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続々・樹の散歩道
   マンサクの花の中心部を観察する


 マンサクの吹き戻しのようなテープ状の花弁はユニークで、シンプルな花ではあるが春を待ちきれずに咲く姿は、他の早春の黄色い花と時期がかち合っても決して見劣りしない。このシンプルな花に関して、葯にはフタがついているとか、仮雄しべがあるとかいわれるが、今までこれらをじっくり見たことがない。特に葯の「フタ」については是非とも確認したく、改めて観察してみることにした。 【2022.3】 


          マンサクの花
 葉が出る前に枝を黄色の花で埋め尽くすためによく目立つ。暗紫色に見えるのは主として萼片の色に由来する。(葯も暗紫色である。) Hamamelis japonica
        アテツマンサクの花 
 アテツマンサクは萼も葯も黄色であるため、遠目にもマンサクの花とは印象が異なる。マンサクの変種扱いとなっている。 Hamamelis japonica var. bitchuensis 
 
 
   マンサク類は満開となった後でも、花弁のもちが結構いいようである。公園や庭園の定番樹種であるが、栽培品種が多くて素性がよくわからない。例えばシナマンサクはだらしなく枯れ葉をつけたままで花をつけるものと思っていたところが、そうでもないものも目にする。   
     
       マンサクの花の中央部 1
 がく片は4枚、線形でリボン状の花弁も4枚、雄しべは4本、線形で平たい仮雄しべも4本、花柱は深く2裂する。 
      マンサクの花の中央部 2
  すべての葯の弁が、ちょうつがいのついたフタのように180度雌しべ側へパックリ開いている。弁の内側に花粉をこんもり付けた状態である。2裂した花柱も確認できる。
   
    アカバナマンサクの花の中央部 
 アカバナマンサクでは、葯が暗紫色であるのに対して、葯の弁の部分は淡紫色である。
 Hamamelis japonica var. obtusata f. incarnata
     アテツマンサクの花の中央部 
 葯が弁開した状態である。アテツマンサクでは、萼片、花弁、花柱、花糸、葯、葯の弁、仮雄しべのすべてが黄色である。写真の葯では花粉はほとんど脱落している。
 
 
   マンサクの仮雄しべの様子 
 仮雄しべの様子を確認するために花弁と雄しべを取り去ったものである。筒を縦割りにしたような形態である。
    マンサクの雌しべの様子
 花弁、雄しべ、仮雄しべを取り去った状態で、2裂した花柱の全体がやっと確認できる。
  シナマンサクの雌しべの様子 
 柱頭に花粉がタップリついている。
 Hamamelis mollis
     
    マンサクの仮雄しべ 1
 ぺっちょり濡れているように見えるのは蜜を分泌していることに因るという。
   マンサクの仮雄しべ 2 
 これも濡れているが、花期に全ての花で仮雄しべが蜜を出しているようには見えなかった。
  アカバナマンサクの仮雄しべ 
 花弁までがベタベタになっている。
 
 
  <参考: 葯の裂開のパターン>   
 
      タブノキの葯の弁開
 クスノキ科で見られるもので、4個のフタがまくれ上がり、フタの内側に花粉をつけて露出させる。
   サツキツツジの葯の孔開 
 ツツジ科で見られるもので、先端に孔が開く。花粉は糸状の物質(花粉糸)で連なった状態で引出されて付着する。
   オシロイバナの葯の縦裂 
 葯が縦に裂ける例で、このパターンが最も多いとされる。
 
     
マンサクの枝の利用、マンサク類のいろいろな花に関してはこちらを参照