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続・樹の散歩道
  ヌルデの葉のイボイボ状の虫えいのダニ探し


 ヌルデの虫えい(虫こぶ)としては葉の軸に形成される大きな虫えいが有名で、これにはヌルデミミフシの名があるが、昔からの呼称である五倍子(ごばいし)の名の方が広く知られている。
 一方、葉にもイボ状の虫えいを多数つける風景がしばしば見られ、これをヌルデハイボケフシと呼んでいて、五倍子よりもはるかに目にする頻度が高い。ただし、五倍子の住人がアブラムシ(ヌルデシロアブラムシ)であるのに対して、葉の虫えいの住人はフシダニの一種とされ、大きさが0.2mm にも満たないため、観察は簡単ではない。いくつかの虫えいのダニを観察した流れで、このダニの素顔についても念のために確認してみることにした。 【2018.12】 


 ヌルデハイボケフシが生じたヌルデの葉の様子  
 
          ヌルデの葉の虫えい 
 ヌルデは積極的に植栽されることはなく、道端で勝手に生えているのが普通の風景である。写真の幼木ではほとんどの葉に虫えいが形成されていた。 
           ヌルデの葉の虫えい
 一見すると病変した葉のような印象があって、気持ちが悪い。こうなると誰も手に取って検分しないと思われる。 
   
         ヌルデハイボケフシの様子
 小さなイボ状の突起が分散し、これが融合して大きくなっているものも多く存在する。 
      ヌルデハイボケフシの様子(葉裏側)
 葉裏の様子で、突起の内側は白い毛が密生していて、閉鎖型の虫えいではないことがわかる。  
 
 
 虫えいで見られたダニ  
 
 その1  
   虫えいの裏側からのぞき見ると、白色と淡橙色のダニが忙しく動き回っている姿が目に付いが、フシダニの姿はなかなか見つからない。   
     
         白色のダニ       同左ダニの拡大写真         淡橙色のダニ
 
 
 その2  
 さらにマメに観察すると、フシダニの姿がちらほらと見られた。虫えいの主であるはずであるが、あまりにも数が少ない。ひょっとすると、前出のダニが捕食性のダニで、フシダニの個体数が減っているのかも知れない。  
 
  ヌルデの虫えいのフシダニ 1   ヌルデの虫えいのフシダニ 2     ヌルデの虫えいのフシダニ 2
 
 
 ヌルデの葉で見られるヌルデハイボケフシの形成者はフシダニの一種であるヌルデフシダニ Aculops chinonei とされている。

 こうして見られた複数種のダニの構成は、別項(こちらを参照)のサンゴジュのダニ室で確認された顔ぶれと似たような印象を持った。
 
 
 虫えいをつけたヌルデの葉裏で見られた奇妙な虫  
 
   虫えいをつけたヌルデの葉裏を観察していた際に、奇妙な昆虫がしばしば徘徊しているのを確認した。調べてみると、ヒメヨコバイの仲間で、ホシヒメヨコバイの幼虫と思われる。   
 
 ホシヒメヨコバイの幼虫 1 ホシヒメヨコバイの幼虫 2      ホシヒメヨコバイの幼虫の
    脱皮殻(部分)
 
 
    非常に小さい幼虫で、成虫でも3 mm 程度とされる。虫えいだらけの葉裏で何をしていたのかは不明である。  
     
 参考写真:ヌルデの虫えい ヌルデミミフシ(ヌルデ五倍子)  
 
 ヌルデの虫えい ヌルデミミフシ 1  ヌルデの虫えい ヌルデミミフシ 2
 
 
 ヌルデ五倍子は屋外で割って中を見たことがあるが、大量のアブラムシがザワザワと蠢いていてウンザリしたことがある。 こんなものを部屋で開いたらとんでもないことになる。

 この虫えいはタンニンに富んでいて、かつてはこれを御歯黒(鉄漿付け)鉄漿(かね、かねしょう)を作る重要な材料の1つとして利用したという。