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航空写真は Google より |
JR函館本線の江別市大麻駅から泣く子も黙る豪雪地の岩見沢市にかけては鉄道防雪林がよく整備されている。 特に岩見沢市における降雪は過酷で、執拗に降る雪のため、高速道路の閉鎖は日常茶飯事であり、市内すべての路線バスが麻痺することがあるほか、JRでさえ運休を余儀なくされることがあるなど、毎年地獄の様相を呈している。
写真の鉄道防雪林の林帯中、色の濃い緑がヨーロッパトウヒであり、淡色部分はカラマツと広葉樹である。鉄道防雪林はかつてドイツに学んだノウハウで、学んだついでにドイツに生育していた樹種であるヨーロッパトウヒまで導入したものである。ヨーロッパトウヒは大きな長い球果を多数ぶら下げるため、遠くからでも識別しやすい。 |
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JR函館本線大麻駅周辺の鉄道防雪林
ヨーロッパトウヒは下枝が枯れ上がりにくいため、こうした利用には都合がいいという。ただし、過密状態にあると、林縁を除き、下方の葉は失われ、枝が高くまで枯れ上がってしまう。 |
同左の林内の一部(北口周辺)
木材生産のための植栽ではないから、防雪の機能を第一に考えればいいのであろうが、この部分はやや混みすぎである。 |
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中央分離帯のヨーロッパトウヒ
札幌市内の清田通りの中央分離帯に植栽されているヨーロッパトウヒである。高圧線の鉄塔敷と共用されているため、樹高を抑えるために頭を落としているようである。また景観上の配慮か、下枝は払っている。 |
雪をかぶったヨーロッパトウヒ
大きく育ったヨーロッパトウヒは、小枝が垂れ下がる特徴が出るが、雪をかぶるとさらにこの特徴が強調されて、それらしくなる。欧米ではクリスマスツリーにも利用さる。
(北海道育種場内) |
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防風垣としてのヨーロッパトウヒ
日当たりのよい外側では下方までびっしり枝葉を付けていて、防風垣の機能をしっかり果たしているが、内側ではさすがに下枝が枯れ上がっている。(森林総合研究所北海道支所構内) |
(比較参考)防風垣としてのニオイヒバ
ニオイヒバは北米原産の導入種で、下方まで枝葉を付ける性質がああって、古くから圃場の防風垣用の樹種として重宝している。(森林総合研究所北海道支所構内) |
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(ヨーロッパトウヒのあらまし) |
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ヨーロッパトウヒ Picea abies (syn. P. excelsa)は、オウシュウトウヒの名もあり、林業的にはドイツトウヒの名が一般的であった。英語名はドイツではなく、ノルウェイ・スプルース(Norway Spruce)が一般的である。ノルウェイの隣国のスウェーデンでも、そのまた隣のフィンランドでも、不本意ながら?英語名としては
Norway Spruce の呼称を使っている。これはかつて、ノルウェーからイギリスにその材が供給されたことによるもののようである。マツ科トウヒ属の高木で、ヨーロッパ北・中部ではヨーロッパアカマツ(参照)と並んで、森林を構成している代表的な針葉樹である。見たことがなくても名前が有名なドイツの黒い森、シュヴァルトヴァルトの主体をなす樹でもある。日本の樹種では、同じくトウヒ属のアカエゾマツが近い。 |
注: |
他の英語名として、Nordic Whitewood, Baltic White Pine, White Deal, European Spruce, Romanian Whitewood, White Fir, White Spruce, Violin Wood, Carpathian Spruce 等がある。 |
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ヨーロッパトウヒの雄花 |
ヨーロッパトウヒの雌花 |
ヨーロッパトウヒの若い球果 |
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ヨーロッパトウヒの成熟球果 |
球果1個分の種子 |
ヨーロッパトウヒの種子 |
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北方針葉樹林の代表的な樹種で、林業樹種としても重要。オウシュウトウヒともいい、ヨーロッパ北・中部に広く分布して純林をつくる。高さは30〜40メートル。【植物の世界】 |
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葉は軸方向にやや扁平で、日本のアカエゾマツより長く、小枝は垂れ下がるため、アカエゾマツとは簡単に識別できる。球果はトウヒ属の中で最大(10〜20センチ)とされる。雌花は直立するが、球果は下垂する。 |
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学名は命名規定からいうと Picea abies が正しいのだが混乱を来す名前なので Picea excelsa を通常用う。ドイツトウヒの名称は無意味である。【樹木大図説】
注: |
この説明は、abies がモミを意味している(「モミ属」の学名も Abies)不合理を念頭に置いたものと思われる。残念ながら、現在では通常
Picea abies を使っている。 |
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ヨーロッパトウヒは北半球で最も広く分布し、最も生長が早く、最も大きく、最も耐病性の高いトウヒである。カナダ、米国では広く防風用に利用されている。また優良な木材が生産され、多くの地域で森林の再生に利用されている。毎年、クリスマスの時期にはニューヨークのロックフェラーセンター前にはこの木が設置される。かつてはクリスマスツリーとして広く利用されたが、伐った後の(室内での)葉の保持期間が短いため、残念なことに人気を失っている。
【NorwaySpruce.com】 |
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ルーマニアの山地では樹高60m、胸高直径1.5〜1.8mに達するものもある。最高級のスプルースは緯度の最も高い地域から産出されるが、同緯度で生長した樹木でも経度が違えば、木質は異なっている。中央及び東ヨーロッパ産のスプルースは抜群の共鳴性を有していることから、ピアノ用の最高級音響板、バイオリン、リュート、ギターなどの表板に使われる。【世界木材図鑑】 |
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大正初期において、国内で外来樹種のヨーロッパトウヒの人工造林が(カラマツとともに)最高潮に達したが、トドマツ、エゾマツの育苗技術向上に伴い、昭和10年頃までにはヨーロッパトウヒを含む外国樹種の導入に関しては、次第にかげをひそめた。【北海道における外国樹種導入の動向:柳沢聰雄(北方林業174号)】
注: |
北海道内国有林のヨーロッパトウヒ人工林で最高齢のものは、上川中部森林管理署管内に明治35年植栽の110年生のものがある。その他高齢の林分が道内各地に点在する。 |
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<参考:北海道における鉄道防雪林> |
明治42年から昭和2年までに国による鉄道防雪林の植栽は、全道の沿線3千4百町歩に及んだが、樹種は、カラマツ、ドイツトウヒ、ヤチダモ、ニセアカシア、アメリカヤマナラシ、欧州赤松、黒松、朝鮮松などで、あたかも道外からの移入樹種の大陳列帯であり、速成造林の大標本でもあった。【野幌原始林物語:江別市】
北海道の鉄道防雪林は1908年から1942年までの34年間に延長979キロ、植林面積約7千ヘクタールが完成し、全国の鉄道防雪林の60パーセントは北海道で占めていた。【板東:北方林業2008
vol.60 No.8】
(注)ヨーロッパトウヒは、北海道内では鉄道防雪林以外に、耕地防風林の構成樹種としても利用されてきた。 |
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(ヨーロッパトウヒの材の様子) |
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ヨーロッパトウヒの輸入材は、業界でもホームセンターの店頭でも「ホワイトウッド」の名で呼ばれていて、広く流通している。針葉樹は広葉樹ほど見た目の個性がないが、ヨーロッパトウヒも普通の針葉樹といった印象である。 |
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ヨーロッパトウヒの製品例 1
ホワイトウッドの10センチ角の集成材の材面で、色は淡色で、特に個性は感じない材である。 |
ヨーロッパトウヒの製品例 2
これは「ホワイトウッドパネリング」の名で販売されていた内装用の羽目板加工された製品である。節は生き節であれば気にならない。 |
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こうして、何の変哲もない針葉樹材であるが、ヨーロッパトウヒの特定の産地の目のそろった材は、ピアノの響板(サウンドボード Sound board)、あるいはバイオリンの表板(Top plate)の用材として最適・最上のものとされていて、別格の取り扱いをされているところである。 →(参照) |
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注: |
ホワイトウッドに関しては、その輸入が増大した頃から、材の耐久性を問題視する声があった。つまり、自生地とは異なる日本の気候風土の下での耐朽性、耐蟻性の問題である。木材は樹種により材の成分が異なるから、こうした視点での差が生じるのは当然の話である。
しかし、柱にしても古代のような土中に突き立てるような掘立柱など存在しないから、柱からキノコが出る心配などないであろう。実際に使用する条件とは全く異なる環境下、例えば屋外暴露試験をするのは参考情報は得られるが、それで評価を固定することは適当ではないであろう。要は適材適所であり、さらに使用部位に照らして若干の弱点があれば防腐剤、防蟻剤でカバーすればよい。材の特性を知って適切に利用すれば何の問題もない。 |
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【追記 2012.4】 |
ヨーロッパトウヒの樹の下に、種鱗がバラバラになった球果が多数散らかっている風景を目にした。モミ類であれば自然状態で種鱗がバラバラになるが、マツ類、トウヒ類の場合はこうはならない。エゾリス君が仕事をしたようである。
ヨーロッパトウヒの種子は小さいのに、種鱗は靭性があり丈夫で、チョウセンゴヨウのように簡単に折れないから、剥がすには大変な労力を要する。こんなものにまで手を出すということは、この時期は食べ物の確保も大変なのであろう。得られるカロリーは少ないし、割に合う仕事なのか心配になってしまう。 |
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バラバラに引きちぎられた種鱗の基部をよく見ると、これが剥ぎ取られたものではなく、ざっくり噛み切られたものであることがわかる。
種鱗の基部は非常に堅いが、これが筋状の歯形を残してきれいに切断≠ウれている。
エゾリス君の前歯の切れ味はすごい!
ところで、エゾリスはチョウセンゴヨウの大きな種子は殻を割って食べるが、ヨーロッパトウヒの種子は、長さがわずか4〜5ミリほどで小さいため、たぶん殻のまま食べてしまうのであろう。 |
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