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公園,街路樹など、生活空間では最も馴染みが深い樹木であるだけに、このことを知るとこの木の下を歩きにくくなってしまいまう。しかし、現実直視である!! |
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クスノキの葉
左が普通の成木の葉で、右は切り株のひこばえの葉。全く別物に見える。 |
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クスノキのダニ室(ダニ部屋)
中央の二つのふくらみが、ダニ専用室である。ふくらみの数がさらに多い場合もある。.
ドマティア (domatia) の名もある。 |
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ダニ室の葉裏側 1
どのように形成されたものか、網目状の構造でゆるく塞いでいる。 |
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ダニ室の葉裏側 2
自由に出入りしているのか、外にダニが1匹だけ見える。フシダニ類のようである。 |
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ダニ室の断面 1
断面付近にピントを合わせた写真であるが、フシダニ類がウジャウジャと蠢いている。信じ難い風景である。 あー気持ちが悪い!!
(写真上方が葉表側。右の写真も同様。) |
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ダニ室の断面 2
ダニ室の奥にピントを合わせた写真である。奥にもウジャウジャいて、切り取った半分の部分の住人の数を含めたら恐らく百匹近い規模と思われる。 |
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小さなダニ室の空間に、これだけの密度でフシダニ類がひしめいているというのは驚きであり、この時期は出入り自由でることを考えると、美味しい食べ物がクスノキからふんだんに供給されるなど、よっぽど居心地がいいに違いない。(上の4枚の写真は7月中旬) |
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このことに関しては、古くから知られている事実であるにもかかわらず、一体この情景が何なのか、詳細については全くわかっていない。身近な事象であることから、関心を持つ研究者も多く、まじめな研究が行われている模様である。とりあえず、以下のような記述を目にした。 |
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ダニ室は虫コブのように、虫がつついて形成されるものではなく、クスノキ自身が作っている。
(図鑑によってはこれが虫コブ(虫えい)であるとしている場合があるが、誤りであろう。虫えいは別に作られることもあるようである。) |
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ダニ室には肉食や菌食のダニも見られるが、圧倒的に植食性のフシダニ類が多い。 |
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クスノキとダニが共生関係にある可能性がある。 |
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ダニ室の(葉裏の)入り口は秋には狭くなってダニが閉じこめられ、そのまま春の落葉期を迎える。 |
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ガマズミ属の樹木にもダニ室が見られる。 |
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これではまださっぱりわからない。やはり、クスノキが巧妙にダニを利用しているテクニックがわからない限りはスッキリしない。今後の研究に期待したいものである。とりあえずは、吸血タイプのダニがウジャウジャいて、これが上空から降り注いでくるわけではなさそうであるのはせめてもの慰めである。しかし、ダニだらけの写真を見て、明らかにクスノキに対するイメージが悪化してしまった。だだ現実を直視すると、住生活の空間は実はダニだらけであるとも言われており、クスノキのダニ如きで神経質になっても仕方がないと言えなくもないから、あまり気にしないことにしよう。それにしても、かつては防虫用の樟脳の原料にもされたクスノキが、ダニの巣窟になっているとは何とも皮肉なものである。
*ガマズミ属のサンゴジュ、コバノガマズミのダニ室についてはこちらを参照 |
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<参考メモ>
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熱帯地方にはダニ部屋を持つ植物が何百種と知られているという。 |
A |
クスノキは各地に巨木が存在し、歴史を感じさせるが、実はこれが古い時代に移入された外来種であるとする説がある。確かに原生林には存在しないし、興味深い話である。以下のような記述例が見られる。 |
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クスノキは古くから植えられていたので自生の範囲は明確ではない。【朝日百科植物の世界】 |
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日本では本州・四国・九州の暖地に見られるが、これが野生かどうかはわからない。中国江南地方の原産ともいわれるが、これもはっきりしない。【平凡社日本の野生植物】 |
B |
英語で樟脳は camphor で、クスノキは camphor tree 。 樟脳の医薬品名をカンフル(独語:Kampher,英語ならカンファー)といい、かつてのカンフル注射の注射剤で、強心薬として利用された。 |
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