り回っていたが、撮影はできなかった。 |
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ダニの種類の同定は困難であるが、先のサンゴジュ、コバノガマズミで見られたものと似ている。これらの印象としては、フシダニのようにドマティア(ダニ室)に棲みついて産卵・繁殖しているというよりは、他種のダニ等の補食を目的に徘徊しているように見える。 |
ヤマボウシのドマティア(ダニ室)付近のダニの例 |
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クスノキのダニ室については別項(こちらを参照)で採り上げたが、そのほかにも葉裏の脈腋に空洞状又は毛叢状のダニ室を持つ植物は多数知られていて、多様な種類の大小のダニが出入りし、徘徊しているのはふつうの風景のようであり、また、別にダニ室がなくても植物表面でダニが這い回っているのはふつうの風景のようである。次第に薄気味悪くなってきたが、こうなると、認識を深める意味でダニに視点を置いて植物を概観する知識も必要かとも思えてくる。
なお、ダニ室を持つ植物の例に関して、国内種での網羅的な研究成果は見ないが、名古屋大学博物館の西田氏による海外論文の調査や標本による調査情報がみられる。(公開PDFあり) |
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ダニ室に関する参考情報 |
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英語のドマティア domatia (domatium の複数形)は節足動物に家を提供するために 植物自身が具えた小さな小部屋を意味し、ダニ室(ダニ部屋)と同義である。しかし、例えばミズキ科やガマズミ属樹種の葉脈分岐点の毛叢も同様の機能があることから、これもダニ室の名で包括している場合があり、一方、これが〝部屋〟のイメージとは異なるためか、意識的に「ドマティア」の語を使っている場合もあるように思われる。「虫こぶ」、「虫えい」の語が「菌えい」を包括しにくい面があるために、英語のゴール(gall)の語を意識的に使う場合があるのと同様である。 |
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ダニ、植物、葉のドマティアの生物的相互作用(要約):
葉のドマティアはダニやその他の小さな節足動物に決まって家を提供する微少な構造であり、きわめて多くの植物が具えているが、植物とダニの相利共生を仲立ちする役割に関して明らかになってきたのはつい最近のことである。新たに明らかになったのは、ドマティアの機能は主として有益なダニがその捕食者を避ける避難場所となっていることである。そのため、ドマティアが存在することで葉の上の有益なダニがより多く、病原体の攻撃が少なくなり、葉の食害が減少することになる。ある植物では予想外にも植食性のダニが特別にドマティアの住人となってしまう。しかし、植食性の動物に避難場所を提供することで、ドマティアは捕食性のものとその餌間の相互関係(作用)を安定化し、そのことによって植食性のものが突然大発生するようなチャンスを減じている可能性がある。ダニと植物の間の有益な相互関係(作用)を促進する生態学的なメカニズムを理解することは、有害生物の管理のためには重要な意味がありうる。
(NCBI, Romero GQ1, Benson WW. Author information, Abstract) |
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ダニ室:樹木の葉の裏面の葉脈分岐点には、小さな空洞(クスノキなど)・ポケット状の構造(ホルトノキなど)・細かい毛の茂み(ヤマボウシなど)など、微細な生物の「隠れ家」になるような構造(ドマティア[domatia])がある。これらにはダニの住居・産卵場所として使われることが多いので、「ダニ室」と呼ばれる。ダニ室には食害をするダニがいることもあるが、他のダニを捕食するダニが住んでいることもある。(福岡教育大
福原) |
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ダニ室に関しては海外での研究が先行していて、国内では蓄積情報が多くない。現段階では多様なダニの種類とダニ室、これを有する植物の相互関係を総合的に評価できるまでには至っていない模様である。 |
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日本と中国のサンゴジュの相違点 |
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国内の多くの図鑑では本邦産と中国産の珊瑚樹について同一種として扱っているが、一部で別種としていて、中国植物誌でも仕分けている。仕分けている場合の違いについて中国植物誌からポイントを抽出してみると、以下のとおりである。
青文字は「日本の野生植物」の記述内容である。 |
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<中国と日本の珊瑚樹の比較 (黒字は中国植物誌、青字は日本の野生植物より抜粋)> |
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学名 |
Viburnum odoratissimum var. odoratissimum
(原変種、基本変種、基準変種) |
Viburnum odoratissimum var. awabuki
(変種) |
和名 |
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サンゴジュ(珊瑚樹) |
中国名 |
珊瑚树(珊瑚樹)、早禾树(旱禾樹)など |
日本珊瑚树(日本珊瑚樹) |
分布 |
中国福建東南部・湖南南部・広東・海南・広西、印度東部、北部ミャンマー、タイ、ベトナムに分布。 |
日本、朝鮮南部、中国浙江・台湾に分布。
本州(関東地方南部以西)・四国・九州・琉球に分布。(日本の野生植物)
本州、四国、九州、沖縄、朝鮮半島南部、台湾に分布。(APG原色樹木大図鑑) |
葉 |
葉は楕円形から矩円形または矩円状倒卵形から倒卵形、時に円形に近く、長さは7-20センチ、頂端は短く尖るか次第に尖って鈍頭となり、時に鈍形からほぼ円形、基部は広楔形で、まれに円形、辺縁の上部に不規則な浅い波状鋸歯があるかほぼ全縁、下面にしばしば暗紅色の腺点が散生し、脈腋には常に毛叢と小孔があり、側脈は5-6対。 |
葉は倒卵状矩円形から矩円形、やや倒卵形、長さ7-13 (-16) センチ、頂端は鈍いか急に狭くなって鈍頭となる。基部は広楔形で、縁には規則的な波状の浅い鈍鋸歯があり、側脈は6-8対。
葉は楕円形~長楕円形、まれに広楕円形、長さ7-20cm幅4-8cmで、先端は鋭頭~円頭、基部はくさび形で、無毛、ほぼ全縁またはやや波状鋸歯があり、側脈は5-8対、葉裏の側脈のわきにはわずかに長毛がある。 |
花 |
円錐花序は頂生あるいは側生短枝上につき、広尖塔形、長さ (3.5-) 6-13.5センチ、径 (3-) 4.5-6センチ、無毛または簇状毛が散生し、花には芳香がある。花冠筒長は約2ミリ、裂片は反折し、円卵形、頂端は丸く、長さ2-3ミリ。雄蕊は少し花冠裂片から出て、花葯は黄色、矩円形、長さは2ミリほど。柱頭は頭状で、萼片より低い。 |
円錐花序は通常2枚の葉をつけた幼枝の先につき、長さ9-15センチ、径8-13センチ。花冠筒長は3.5-4ミリ、裂片は長さ2-3ミリ。花柱は比較的細く、長さは約1ミリ、柱頭は常に萼片より高い。
円錐花序は枝の先に頂生し、長さ5-16(-20)cm、幅8-16(-25)cm。花冠は短い高杯状で、径6-8mm、わずかににおいがあり、筒部は釣鐘形で長さ3-4mm、裂片は広卵形、長さ2-3mmで、しばしば反曲する。雄しべは花筒より突き出し、花筒の口部につく。花糸は長さ2.5-3mm、葯は長楕円形で、長さ1.5-2mm。花柱はごく短く、長さ1-1.5mmで、柱頭はやや3裂する。 |
果実 |
果実は初めは紅色で後に黒色となり、卵円形または卵状楕円形、長さ?8ミリ、直径5-6ミリ |
- |
果核 |
核は卵状楕円形、真ん丸、長さ約7ミリ、直径約4ミリ、1条の深い溝がある。 |
果核は通常倒卵円形から倒卵状楕円形、長さ6-7ミリ。その他の性状は原変種と同じ。
核果は楕円形~卵形で、短い突起があり、長さ6-6.5mm、厚さ約3mm、背側はほぼ円形で、腹側に1本の深い溝が縦にある。 |
花期 |
花期4-5月(時に不定期開花がある) |
花期5-6月
花期は6-7月 |
果期 |
果熟期7-9月 |
果熟期9-10月
果期は9-10月 |
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形態の細かな違いについては見てのとおりであるが、そんなことは面倒で、やはり最もわかり易いポイントは、身近なもので確認することはできないが、中国の原変種の珊瑚樹の花には芳香があるとされるのに対して、国内自生のサンゴジュではわずかに匂いがする程度とされている点である。実際にサンゴジュの花の匂いを嗅いでみると、ほとんど香りがないことを確認した。
なお、サンゴジュの種小名 odoratissimum は「非常に香りよい」の意とされる。 |
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珊瑚樹の名前の由来 |
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サンゴジュの名前については、「鈴生りに真っ赤な果実をつけた果序(果序の枝も赤い)の姿が紅珊瑚のように見えることから珊瑚樹と呼ばれるようになった」(植物の世界)と考えられていて、これについてはセンスに疑問はあるが、まあ異論はないと思われる。しかし、先の比較表で示したとおり、どういうわけか中国の原変種と日本の変種はそれぞれ漢字表記が「珊瑚樹」と全く同じである。期せずして一致したとは考えられない。和名のサンゴジュがいつから登場したのかは確認できないが、「珊瑚」の語が中国伝来であると同時に、珊瑚自体も古くに中国経由で渡来したもの(日本産サンゴの採種は江戸時代中期以降とされる。)とされることを考えれば、中国伝来の呼称の可能性が高いと考えられる。
なお、サンゴジュには別名に「アワブキ」の名があるとされる。これはこの材が水分を多く含むため、燃やすと泡が吹き出てくることによるという。一方で、アワブキ科アワブキ属の落葉高木に標準和名が「アワブキ」の名の樹種が存在するからややこしい。これも燃やすと泡を吹くという。
そこで、変種名の awabuki の由来についてであるが、一般的にはアワブキ科のアワブキに由来するとされている。しかし、これは少々唐突であり、サンゴジュの別名の「アワブキ」に由来するものではないだろうか。 |
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サンゴジュで見られた虫たち |
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サンゴジュの花を訪れたクマバチ |
サンゴジュの花を訪れたハナバチ |
サンゴジュの花を訪れたハナバチ |
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サンゴジュの葉を食い荒らす
サンゴジュハムシ(成虫)
葉があちこち食われていても、なかなか姿を見ることができなかった。 |
サンゴジュの葉を食い荒らす
サンゴジュハムシ(幼虫)
サンゴジュで普通に見られる穴だらけの葉を作る主たる犯人。 |
サンゴジュの葉裏で見られた
クサカゲロウの卵
幼虫は肉食性で、成虫も葉を食害することはないとされる。 |
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サンゴジュよりサンゴらしいライバル |
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名前に「サンゴ」の文字を含む植物がいろいろ知られている。以下はその例である。サンゴジュには気の毒であるが、サンゴジュよりはるかに鮮やかな色で、「サンゴ」の語にふさわしい。 |
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サンゴミズキの冬期の赤い枝
ミズキ科ミズキ属の落葉低木シラタマミズキ Cornus alba の変種あるいは品種 Cornus alba var. sibirica(Cornus alba 'Sibirica' )とされるもので、冬期に枝が赤くなり美しいため花材とされる。シラタマミズキはシベリア、中国北部、朝鮮半島北部に分布。(写真は11月上旬) |
サンゴアブラギリのサンゴのように美しい姿
熱帯アメリカ原産のトウダイグサ科ナンヨウアブラギリ属の落葉低木 Jatropha podagrica 。幹はトックリ状のユニークな形態で、花も花軸も鮮やかな朱色となって美しいことから、観賞用として園芸利用されている。 |
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