刃物あそび
天然砥石の木っ端は引き出しの刃物の友
かつては砥石は全て天然砥石で、各地に多くの砥石の鉱山があったという。現在ではほとんど工業的に生産される、いわゆる合成砥石が全盛である。しかし、天然砥石が決して絶滅したわけではない。ホームセンターではお手頃価格の特定の種類のものに限って取り扱っている。また、高級刃物にふさわしいものとして、専門店で高価な天然仕上げ砥石を取り扱っている。いいものはびっくりするような価格である。こうしたものには手が出ないが、不整形な木っ端砥石なら安く売っている。 この天然の仕上げ砥石、なかなかいいところがある。 |
ホームセンターにはどんな天然砥石があるか 現在販売されている砥石は、ほとんどが合成砥石で、酸化アルミニウム、炭化珪素などの研磨剤を各種結合材で固めたものである。合成砥石は天然砥石よりも研削力が強く、品質も均一で、従来の天然砥石をほとんど駆逐するところとなった。しかし、ホームセンターを覗いてみると、わずかに天然砥石が生き残っているのを目にする。例えば、以下のようなものが販売されていた。 |
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上に掲げた天然砥石が生き残っているのは、鉱山が枯渇していないことはもちろんのこととして、比較的低価格で提供できることによるものと考えられる。仮に合成砥石よりも価格が高ければ、一般には敢えて選択されることはほとんどないであろう。 しかし、高級打刃物には天然の仕上げ砥石が一番との根強い評価があり、刃物専門店には必ず高価な天然仕上げ砥石を置いている。最もよく知られているのは京都産の合砥(あわせど)で、「本山」,「正本山」の名を冠しているものが多く見られる。この砥石の木っ端が、比較的安い価格で、小さい刃物用に販売されている。(東急ハンズでも見かけた。) 天然砥石のここがエライ!! この粘板岩系の砥石は、合成の砥石と比較すると、以下の大きいメリットがある。 |
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ということで、大工道具用とは別に、この小さな砥石を引き出しに入れておけば、普段使いの小刀、ナイフなどをちょっと研ぎたいときはわざわざ流しで店を広げる必要はない。おもむろに砥石を取り出し、少し水を垂らしてチョチョイのチョイで研ぎ上げて、ティッシュで拭えばOKである。 | ||||||
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【2014.9 追記】 「といしや」のその後 | ||||||
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「といしや」のシャッター半開きの真相! | ||||||
何と、これは一人で店番をするお年寄りの自己防衛手段であった! ある出版社(株式会社 風土社)のホームページに、当人の語りが記録されている。 要点をまとめると、シャッターを全部開けておくと、5、6人でどやどやと入ってきて、砥石を万引きする輩がいて、こうした被害を抑えるためにこの方式を採用した経過があるのだそうである。 いつの時代でも、人のものを騙し、あるいは力ずくで奪ったり盗んだりするならず者、粗暴な遺伝子を持つ者が必ず一定数生息しているもので、年寄りを狙うのは特にタチが悪い。 ウン十万円級の砥石を多数置いているからか、引き戸にはおなじみのアルソック ALSOK のシールが見える。20メートルほど北側には田原町交番がある。 |
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* 日本各地で産出した天然砥石の種類に関してはこちらを参照。 | ||||||