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そこで、密かな期待を抱きつつ図鑑類をひもといてみるものの、“トウダイグサ科の植物は、人の理解を遥かに超えた異次元の進化の道をたどった「宇宙植物」である可能性が高いことが次第に明らかになってきた” とするような記述は残念ながら今のところは見られない。
近年、DNA解析に基づくAPG植物分類体系が勢いを得ている模様で、ゲノム解析によって植物を進化系統順に分類するための数次にわたる修正を経た提案が示されていて、その中では慣れ親しんだスギ科の名称がいつの間にか抹消されてヒノキ科に統合されてしまっている。
関心のトウダイクサ科に関しては、従前の掃き溜め的扱いの部分を改めたのか、複数の属が別の科に再編・整理されたと聞くものの、今のところワクワクドキドキするような中味の話が全くないのは実に残念なことである。ということは、宇宙的な存在の植物に関しては、科学的に説明するための知見の集積が未だ十分ではない状態にあるということなのであろうか。 |
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トウダイグサ科の異形の植物たち 〜奇妙奇天烈な花のかたち〜 |
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参考資料:日本の野生植物、野に咲く花 ほか
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トウダイグサ 1(燈台草)
トウダイグサ属の2年草。名前は古い時代の照明器具で油皿を使った燈台に形態が似ることから。茎頂に5枚の葉を散形に輪生し、その中心に1個の杯状花序を頂生するとともに、それぞれの葉の葉腋から放射状に出た枝先に2〜3枚の苞葉に抱かれたよう状態で杯状花序をつけ、三又〜二又分枝を繰り返す。
写真の苞葉内のつぼみ状のものは、追って分岐伸張する予定の枝先の展開前の苞葉である。それぞれに杯状花序をつける。 |
トウダイグサ 2
個々の杯状花序は杯状(壺形)の総苞の中にある複数の雄花(雄花は雄しべが1本だけ)と1個の雌花で構成されている。緑色〜黄色の楕円形の小さなゼリー菓子のように見えるのは、総苞の上端についた蜜を出す腺体で、中心の花序で5個、回りの花序で4個ある。受粉後に雌花の花柄が伸び、腺体の間から球状の肥大化した子房がゴロリと横に転がり出たようになる。子房の表面は平滑で、先端に3個の柱頭がある。腺体の中心部に雄しべが確認できる。 |
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タカトウダイ 1(高燈台)
トウダイグサ属の多年草。名前はトウダイグサより草丈が高く、柱の長い燈台である高燈台に見立てたもの。頂茎に葉を5枚(時に3〜7枚)散状に輪生し、その葉腋から5本(時に3〜7本)の枝を放射状に出すほか、茎頂に近い茎葉から同様の花枝を腋生する。花序の下部の苞葉は菱状卵形で3枚。葉は秋に紅葉する。 |
タカトウダイ 2
子房の表面にはイボ状の突起がある。先端が2分岐する3個の柱頭がある。各花序の腺体は4個。
乳液はシャボン玉づくりに適しているが、有毒(植物観察事典)。 |
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ノウルシ 1(野漆)
トウダイグサ属の多年草。名前は茎を切ると出る乳白色の液でかぶれる点が漆と同様であることから。(かぶれを起こすのはこの種に限らない。)茎頂に倒披針形の5枚の葉を散状につけ、その中心に1個の杯状花序をつけるとともに、葉の葉腋から5本の枝を放射状に出し、各枝先に杯状花序をつけ、三又分枝、ついで二又分枝を繰り返す。花序の下部の苞葉は広卵形で3枚輪生する。苞葉は鮮やかな黄色でよく目立つ。 |
ノウルシ 2
子房の表面にはイボ状の突起がある。先端が2裂した3個の柱頭がある。各花序の腺体は4個。一般論として、トウダイグサ属の杯状花序の腺体の数については主軸に頂生する花序で5個、散形枝の花序で4個といわれているが、写真を撮影した個体では散形枝の花序でも5個あるのを確認した。実態上の比率はわからない。
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ナツドウダイ 1(夏燈台)
トウダイグサ属の多年草。トウダイグサの仲間では最も早く春に花をつけるにもかかわらずこの名があるのは、誤った名前が定着したもの、あるいは本当はハツドウダイグサであったのではないかといった見解がある。頂茎の5枚の輪生した葉の葉腋から放射状に出た枝先に杯状花序をつけ、二又分枝を繰り返す。苞葉は2枚。 |
ナツトウダイ 2
各花序に4個ある腺体は紅紫色で、両端がクワガタムシのツノのように尖る。一般に「三日月形」と表現されている。この色と形態は虫を誘引するためのものなのであろう。子房の表面は平滑で、先端が2裂した3個の柱頭がある。ナツドウダイは特に猛毒である(植物観察事典)。 |
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ホルトソウ(草ホルト) 1
ヨーロッパ原産のトウダイグサ属の1年草から越年草。室町時代に渡来し、長く薬用として栽培され、小巴豆(こはず)の古名がある。葉は下部で互生、中央で対生、最上部で輪生状。 2枚の対生する大形の苞葉の中央に杯状花序をつけ、さらに二又分枝を繰り返す。和名はホルトガルソウの略で、種子からしぼった油をホルトガル油、つまりオリーブ油の代用としたことによる。刮ハは大きく1センチを超える。 |
ホルトソウ 2
杯状花序は 他と同様に総苞内の1本の雄しべからなる多数の雄花と1本の雌しべからなる1雌花で構成される。花柱は3本、先端が2つに分かれる。4個の腺体の形がユニークで、ミッキーマウスのようである。写真の腺体は蜜でしっぽり濡れている。 |
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マツバトウダイ 1(松葉燈台)
ヨーロッパ、西アジア原産のトウダイグサ科の多年草で、北海道では広く帰化している。名前のとおり葉が細く、茎葉は線形、輪生葉は細い披針形である点が特徴。 |
マツバトウダイ 2
杯状花序には黄色の半月状の腺体が4個あり、両端が低く尖っている。子房にはざらつきがある。対生する苞葉は緑黄色で、後に鮮黄色又は橙赤色となる。 |
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ここで一服。いくつかの図鑑を読んでみて、杯状花序のイメージがつかみにくい点をもどかしく思っていたところ、「日本の野生植物」に掲載された図に助けられた。この図には、一般にあまり触れられていない「小苞」も示されている。 |
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ノウルシの杯状花序 (「日本の野生植物(平凡社)」より) |
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<杯状花序の理解のためのメモ> |
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トウダイグサ属の高度に特殊化した花序は杯状花序といわれている。これは通常小さなカップ状構造で、縁に様々な形をした多数の(通常4又は5)腺がある1つの洋コマ形の総苞からなる。総苞の中にはとても単純な構造をしている多数の雄花があり、中心にある1本の雌花の周りを取り囲んでいる。花序は普通雌性先熟で、主に双翅目のハエ類によって他家受粉される。
この科の名前は最も大きな属であるトウダイグサ属から来たものであるが、トウダイグサ属は花が極端に単純化していることから、この科の典型を示すグループではない。多くの属は経済的にかなりの重要な種を含んでいる。【ヘイウッド花の大百科事典】 |
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トウダイグサ属の杯状花序は、かつて、1個の花とみなされたこともある。【日本の野生植物】 |
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トウダイグサ属に特有の杯状花序は、5枚の総苞片が完全に合着し、文字どおり杯状の容器を形成し、その中に多数の雄花と、1個の雌花を入れている。【日本の野生植物】 |
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トウダイグサ属で、ひとつの花のように見えるのは1個の花序で、5個の総苞片が完全に合着した壺形の総苞の中に雄花が数個と雌花が1個入っている。この花序はトウダイグサ属だけに見られるもので、杯状花序と呼ばれる。総苞の上端には密を分泌する腺体があり、その形は種の区別点になっている。
雄花には雄しべが1個、雌花には雌しべが1個あるだけで、花弁も萼もない。雌しべが先に成熟し、子房が総苞の外に垂れるころ、雄しべが伸びる。【野に咲く花】 |
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トウダイグサ属に特徴的な杯状花序は、花冠に似た腺体が4個ある杯状体に包まれ、中央に1個の雌花、周囲に数個の雄花の集合した花序である。花被はなく、雌花、雄花はただ1本のめしべあるいはおしべからなり、苞葉が花冠、杯状花序がおしべ、めしべ、蜜腺の代りとなって全体として単一の花の機能をもつ、きわめて特殊化したものである。腺体の形や色は、種を見分けるよい形質である。【平凡社世界大百科事典】 |
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雄しべ1個からなる雄花には1片の小苞をともなっているが、まれに、マルミノウルシのように、小苞のないものもある。
【日本の野生植物】 |
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トウダイグサ亜属では杯状花序の腺体は、主軸に頂生する花序のみ5個あり、散形枝の杯状花序は4個の腺体をつける。【日本の野生植物】 |
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トウダイグサ亜属の中心の杯状花序はふつう不稔性。【日本の野生植物】 |
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オオニシキソウ 1(大錦草)
北アメリカ原産のトウダイグサ属の1年草。 名はニシキソウよりも大きい草姿であることによる。枝先や枝の分かれ目に杯状花序をつける。雑草として定着。 |
オオニシキソウ 2
白い花びらのように見えるのは腺体の付属体。 |
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チャボダイゲキ(矮鶏大戟)
ヨーロッパ、北アフリカ、西アジア原産のトウダイグサ科の1年草。輪生葉は広楕円形で3枚。苞葉は卵形。腺体の形態はナツトウダイに似るが、子房の形態はこちらは個性的である。国内に雑草として侵入帰化済みで、小石川植物園では大群落を形成している。。 |
ポインセチアの花序 1
メキシコ、中米原産のトウダイグサ属の常緑低木。赤い花弁をもった1個の花のように見えるが、赤い苞葉の中心に15〜25の杯状花序がついた構造である。個々の杯状花序は、緑色の壺形の総苞に包まれ、@1個の雌花(1個の雌しべよりなる)、A5〜6個の雄花(1個の雄しべよりなる)、B唇形の黄色の腺体からなる。上の写真では雌しべの柱頭はまだ伸び出ていない。 |
ポインセチアの花序 2
写真中、左側の杯状花序で、赤い柱頭が3裂した雌しべが伸び出ている。その下方には緑色の子房が見える。やがて子房がムッチリ大きくなるとともに柄が伸びて、ゴロリと横になる。 |
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ハナキリン 1(花麒麟)
マダガスカル原産のトウダイグサ属の低木で、観賞用として普及。多肉の茎には鋭い刺を多数つける。 |
ハナキリン 2
赤い花弁状に見えるのは苞葉で、黄色の腺体は5個。花は雄性期で、雄花が黄色い花粉を付けている。 |
コニシキソウ(小錦草)
北アメリカ原産のトウダイグサ属の1年草。茎は多毛。葉には暗紫色の斑紋がある。オレンジ〜ピンク色の4個の腺体に淡いピンク色の付属体がある。雑草として定着している。 |
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トウゴマ(唐胡麻)
アフリカ原産と考えられているトウゴマ属の多年草。総状花序の上部に赤い柱頭をもつ雌花を、下部に白い雄花をつける。雌花には先端が2裂する3花柱がある。 |
ベニヒモノキ
オセアニア原産のエノキグサ属の常緑低木。赤くて長い紐状の果穂が美しいため鑑賞樹とされる。似た印象の同属の常緑多年草であるキャットテールは園芸用として一般的。 |
ユーフォルビア・ティルカリ(青珊瑚) ミルクブッシュとも。熱帯アフリカ原産のトウダイグサ属の多肉植物で、観賞用に栽培される。枝だけで構成されているように見える。
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ヤマアイ(山藍) 1
ヤマアイ属の多年草。一般には雌雄異株とされるが、これは雌雄同株。かつては染色(緑色)に利用された。 |
ヤマアイ 2(雄花)
多数の雄しべのある雄花は穂状につき、萼は3裂する。 |
ヤマアイ 3(雌花)
雌花の子房にはイボ状の突起があり、先端には2個の柱頭がある。 |
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エノキグサ(榎草)
アミガサソウとも。エノキグサ属の1年草。黄緑色の球状のものは若い刮ハで、イボ状の突起と軟毛がある。ピンク色に見えるのは、まだ穂状に伸張していない雄花。 |
コミカンソウ 1(小蜜柑草)
コミカンソウ属の1年草。かつてはトウダイグサ科であったが、現在(APG)ではコミカンソウ科になってしまった。写真右上の開いた花は雄花。横枝の上部の葉腋に雄花、下部の葉腋に雌花をつける。刮ハには多数のイボが状突起ある。 |
コミカンソウ 2
刮ハは葉裏側に整列している。個性的な印象で、「ミカン星」からやってきたのかもしれない。写真右下の閉じ気味の花は雌花である。雄花、雌花とも花披片は6枚で、萼片と花弁の区別がない。 |
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なお、トウダイグサ科の木本類として、在来種としてはシラキ、アカメガシワが一般に知られており、渡来種としてナンキンハゼ、アブラギリ、シナアブラギリ、オオバベニガシワ等が植栽されているものを目にするところであるが、珍奇なものを期待する立場からすると、これらは形態的にはやや退屈な存在で、インパクトに乏しく、想像の翼がちっとも羽ばたかないため、この場には招待しないこととした。 |
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植物の進化という視点では、従前は「進化の頂点に位置する植物の代表は、ラン科とキク科である。(植物の世界)」としたものを目にした。しかし、素人的には進化に関する主張が様々で、一向に収束する気配がないことなど全くついていけない上に、「進化」の語の概念自体がわかりにくい。単に多様な条件・環境に適応できるような形態・器官の多様化・複雑化を実現して種類を増やし、時に勢力を拡大したことだけを指すのか(これも実は長い歴史の中のたまたまの局面でしかない。)、本当の意味でより高度な有利性を獲得してきたのか否か等わかりやすい整理が欲しい。
また、日本語の対義語としての「退化」の語も違和感がある。植物の一部器官が退化したものとの表現はふつうに使用されているが、後戻りする変化とはやはり訳語の問題を感じる。つまり、生物の器官の退化とされる中味は、実質的には積極的な切り捨てであって、実に前向きな適応であると考えられるからである。
そう言いながらも、トウダイグサ科の不思議な印象に関して、最新の分子進化学、植物生理学、植物形態学等による知見から、ファンタスティックな見解が示されることを期待したいものである。 |
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苞(苞葉)に係る名称について
特に杯状花序をつけるトウダイグサ属の仲間に関する図鑑の説明で、図鑑により用語がしばしば異なっていて少々戸惑ったことから、以下にメモ整理してみる。 |
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引用資料: 岩波 生物学辞典(略称:岩波)
東京化学同人 生物学辞典(略称:東化)
図説植物用語事典(略号:図説)
筑波大BotanyWEB(略号:筑波)
写真で見る植物用語(略号:用語) |
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鱗片葉 |
@ 鱗片葉:鱗片状の葉を一般的にいう。冬芽を覆う鱗片葉のように、保護の役割を持つことが多い。硬い鱗片状のことが多いが、膜状であることもある。花芽の場合には苞葉との間に、葉芽の場合には普通葉との間に中間的なものがあって、その区分が不明確なことがある。【岩波】
A 鱗片葉:小さく、うろこ状に変形した葉。苞が鱗片状の形状をもつこともある。これらは乾質で固く、早落性であることが多い。また、地下茎につく葉もしばしば鱗片葉となる。鱗茎を構成する多肉化した葉(鱗葉)を鱗片葉とよぶこともある。【東化】
B 光合成を行わず、普通葉より著しく小型となった葉を鱗片葉という。ただし、鱗片葉が芽をおおう場合は芽鱗、花芽を腋にもつ場合は苞(苞葉)、花を構成する場合は花葉、裸子植物の雌の球果や球果をつくる場合は果鱗(苞鱗と種鱗)というそれぞれ特殊な呼称をもつ。【図説】
C 普通葉よりもずっと小型で形も特殊なものをまとめて鱗片葉という。冬芽を包んでいる鱗片葉は芽鱗である。花を包む鱗片葉は苞である。また花序を包む鱗片葉を総苞という。【用語】← 下線部は他と異なる。 |
苞
苞葉
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@ 苞葉(包葉):一つの花、あるいは花序を抱く小型の葉。花あるいは花序を抱く葉が普通葉と同様の場合には、これを苞葉とは呼ばない。【岩波】
A 苞葉:花序の構成要素で、花序の基部につくか又は花序枝や花を抱く葉的器官(蓋葉)。形状は普通葉と区別できないものから、著しく特殊化したものまでさまざまで、一つの花序の中に移行型と共存する場合も少なくない。【東化】
B 花序の基部又は花の基部にあって、大きさ、質、色が多少とも変形した葉を、それぞれ苞及び小苞と呼ぶ。【図説】
C 一つの花又は花序を抱く小型の特殊化した葉を苞(苞葉)という。苞はその位置や形によって総苞、苞、小苞、苞鞘、苞穎などに分けられる。裸子植物の球果の苞鱗も苞の一種である。【図説】
D 葉腋に花又は花序をつける特殊化した葉のことを苞葉といい、集合体として苞と呼ばれる。苞葉は、そのつく位置によって、総苞、小総苞、小苞に分けることができる。【筑波】
E 花を包む鱗片葉は苞である。また花序を包む鱗片葉を総苞という。(再掲)【用語】 ← 他と異なる |
・ ドクダミでは、花序の基部に4枚の白色花弁状の苞があり、キク科では花序の基部に鱗片状の多数の苞がある。これらはあわせて総苞、それぞれの苞片は総苞片と呼ばれる。【図説】
・ 図鑑では一般に「苞」の字を使用しているが、まれに「包」の文字を使用している例【野草の名前】がある。どちらでも構わないようである。 |
総苞 |
@ 花序の基部にあって、若い花序ではそのまわりを取り巻いて包む多数の苞葉の集団をいう。キク科の頭状花序に典型的。個々の苞葉は総苞片と呼ぶ。ブナ科では花序中軸が総苞をまわりにつけた壺状の形となり、果実時には殻斗となる。一般に総苞片の葉腋からは花又は芽を生じない。しかし、ヤマボウシやドクダミ花部の大型の4葉片や、マツムシソウなどの花序基部の苞葉群、セリ科の花序の付け根の苞葉を総苞ということがある。【岩波】
A 総苞:花が密集する花序の基部に、苞葉が多数集まった構造。これを構成する苞葉を総苞片という。キク科の頭花(頭状花序)の総苞が最も顕著で、ブナ科の堅果を内蔵する総苞はその花序の中軸の先端が広がってカップ状になった部分と一体となっており殻斗と呼ばれる。狭義の総苞は総苞片の腋に花や花序を生じないものであるが、ドクダミやハナミズキの花序の基部の複数の苞葉、さらには花序全体の蓋葉となっている苞葉について総苞とよぶこともある。【東化】
B キク科の頭状花序などの基部を囲む複数の苞葉を総称して総苞という。【東化】
C 花序の基部にある複数の苞の集合体を総苞、総苞をつくる個々の苞(苞片)を総苞片という。【図説】 |
・ ドクダミ属の花序の基部にある4枚の白色の葉片、イチリンソウ属の花序の下に輪生する葉片、トウダイグサ属の花序の杯状体、ゴゼンタチバナ属やヤマボウシ属の花序の下の4枚又は2枚の白色の葉片なども総苞とよばれる。しかし、総苞片には腋芽を生じないので、これらの葉片を総苞片とよぶべきではないという意見もある。【用語】
・ ドクダミやヤマボウシの花序の基部にある4枚の大きな葉や、トウダイグサ属の花序(杯状花序)の杯状体なども総苞片と見なされることが多い。ただし、これらの葉には腋芽がつくので、厳密には総苞片でないとする意見もある。【筑波】
・ ブナ科の殻斗も多数の総苞片がその軸とともに合着したもの。
・ 総苞片と同義扱いで「総苞葉」の語を使用している場合がある。【野に咲く花、野草の名前】 |
小総苞 |
@ 複合花序においては大花序の苞を総苞、小花序の苞を小総苞、ひとつひとつの苞を小総苞片という。【図説】
A 多くのセリ科のように複合花序をつくるものでは、大花序の苞のことを総苞、小花序の苞を小総苞とよぶ。小総苞の構成単位が小総苞片である。【筑波】 |
セリの大散形花序の苞は総苞、小散形花序の苞は小総苞。 |
小苞 |
@ 苞葉の葉腋から出る花の小花柄又は花序軸につくより小さな苞葉を小苞といい、双子葉類では通常1対、単子葉類では小花柄の向軸側に1対ある。【岩波】
A (苞葉の説明に続き)(小)花柄につくものを特に小苞という。【東化】
B 花柄上につく葉的器官。単子葉植物では花柄の母軸側に1個、双子葉植物では側方に左右一対つくのが普通。【東化】
C 無柄の花では、花の基部、有柄の花では花柄又は花茎上につき腋芽を作らない小型の葉を小苞という。【図説】
D 個々の花の基部につく苞葉のことを小苞という。【筑波】 |
・ 花序枝を抱く苞葉を苞とし、花を抱く苞葉を小苞とする誤った使い方も頻出するので注意が必要である。【東化】
・ 双子葉植物ではふつう小苞は2個ずつあるのに対し、単子葉植物ではふつう小苞は1個である。小苞を持たないものも多く、その数や形は変化に富む。【図説】
・ ドクダミの小花の基部には微細な緑色の小苞がある。【図説】 |
(参考)
苞鞘 |
単子葉植物には有鞘葉を持つものが多く、有鞘葉のうち、花序を腋生するものを苞鞘(苞鞘片)という。【図説】 |
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結局のところ、多くの種で見られるという「小苞」に関しては、詳細な写真による情報がなく、様々な種における一般的なイメージが持てないままである。そこで、とりあえあえずはどこにでも見られるドクダミの花序を確認してみたが、ごく小さくて細い「らしきもの」を見たが、あまりにも小さくて、教材としては全く不適であった。
以下のトウダイグサ属の4種を比較したイラストでも、小苞の概念がわかりにくく混乱するばかりである。 |
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トウダイグサ属の4種の比較(「野草の名前(山と渓谷社)」より) 小苞を図示しているが・・・ |
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あくまで一般向けの植物図鑑における説明を普通に理解するための最低限の知識を身に付けたいとの気持ちであったが、何やらややこしくなってしまった。とりあえずは、一般論としての小苞について具体的なイメージを持つための学習は先送りである。おすすめの教材となる植物があればよいのであるが。 |
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【2015.10 追記】
ドクダミの花の小苞についてはこちらを参照。 |
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