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刃物あそび
オルファとエヌティーのカッター どちらも世界初?
各家庭、オフィスの引き出しには必ずあるカッター。 とてつもなく種類が多いことに驚くが、それほどの違いのないものも多く、ここまで必要かとも思わせる。ホームセンターでも製品のすべての種類を吊り下げて貰うことなどとてもできないことは明らかである。そこで冷静に眺めてみると、これは常に強力なライバルとの競争に晒されている中で、店頭での商品展示をにぎやかにすることによって、他社よりも存在感を示すための販売戦略の結果ではないかと想像する。まあ、会社に元気と活力があればそれで結構なことである。 さて、国内の二大カッターナイフメーカー、「オルファ」と「エヌティー」のホームページを見るとおもしろいことに気付く。いずれも刃を折る方式のカッターを世界で初めて考案・開発したのは自分のところであると主張しているように見えるのだ。この手の話は実に面白い。【2007】 |
両社のおなじみの低価格の定番カッターである。 上:オルファ(ブラックS型) オルファは黄色がイメージカラー 下:エヌティー(S−200) このタイプは廃盤で、現在のものはデザインが少し異なる。 |
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上:オルファ(OLFA−SILVER) スリムかつスッキリしたデザインで気に入っているが,薄いために紛れて見つけにくいことも。 下:エヌティー(A300P) 最もオーソドックスな初期の量産タイプ。 |
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オルファ スーパーL型(ツメ付き) ツメはクラフトテープの開封やダンボールの折り曲げ、ペンキ缶などのフタ空けに便利とのこと。 |
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エヌティー L−550 滑り止めのデザインが個性的で、「赤ギザ」の愛称があるらしい。 |
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飛び入りで、Tajima の製品。 LC−550(ロック20キロ) オートロックの動きがカシャカシャと心地よい。 |
両社のホームページで、自社の沿革に係わり、次のような趣旨の記述がある。 |
オルファ | エヌティー | ||||||||
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これではわけがわからない。一体世界初はどっちなのか? また、実用新案とか、特許とか、特に特許は20年間有効のはずである。 そこで、各種情報を総合すると、概ね以下のようである。 |
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@ | 刃を折る方式のナイフはオルファの創業者、岡田良男氏が印刷工をしていた昭和31年に考案し、実用新案を取得。 |
A | 事業化を試みるも、資金力の制約等でままならず、日本転写紙株式会社(エヌティー株式会社の当時の名称)に協力を求めるとともに、自ら会社役員として在籍し、昭和34年には考案した内容を「発明者を岡田良男、出願人を日本転写紙株式会社」として特許を出願・取得し、日本転写紙株式会社として商品化。 |
B | 昭和36年、当該商品の商標を「NTカッター」に決定。(NTは日本転写の頭文字) |
C | その後、岡田は自らの当初からの熱い思いを抑えがたく会社を離れ、昭和42年に兄弟四人で岡田工業株式会社(オルファ株式会社の当時の名称)を設立、商標「オルファ」(「折る刃」から)が誕生。日本転写紙株式会社とは特許を共有。 |
D | 昭和59年、社名を「オルファ株式会社」に変更。 |
E | 日本転写紙株式会社は、昭和63年に社名を「エヌティー株式会社」に変更。 |
といった具合である。こうした事情であれば、エヌティー株式会社も「世界初」を標榜するのもまあ仕方がないかといった感じである。 このような例以外に、かつて、技術では勝るも販売力で劣り、涙をのんだ企業があったり、大に飲み込まれた企業の例があったりと、技術に視点を置いたモノ作りの歴史には興味深いものがある。 ここで、余談。 カッター刃は研げる! カッター刃を研ごう! といったら、会社も困るし、また研ぐんだったらなぜカッターなんぞ買ったーのかといわれそうである。 しかし、日常の使い方を観察すればわかるが、刃の先端部分が痛むとすぐにポキポキとやっているのが普通で、多分、捨てられる刃の刃渡り5ミリほどのうち、ほとんどはきれいなままであろう。 そこで登場するのが別に紹介した木っ端天然砥石(参照)である。小さい器に水を汲むのさえ面倒であれば、砥石になるべく汚くない澄み切ったきれいなつばをタラーリと垂らして軽く両面を研ぐだけである。こうすれば刃を折らないカッターとなる。 かつて、工業デザイナーの秋岡芳夫氏が著作で、フィリップスのシェーバーの風車のような刃も研げることを紹介していたことがあったが、捨てられる運命にあったカッターの刃を遊び感覚で少し延命させてやるのもたまにはいいのでは。 ■オルファ株式会社 大阪府大阪市東成区東中本2-11-8 ■エヌティー株式会社 大阪府東住吉区中野4−3−29 |