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結果を先に白状すれば、残念ながら惨敗!であった。以下はその経過である。 |
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1 |
モチノキの剥皮
剥皮の時期はもちろん樹液流動が盛んで、剥皮の容易であろう夏期で、ヤマグルマを使った場合の手法(こちらを参照)に従って、汚れた外皮を鉈の刃を使って、ゴボウの皮をそぎ落とすようにして削ぎ落とした。次に鉈で樹皮に切れ目を入れると、剥皮は比較的容易であった。 |
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2 |
水中浸漬
「清水をよく流通させる」環境は得られないので、樹皮をポリエチレン製網袋に入れ、水を満たしたバケツに投入して、適時水を交換して、樹皮の腐敗を待った。 |
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3 |
経過
くさい臭いがぷんぷん漂う水をしばしば交換したのであるが、その度に肝心の鳥もち成分が小さな粒状になって流れ出しているように見えた。
2ヶ月ほど経過すると、樹皮を入れた網袋は見事にべたべた状態となり、バケツの方も内側がべたべたになってしまった。
このままでは鳥もち成分が網袋越しにすべて流れ出てしまう危機感を持ち、樹皮を取り出して、次の手順としてのたたきつぶす工程に移ることとした。
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取り出した樹皮は左の写真のとおりである。樹皮はいつの間にか小さな薄い削片状になっていて、かさついた印象があり、モチノキ成分の存在を感じさせないような感触であった。 |
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何やら不吉な予感を持ちつつも、削片状の樹皮を十分搗いたところ、粉々に粉砕できたものの、鳥もち成分のべたべた感が一向に出てこないし、分離もされない。
少なくとも、ゴルフボールくらいの量の鳥もちが得られると見込んでいただけに、ガックリである。鳥もち成分は網袋やバケツにこびりついてしまったほか、多くは流れ出てしてしまったようである。無念の思いでバケツにこびりついた鳥もちの一部を爪楊枝と指に取ったものが次に掲げた写真である。 |
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純正のモチノキの鳥もち |
これが天然鳥もちのベタつき感 |
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色が白くないのは不純物によるものと思われる。網やバケツの内側は見事にべたべた状態であるが、回収の術がない。べたべたのバケツの内側には、部分的にクリーム色の粒状の鳥もち成分が確認できた。本来的には、モチノキの鳥もちはクリーム色のようである。漂白すればさらに白くなるのであろう。
鳥もち作りの経験を持つ知り合いの話では、小さい頃に田んぼの隅の水の中で鳥もちをつくったとのことである。やはり、自然豊かな環境で、野生の感性を持ちつつ、時に試行錯誤をしながらコツを身に付けなければ初心者には難しいようである。(´_`。)
昔の野生児は鳥もちをいとも簡単に自分でつくり、日常生活の中でごくふつうに、ちゃんと本来の用途に供していたのであろう。残念ながら、鳥もちに係わるごくありふれた子供たちの日常の文化は、既に過去のものとなってしまったようである。
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<参考:モチノキの鳥もちに関する記述例>
【樹木大図説】モチノキ
・ 樹皮よりトリモチをとるのでモチノキというが本来トリモチはヤマグルマからとるのである。モチノキよりとったトリモチは良質ではない。
【和漢三才図会】黐樹(もちの木、モチノキ)
・ 按ずるに・・・其木皮を剥ぎて水に浸し爛して之を舂(搗)き流水に濾して皮渣を去れば即ち麪筋(めんきん。麩のこと。)の如くして甚だ稠粘、人用て鳥雀を粘す、之を黐膠(トリモチ、止利毛知)と謂ふ、紀州熊野より多く之を出す
【平凡社世界大百科事典】
・ 鳥もちには本もち(モチノキ),青もち(イヌツゲ,タラヨウ),山車もち(ヤマグルマ)の製品がある。本もちの白もちが最上等品である。とりもちはおもに捕虫・捕鳥用に用いられたが,ハエ取り紙の材料,ゴムの代用,特殊ペイントや印肉の添加物として用いたこともある。1949年以降,狩猟用とすることは禁止されている。
注:樹種による品質に関する記述内容は必ずしも一致していない。 |
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<参考:モチノキの様子> |
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モチノキの樹皮の様子
モチノキの樹皮はふつうは滑らかである。 |
大分市指定名木 鷹松神社のモチノキ
神社創建の建久2年(平安の終わり)当時にご神木として植えられたものと言い伝えられている大木。
樹齢 780年、高さ 22メートル、幹周 3.9メートル。 (大分市高松東2−2−3) |
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赤い果実をたっぷり付けたモチノキ。庭木としてはクロガネモチの方が圧倒的に多いが、果実の大きさはモチノキの方が大きく見栄えがする。
古い文献には、材は印材やろくろ細工用材とするとあるが、使用の実例を見ることはない。雌雄別株。
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豊かに赤い果実を付けたモチノキの様子 |
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モチノキの雄花
雄花の雌しべは退化している。 |
モチノキの雌花
雌花の雄しべは退化して小さい。一般に柱頭は緑色であるが、この個体では紫色であった。 |
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