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続・樹の散歩道 ドクダミの花のお勉強
ドクダミは最も身近な雑草の一つで、都市部のちょっとした隙間でも元気に繁茂している姿を見かける。その個性的な匂いを好む人はいないと思われるが、生活空間ではすっかり風景に溶け込んだ存在となっている。花は白い十字形の総苞片がよく目立ち、よく見ればなかなか美しいため、決して疎まれることもなく、しばしばグランドカバーとして積極的に活用しているかのような景観をなしているケースも見られる。この実になじみ深いドクダミに関して、花の構造を説明した図鑑の内容を確認してみたいと思ったことがあるが、あまりにも小さい花がグチャグチャと寄り集まっているために気力が萎えてしまい、未だに一単位の花を分離してじっくり観察するまでに至っていない。 【2015.10】 |
1 | ドクダミのある風景 | ||||||||||||||||
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ドクダミのにおいに関して、「生葉に触れるといやなにおいがするが、触れなければ臭気はもれない。」との記述を目にしたが、確かにそのとおりで、クサギと同様のメカニズムを連想する。もちろん乾燥するとにおいはなくなる。 | |||||||||||||||||
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4個の総苞片の大きさはは不ぞろいであるが、このことについて植物観察図鑑では「4枚の総苞は、大きいものが1枚、中くらいのものが2枚、そして大形のものに向かい合った小さいもの1枚からなっている。」としている。 | |||||||||||||||||
と、ここまではドクダミのふつうの風景であるが、一般の図鑑でも、小花の雄しべが3個あり、花柱が3裂した雌しべが1個あるとしていて、さらにある書籍によれば、「ドクダミの小花の基部には微細な緑色の小苞がある。」とのことである。さっぱりイメージが湧かないため、身近な雑草を知るため、少々面倒ではあるが意を決してドクダミの花穂をカッターで解体して、観察してみることにした。次はその様子である。 | |||||||||||||||||
2 | ドクダミの花 | ||||||||||||||||
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小花の基部に小さな小苞(苞片)なるものの存在を確認したが、この何たるかの定義等については別項(こちらを参照)でお勉強したとおりである。 見た目にはこんなものがなくても少しも困らない、どうでもいいような微少な器官であるが、実は、多数の総苞片を有する八重ドクダミ(ヤエドクダミ。ヤエノドクダミとも。)は、この小苞(苞片)が発達して白くなったものとされている。 |
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また、ヤエドクダミが咲いた中に、しばしば総苞片の一部が緑色の葉になりかけ、あるいはなってしまったようなものを見ることがある。巷では八重咲きミドリドクダミと呼んでいる例がある。この現象が試行錯誤なのか、道を誤ったものなのか、先祖返りなのかはわからない。 | |||||||||||||||||
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【追記 2017.5】 ヤエドクダミの個々の総苞片にはセットとなった雄しべと雌しべがあるのか | |||||||||||||||||
一般的に、八重咲きの花は雄しべや雌しべが花弁化したものとされるが、ヤエドクダミの場合は花弁ではなくて小苞が大きくなったものとされる。ということは、小苞とセットとなっていた雄しべや雌しべがどうなってしまったのかが気になるところである。そこで、ヤエドクダミを横から見ると、雄しべや雌しべが多数の(小苞由来の)総苞片の間にちゃんと存在することを確認した。 | |||||||||||||||||
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そこで、改めてふつうのドクダミの花をよーく見てみると、花穂の下部にはしばしばやや大きめの小苞をつけた小花が見られた。さらに、4個の総苞片を改めて見てみると、セットとなった雄しべと雌しべがあるように見えた。 | |||||||||||||||||
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【追記 2017.5 ドクダミの花穂に雄花が存在するとされることについて】 | |||||||||||||||||
ドクダミの小花については、一般的には両性花であるとされているが、園芸植物大事典では、「ドクダミの花は両性または雄性」としていて、両性花と雌しべを欠いた3個の雄しべだけの雄花の両方のイラストがキッチリ掲載されている。 これがどういうことかというと、花穂の上部で雄花のようなものが見られることが背景となっている。この雄花のようなものについてであるが、以下はこれをよーく見た上での感想である。 雄花とされるものは、外形的には花穂先端部の半端状態のやや貧相で小さな小花で見られるもので、先端部を除く部分で見られる充実した両性花と同列の存在ではない。ドクダミ自身にとってみれば、先端部は重要な部位ではなく、雌しべの形成を手抜きした存在と思われ、また、客観的にこれを見れば、中途半端で小さな小花では雌しべが欠損し、通常のものではないと見なされる。 ということで、雄花のように見えるものについては、積極的にこれが雄花であると主張するような存在ではないと思われる。敢えてこれについて記述するとすれば、「ドクダミの小花は両性花であるが、花穂の先端部の矮小な小花では雌しべが欠損している(未成熟のままとなっている)ものが見られる。」とすればわかりやすい。 要はウコギ科のタラノキやウドなどで見られる“雄花のようなもの”と共通した属性のように思われる。 |
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<参考メモ:ドクダミのあらまし> | |||||||||||||||||
2種類の図鑑での説明振りを以下に転載する。昔の文も冗長な言葉がなく簡潔でリズム感があってよい。 | |||||||||||||||||
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3 | ドクダミの雄しべには花粉があるのか? 種子でも繁殖できるのか? | ||||||||||||||||
先にドクダミの花序をコネコネいじって花粉の存在を認識していたが、あるボランティアガイドが、「ドクダミには花粉はなく、単為生殖をしています。」とする説明をしていた。何やら訳がわからなくなってしまったので、以下に参考資料を並べてみる。 | |||||||||||||||||
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以上のとおり、わずかな資料を抜粋しただけであるが、内容には随分隔たりがある。 花粉については、① できない、② 受粉しない、③ (花粉は)しなびていて役にたたない とする内容があり、 種子については、① 花粉に関係なくすべて結実する、② 種子でも繁殖(発芽)する、② 種子をつくらず、できてもしいなのみ とする内容が見られ、困ったものである。 しかし、国内でほとんどを占めるという3倍体のものでは、受粉による結実はなく、単為生殖により結実することが一般的な知見となっていると受け止められる。こうなると、意外や牧野富太郎の見解が形勢不利となっている。 なお、ついでながら花粉の生理的な機能についても知りたいところであるが、残念ながら情報を目にしない。 |
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これほどまでに身近な存在でありながら、目にする記述内容がバラバラなのは驚きであり、また残念なことである。 ついでながら、改めてドクダミの花粉と種子を確認してみた。 |
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<参考1:ドクダミの名前の由来> | |||||||||||||||||
例によって諸説あって定説はないが、ドクダミの「ドク」は明らかに「毒」であり、問題は「ダミ」の部分である。次のような説を目にする。 ①「毒痛み」より 毒や痛みに効くということから、「毒痛み」から転じたとする説。 ②「毒矯め(どくため)」より 毒を矯める・止めるということから、「毒矯め」から転じたとする説 *広辞苑はこの説を掲げていて、江戸時代中頃からの名称としている。 ③「毒溜め」より 悪臭と増殖力に由来するという説 牧野富太郎も断定は避けて、通説を紹介するにとどめている。(前出) |
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<参考2:ドクダミの薬効> | |||||||||||||||||
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<参考3:ツルドクダミとは> | |||||||||||||||||
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名前はまるでつる性のドクダミといった風情であるが、全く別物で、中国原産のタデ科ツルドクダミ属の多年草 (Pleuropterus multiflorus(Polygonum
multiflorum)である。江戸時代に渡来したものの、期待したほどの効能が見られないことからやや疎んじられるところとなり、現在では各地に野生化して帰化植物として知られている。故あって皇居の石垣のあちこちにもぶら下がっている。 薬効もドクダミとは異質で、髪を黒くし、強壮強精、便秘改善などに効くといわれる。 日本薬局方にはツルドクダミの塊根が「カシュウ/何首烏」の名で収載されている。 |
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