1 |
バイオリン用木材との共通点と相違点
まずは、関係情報をざっと見た上での感想である。 |
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(共通点)
ギターの表板(表甲)にはバイオリンと同様に主としてトウヒ属の木材が使用されている点が共通している。それぞれの歴史をたどったこれらの楽器であるが、共鳴板としての特性が優れたトウヒ属の木材に共に行き着いている点は実に興味深い。ひょっとして、バイオリンに倣ったのであろうか。
(相違点)
ギター表板には主としてトウヒ属の木材が利用されていることは、前述のとおりであるが、例えばバイオリンで見られるような、ルーマニア産のヨーロッパトウヒに特にこだわる記述は見られない。また、ギターの表板では、バイオリンでは絶対にあり得ないベイスギ(ウェスタン・レッドシーダー)が特にクラシックギターやフラメンコギターで利用されているのは特異的である。
こうして、表板はやや地味な針葉樹の木材が主役であるが、ギターの裏板と側板は一転して各種銘木の展示会の様相を呈し、美しい色合い、杢目により、製品を華やかで魅力的なものにしている。これはギター固有の世界であり、バイオリンでは決して見られない世界である。
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クラシックギターの例(ヤマハ製)
写真手前の表板が淡色のものがスプルース製で、奥の表板が濃色のものがベイスギ製である。
色の違いは基本的には元々の材色が反映したものである。バイオリンの場合は伝統的な赤茶色に仕上げられるのに対して、ギターの場合はそれほど強い着色は見られないが、仕上がりの美しさを求めて一定の色の調整を行っているものと思われる。
写真の製品では、スプルースは本来の色よりも黄色味が強くなっている。また、ベイスギは一般に材色のムラが見られるため、内装材として利用する場合も、一旦漂白してから染色することも普通に見られるという。
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ブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)の側板の例
裏側は見えないが、裏板ももちろんブラジリアンローズウッドである。このブラジル産の美しい材は、最高級の装飾材として、また高級家具材としてヨーロッパで評価・利用されてきたが、過度の伐採から絶滅の恐れがあるとして、ワシントン条約(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の附属書Ⅰに掲載され、商業目的の輸出入は禁止されるところとなり、新規の輸入は全く行われていない。このため、さらに稀少性が高まり、従前にも増して貴重材として位置付けられるところとなった経過がある。
写真のギターは名の知れた製作家の製品で、中古販売されていたものであるが、ガラスケースの中で価格はウン十万円の表示となっていた。
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2 |
ギター用材として使用されている木材の種類
製品カタログでは、必ずしも樹種を特定できる表記をしているものではなく、具体的な使用樹種名を理解する資料としては必ずしも十分なものではないが、実態上の慣行的な呼称として受け止め、目にした表記を事例として以下に列挙してみる。
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表板 (以下赤文字はヤマハギターのカタログ掲載樹種名) |
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ギター用材
としての呼称例 |
一般的な呼称 |
学名 |
英語名 |
備考 |
スプルース |
スプルース
トウヒ属
*各種トウヒ類の様子についてはこちらを参照 |
Picea spp.
(マツ科トウヒ属) |
spruce |
カタログで単に「スプルース」としている場合は、樹種名がわからない。 |
イングルマン・スプルース |
エンゲルマン・トウヒ
エンゲルマン・スプルース |
Picea engelmannii
(マツ科トウヒ属) |
Engelmann Spruce , Silver spruce ,white spruce , muntain spruce , Columbian
spruce
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北米産
エンゲルマンは植物学者 George Engelmann の名前から。
次の項参照 |
アディロンダック・スプルース |
レッドスプルース
アカトウヒ
ルーベンストウヒ |
Picea rubens
(マツ科トウヒ属) |
Red spruce , Adirondack spruce
Eastern red spruce |
北米産
ニューヨーク州北部に The Adirondack Mountains (アディロンダック山地)が存在する。
次の項参照 |
イースタン・レッド・スプルーズ |
( 同上) |
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ジャーマン・スプルース
ドイツ松 |
ヨーロッパトウヒ
オウシュウトウヒ
ドイツトウヒ |
Picea abies (マツ科トウヒ属) |
Norway spruce , European spruce
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ヨーロッパ産
必ずしもドイツ産を意味しない。
次の項参照 |
シトカ・スプルース |
シトカトウヒ
シトカハリモミ |
Picea sitkensis (マツ科トウヒ属) |
Sitka Spruce , sitka spur , coast west spruce , coast spruce , tideland
spruce , yellow spruce , western spruce , silver spruce , menzies' spruce
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北米産
名前はアラスカ洲のシトカに由来。 |
アラスカ・スプルース
(ASTURIAS) |
シトカトウヒ ? |
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種名として Alaska(n) spruce の英語の呼称は見られないため、国内に限った独自の呼称と思われる。 |
ホワイトスプルース |
ホワイト・スプルース
シロトウヒ
グラウカトウヒ
カナダトウヒ |
Picea glauca , Picea alba (マツ科トウヒ属) |
White spruce , Canada spruce , skunk spruce , cat spruce ,single spruce
, western white spruce
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北米産 |
ベアクロウ・スプルース |
主としてシトカトウヒ(前出)の特定の杢の出た材を指す。 |
ー |
bearclaw spruce |
熊が引っ掻いたような斑の出たトウヒ類 で、特にシトカスプルースでしばしば見られるという。 |
えぞ松
エゾ松 |
アカエゾマツ
手塩松 |
Picea glehnii (マツ科トウヒ属) |
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ギター用材の場合は、アカエゾマツのことをエゾマツと呼んでいて、本来のエゾマツと誤解し易い。 |
シダー |
(ベイスギを指しているのであろう。) |
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ただのシダーでは樹種を特定できない。
次の項参照 |
レッド・シダー
米杉
杉(ASTURIAS)
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米杉
ベイスギ
ウェスタン・レッド・シーダー |
Thuja plicata
(ヒノキ科ネズコ属) |
Westen red cedar , Giant arborvitae, western arborvitae, giant red-cedar,
Pacific red-cedar, shinglewood, canoe cedar |
北米産
単に「杉」と表記するのは疑問。
次の項参照 |
アメリカン・シダー
(Takamine) |
(同上の樹種を指しているのかもしれない。) |
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種名として American cedar の英語の呼称は全く一般性がなく、国内に限った独自の呼称と思われる。 |
松 (Takamine) |
スプルース(トウヒ属樹種)を指している模様 |
Picea spp. (マツ科トウヒ属) |
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「松」の表記は疑問。
次の項参照 |
コア ハワイアン・コア
ハワイアン・コアウッド |
コア |
Acasia koa
(マメ科アカシア属) |
koa |
ハワイ産で、ウクレレの材料としても知られる。 |
マホガニー |
現在一般性があるのはホンジュラス・マホガニー |
Swietenia macrophylla
(センダン科マホガニー属) |
Honduras mahogany |
マホガニー属には複数の樹種が存在する。
通常、本種は側板、裏板に利用される。 |
メイプル |
メイプル
カエデ類 |
Acer spp.
(カエデ科カエデ属) |
maple |
樹種を特定できない。
本種も通常は側板、裏板に利用される。 |
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裏板・側板 |
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ギター用材
としての呼称例 |
一般的な呼称 |
学名 |
英語名 |
備考 |
ハカランダ
ブラジリアン・ローズウッド |
ブラジリアン・ローズウッド
ジャカランダ(jacaranda 現地名) |
Dalbergia nigra
(マメ科ツルサイカチ属) |
Brazilian rosewood,palisander
jacaranda |
ブラジル産
次の項参照 |
ブラックハカランダ
(K. Yairi) |
(樹種名不明) |
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ローズウッド |
(どのローズウッドを指しているのか不明。) |
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中南米ローズウッド |
(樹種名不明) |
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インディアン・ローズウッド |
インディアン・ローズウッド |
Dalbergia latifolia (マメ科ツルサイカチ属) |
Indian Rosewood |
インド,ミャンマー,インドネシア産
唐木の本紫檀は別種のDalbergia cochinchinensisなどを指すとされる。 |
インドローズ |
(同上) |
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ラミネート・ローズウッド |
(積層加工されたローズウッドの一種と理解。要は単板ではないということであろう。) |
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ホンジュラス・ローズ |
ホンジュラス・ローズウッド |
Dalbergia stevensonii (マメ科ツルサイカチ属) |
Honduran rosewood |
ホンジュラス産 |
ニューハカランダ |
(ブラジリアン・ローズウッドの代替材として、一部メーカーがホンジュラス・ローズウッドに付けた呼称。) |
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「ニュー」は一般的に代替材、似て非なるものを意味する。 |
マダガスカル・ローズ |
マダガスカル・ローズウッド |
Dalbergia baroni
(マメ科ツルサイカチ属) |
Madagascar rosewood |
マダガスカル産 |
ボリビアン・ローズウッド |
カヴィウナ
ボリビアン・ローズウッド |
Peltogyne spp.
Machaerium spp.
Machaerium schleroxylon |
Cavuiuna
Bolivian Rosewood
Morado
Santos Palisander |
南米産 |
マホガニー |
(表板で前出) |
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トロピカル・アメリカン・マホガニー |
(前出ホンジュラスマホガニーに同じ) |
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アフリカン・マホガニー |
アフリカン・マホガニー |
Khaya grandifoliola
K. senegalensis
(センダン科カヤ属) |
African Mahogany |
アフリカ産 |
カヤ |
(前出アフリカン・マホガニーに同じ。属名 Khaya から。) |
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マホガニーと同じセンダン科であるが、属違い。「カヤ」の表記は碁盤の榧を連想し誤解を招く。
次の項参照 |
ハイプレッシャー・ラミネート・マホガニー |
(積層加工したマホガニーの意と理解) |
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ガボン・マホガニー
(K. Yairi) |
オクメ
ガボン・マホガニー |
Aucoumea klaineana
(カンラン科) |
Gaboon mahogany |
アフリカ産 |
キルテッド・マホガニー |
(キルト杢の出たマホガニーの意) |
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Quilted mahogany |
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シカモア |
セイヨウカジカエデ
シカモアカエデ シカモアメイプル |
Acer pseudoplatanus
(カエデ科カエデ属) |
Sycamore maple |
American sycamore はアメリカスズカケノキPlatanus occidentalis
(スズカケノキ科スズカケノキ属) を意味し、しばしば混同されている。 |
ホワイトシカモア |
(同上と思われる。) |
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英語で white sycamore の使用例は見られない。 |
メイプル |
メイプル |
Acer spp. (カエデ科カエデ属) |
maple |
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ラミネイテッド・メイプル |
(積層加工されたカエデ類) |
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Laminated maple |
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キルテッド・メイプル |
(キルト杢の出たカエデ類の英語名) |
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Quilted maple |
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フィギュアド・メープル
フィギュアード・メイプル |
(杢の出たカエデ類の英語の呼称より) |
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Figured maple |
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フレイムメイプル |
(波状杢の出たカエデ類の英語名) |
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Flame maple
Flamed maple |
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カーリーメイプル |
(波状杢の出たカエデ類の英語名) |
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Curly maple |
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イースタン・プレイン・メイプル |
(シュガーメイプル?) |
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Eastern plain maple |
プレインメイプルは杢の出ないカエデ類の意。 |
ナトー |
ニャトー
ナトー |
Palaquium erythrospermumなどを含むPalaquium spp. ほか
(アテツ科) |
Nyatoh |
東南アジア・オーストラリア産 |
サペリ |
サペリ |
Entandrophragma cylindricum
(センダン科エンタンドロフラグマ属) |
Sapelewood |
中央アフリカ産
従前からマホガニーの代替材とされてきた。 |
メランティ |
メランティ
メランチ |
マレーシアでのラワンの呼称。
(フタバガキ科) |
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マレーシア |
オバンコール |
オバンコール |
Guibourtia ehie
(マメ科ギボーティア属) |
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西アフリカ産 |
シープレス
シプレス
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サイプレス
イトスギ |
Cupressus sempervirens
Cupressus spp.
(ヒノキ科イトスギ属) |
Mediterranean cypress, common cypress, Italian cypress |
南ヨーロッパ・西アジア産
次の項参照 |
スペインシープレス |
(同上) |
Cupressus sempervirens
(ヒノキ科イトスギ属) |
Spanish cypress |
南ヨーロッパ産 |
ブビンガ |
ブビンガ |
Guibourtia tessmannii , Guibourtia pellegriniana , Guibourtia demeusei
(マメ科ギボーティア属) |
Bubinga |
アフリカ産 |
コア
ハワイアン・コア
ハワイアン・コアウッド |
(表板で前出) |
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ワイルドチェリー |
セイヨウミザクラ |
Prunus avium
(バラ科サクラ属) |
Sweet cherry
Wild cherry |
北米産 |
ウォルナット |
カリフォルニアウォルナット |
Juglans califomica
(クルミ科クルミ属)
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California black walnut, Southern California walnut |
米国西部産 |
バーチ |
カバノキ類 |
Betula spp.
(カバノキ科カバノキ属) |
Birch |
北米産ほか |
レースウッド |
特定の樹種を指すものではなく、柾目で特に放射組織が紋として鮮やかに出た材を指す。 |
Roupala brasiliensis
など |
Lacewood |
- |
ウェスタン・レッド・シダー |
(表板で前出) |
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ネック |
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ギター用材
としての呼称例 |
一般的な呼称 |
学名 |
英語名 |
備考 |
マホガニー |
(表板、裏板・側板で前出) |
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マホガニー
+ パドック
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(表板、裏板・側板で前出)
パドウク、パドック
アフリカン・パドウク |
Pterocapus soyauxii
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Afican Padauk
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アフリカ産 |
マホガニー
+ ローズウッド |
(表板、裏板・側板で前出) |
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ホンジュラス・マホガニー |
(表板、裏板・側板で前出) |
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ナトー |
(裏板・側板で前出) |
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ハカランダ |
(裏板・側板で前出) |
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メイプル |
(裏板・側板で前出) |
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ラミネイテッド・ロックメイプル |
積層加工されたシュガーメイプル |
Acer saccharum |
Hard maple , Rock maple , Sugar maple |
北米産 |
フレイム・メイプル |
(裏板・側板で前出) |
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フィギュアード・メイプル |
(裏板・側板で前出) |
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カーリーメイプル |
(裏板・側板で前出) |
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ストラタボンド |
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セドル
セドロ |
セドロ |
Cedela odoata
Cedrela spp. |
Spanish-Cedar |
次の項参照 |
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指板 |
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ギター用材
としての呼称例 |
一般的な呼称 |
学名 |
英語名 |
備考 |
エボニー |
黒檀(類 ) |
Diospyros spp.
(カキノキ科カキノキ属)
D. ebenum → 本黒檀 |
Ebony
Ceylon ebony |
カキノキ科カキノキ属の材色の心材を有する樹木の総称。 |
黒檀 (同上) |
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ヤマハのカタログではエボニーと黒檀の両方が登場するが、使い分けの実態は不明。 |
ストライプド・エボニー |
縞黒檀 (しまこくたん) |
D. celebica , D. rumphii
など |
Striped ebony |
カタログ上エボニーと表示された指板材の多くは、縞黒檀を黒い染料で染めて使っているともいう。 |
インドローズ |
(裏板・側板で前出) |
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ローズウッド |
(裏板・側板で前出) |
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マダガスカル・ローズウッド |
(裏板・側板で前出) |
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ハカランダ |
(裏板・側板、ネックで前出) |
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モラド |
パープルハート ほか |
Peltogyne spp. |
Morado (パナマ) |
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ブラック・ミカルタ
(ブラックは着色による) |
マイカルタ |
(紙、布、木材等と樹脂の複合材) |
micarta |
フェノール系の樹脂含浸素材で、必ずしも木質系ではない。
次の項参照 |
マホガニー
(注):指板ではまれ |
(表板、裏板・側板、ネックで前出) |
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注: |
上記のほか、色彩が美しく、豪華さを演出する多様な外国産材が利用されている。歴史的には、木材の樹種毎の資源事情の変化の中で、次々と新たな樹種の導入を図ってきたようである。その場合、視覚的、美的価値が重要な要素となっていて、必ずしも音響的特性のみが選定基準となっているものではない。 |
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<参考:ローズウッド3種のサンプル材の外観> ヤマハ店舗の見本材より |
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ブラジリアン・ローズウッド |
インディアン・ローズウッド |
ホンジュラス・ローズウッド |
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3 |
ギター用材の呼称の特殊性
ギター用材に関しては、ギターに深く関わりのある者や趣味としている者にとって関心度が非常に高く、強いこだわりも見られる。このため、書籍やギター販売者、愛好家の情報が非常に多いが、これらを目にすると、なじみのない樹種名が登場するし、中には少々疑問を感じる呼称も見られるところである。
そこで、現状の理解のために、以下に気づきの点を整理してみた。(採り上げた用材は、前項で「次の項参照」とした樹種である。) |
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ギター用材の呼称 |
コ メ ン ト |
イングルマン・スプルース |
国内の森林・木材関係者は普通「エンゲルマン・スプルース(エンゲルマン・トウヒ)」と呼んでいる。ギター用材として登場するときは、必ず「イングルマン・スプルース」である。英語の発音としては「エンゲルマン」が近く、「イングルマン」はやや訛った印象がある。 |
アディロンダック・スプルース |
突然のいかめしい名前に戸惑うが、英語名レッドスプルースRed spruce の一般名(common name)の一つである。米国農務省の資料でも、筆頭掲載英語名は Red spruceで あるが、英語でも、ギターの世界となると
Adirondack spruce の名が一般的な印象がある。国内でこの難しい呼称を使っているのは、マーチンがこの名を使った影響かもしれない。
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ジャーマン・スプルース |
残念ながら、プロレスの神様カールゴッチの「ジャーマンスープレックス」とは何の関係もない。
国内では一般にヨーロッパトウヒと呼んでいて、古くは林業関係者はドイツトウヒと呼んでいたが、ジャーマンスプルース、ドイツ松の呼称は一般性がない。標準的英語名はノルウェースプルースNorway spruce のようである。ヨーロッパトウヒは欧州各国に産し、時に産地を強調するために、英語名ではイタリアン・スプルースItaliann spruce , スイス・スプルースSwiss spuruce , アルパイン・スプルースAlpine spruce , ルーマニアン・スプルース Rumanian spruce , カルパティアン・スプルースCarpathian spruce 等の呼称と並んでジャーマンスプルース German spruce の名も見るが、すべて同一種のヨーロッパトウヒである。現状では実質的にジャーマン・スプルースはヨーロッパトウヒと同義であり、ドイツからギター用のスプルースが輸出されているわけでもないようである。そもそも、産地など誰が見てもわからないであろうし、伝説のルーマニアン・スプルースを別にして、ドイツ産が特別の存在であったとも聞かない。 |
シダー |
明らかに英語の cedar に由来するもので、英語の発音は「シーダ」に近く、国内では慣用的には通常「シーダ-」と発音している。ここではウェスタン・レッドシーダーを短縮した呼称として使用しているようである。 |
杉 |
これは英語の cedar (シーダー)を直感的に「杉」として認知してしまう、日本人の宿痾に基づくものである。ウェスタンレッドシーダーはヒノキ科ネズコ属であるにもかかわらず、米杉(ベイスギ)として木材関係者が長きにわたって呼んできたことにも原因がある。単に「杉」と表記するのは適当でない。 |
シープレス |
これも初めて目にすると「なんだんねん?」となるが、すぐにこれが英語の サイプレス cypress (ヒノキ科のイトスギ)であろうことは推定できる。調べてみると、英語の cypress はスペイン語で ciprés で、この発音が「シプレス」であることに由来するものと思われる。 |
ハカランダ |
決して「葉が絡んだ“葉絡んだ”」ではない。
これも木材の呼称としては一般性がないもので、ブラジリアンローズウッドをブラジル(ポルトガル語圏)ではジャカランダ jacaranda と呼ぶことは承知していたが、ハカランダとは何とも気の抜けた音である。そこで、先の経験則で、スペイン語の jacaranda の発音を調べてみれば、案の定「ハカランダ」である。またしてもスペイン語の発音が登場した。現在のギターの形態がアントニオ・デ・トーレスによりスペインで完成し、日本でもスペインのギター製作の技術を学んだ歴史がある中で、ギターの世界だけでスペイン語の発音による呼称が部分的に定着してしまったのであろう。 |
セドル |
これもすぐに想像がつく。一般にはセドロ cedro(スパニッシュ・シーダーとも)と呼ばれる有名なセンダン科の広葉樹で、かつては葉巻入れに賞用された材である。スペイン語の発音も「セドロ」に近いが、ギター用材としては、なぜが「セドル」と呼ばれることが多い。“
なお、ややこしくなるがスペイン語の cedro は英語のシーダ- cedar である。したがって、先の cedar をスペイン語の発音を尊重すると「セドロ」となってしまい、さすがにギターの世界でもこの場合はスペイン語の発音に倣っていない。
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カヤ |
なぜ、碁盤の材が突然ここに登場するのか腰を抜かしたが、何とこれはセンダン科(Meliaceeae)の Khaya(カヤ)属の樹種で、イチイ科 カヤ属の「カヤ(榧)」とは全く別物であった。単に「カヤ」と表記するのは紛らわしくて親切でない。 |
松 |
これもしばしば目にする表記で、ギター素材のトウヒ類を指して、これがマツ科に属することから、「松の一種です」とする説明をしばしば見るし、ついには単に「松」としているケースもある。トウヒ類(スプルース spruce )はトウヒ属であって、マツ属(パイン pine )ではないから、さすがに「松」とするのは誤解を招く説明・表記であり、避けるべきであろう。 |
ミカルタ |
何かと思えば、強度と耐久性を求められるナイフの柄材として最も一般的な「マイカルタ」のことであった。木材、リネン、キャンバス、紙などにフェノール樹脂を含浸・積層した素材で、使用材料によりウッドマイカルタ、リネンマイカルタ、キャンバスマイカルタ、ペーパーマイカルタ等の呼称がある。Micarta の名称は米国企業の登録商標である。日本国内でも以下のように商標登録されている。
商 標:マイカルタ
権利者:インダストリアル ラミネーツ/ノープレックス インコーポレイテッド
(Industrial Laminates Norplex , Inc .)
アメリカ合衆国アイオワ州 52162 ポストビル リブラント ストリート 665
カタカナ表記は既に日本語であり、原音に近づけるために苦労する必要はないが、分野別に音が違うのは迷惑である。なお、同様の素材は決して特殊なものではなく、電気絶縁材料として一般的であり、マイカルタあるいはミカルタと呼んでる分野の製品は、必ずしも米企業の製品ではなく、慣行的に一般化された呼称と思われる。
(他社がマイカルタの登録された使途と同様の製品にマイカルタの名は使用できないのはいうまでもない。) |
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4 |
ギター用材に関する解説事例 |
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(1) |
部位別総論
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(表板) |
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・ |
音質のほとんどは表面板で決定される。そのために、軽くて弾性のよい木が選ばれ、北緯5,60度付近の山岳地帯に産する針葉樹が主に使われる。国産では北海道産のえぞ松(北海松とも云う)(注:えぞ松としているが、実際はアカエゾマツであろう。)外国産ではスプルースを用いる。えぞ松、スプルース共に山の北側に生育した木が平均した材を得られるのでよいとされている。
スプルースは、ヨーロッパの山岳地帯に産するが、えぞ松と同様に乱伐により良材の入手が難しくなってきたので、最近は、アラスカ、カナダ等のスプルースの輸入が多くなってきた。最近、スプルースに代わる材料として、ベイスギ(カナダ杉)が輸入されているが、材質が軟らかく、音は出やすいが耐久性に乏しい欠点がある。【ギターの知識と選び方:S43別冊現代ギター】 |
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・ |
表板の材料は振動しやすくて音響特性に優れた杉系(注:シーダーは杉系ではない。)や松系(注:スプルースは松系ではなく、トウヒ系である。)の材料を使います。杉系の方が軽くて早く振動しやすいので、スペイン的な明るい音楽には向いています。一方で松系は音の線は細いのですが、芯があってクリアなので、バロック音楽のように複数の音が様々に動くような音楽でもハッキリと聞こえます。基本的には表板は、このように鳴りやすい材料を選択するわけです。しかしエレアコなどではこのほかに、エキゾチックウッドと呼ばれる独特できれいな木目のメイプルなども使われています。
少し前まではえぞ松を使っていましたが、やはり数が少なくなったので今はイングルマン・スプルースを使っています。えぞ松もジャーマン・スプルースが枯渇したために用いたものです。【ヤマハ管弦打楽器事業部商品開発部~知っているようで知らない ギターおもしろ雑学事典:湯浅ジョウイチ(2007.11.20、株式会社ヤマハミュージックメディア)】 |
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(裏板・横板) |
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・ |
普通裏板と横板は同じ種類の木材を用いる。
クラッシックギターには、もっぱらローズウッドが使われる。ローズウッドは、インド産のものはパリサンドルとも云われ、ブラジル産のものはハカランダと称する。一般にハカランダの方が高級材と見なされている。
フラメンコギターでは、軽くて弾力がありしかも粘り強い木が選ばれ、糸杉が最良で、マホガニー、楓等も使用される。糸杉はシプレスとよばれ、日本ではかやの木がこれに相当する。(注:かやの木としているのは誤りである。)【ギターの知識と選び方:S43別冊現代ギター】 |
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・ |
クラシックギターはコンサートの独奏などで使うので、音が前に出るようにしなければいけません。ですから側板と裏板には硬いローズウッド系の材料を使うのです。その中でも高級なのはワシントン条約のために現在入手が困難なブラジリアン・ローズウッド(ハカランダとも言います。)で、次いでインド産のローズウッドです。
(注) |
裏板、側板は樹種選定の自由度が高く、一定の堅さと美しさを備えてさえいれば、それほどうるさいことをいう対象ではないようである。 |
フラメンコギターの場合は歌や踊りの伴奏に使うため、音がポンと出てすぐ消えるという、歯切れの良さが求められるのです。ですからフラメンコギターの側板と裏板には振動しやすい表板と同じような材質の、糸杉という軽い材料を使います。【ヤマハ管弦打楽器事業部商品開発部~知っているようで知らない ギターおもしろ雑学事典:湯浅ジョウイチ(2007.11.20、株式会社ヤマハミュージックメディア)】 |
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(指板) |
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・ |
指板は指先で常に摩擦されるし、汚れやすい上にフレットを堅固に支えねばならないので、硬くて色の濃い黒檀が使用される。本黒檀と縞黒檀があり、本黒檀が最もよい。ローズウッドも使用されるが、摩耗が早いので専門家用のギターには向かない。【ギターの知識と選び方:S43別冊現代ギター】 |
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(ネック(棹)) |
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ネックは弦の張力に負けないためと重くない方が良いので、比較的軽くしかも弾力と剛性のある木が選ばれ、高級品にはマホガニー、セドル(注:一般には「セドロ」と呼ぶ。)等が使用される。中・下級品にはラワン、セピター、ナトー、桂(注:カツラ)、シナ(注:シナノキ)等を用いる。【ギターの知識と選び方:S43別冊現代ギター】 |
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ネックには、軽くてねじれなどの変化に強い材料ということで、マホガニーを使います。最高級の材料は、ホンジュラス・マホガニーでとても良い材料です。(しかし、)良材であるホンジュラス・マホガニーは枯渇状況にあり、入手が難しくなっています。それで、一般的にはアフリカン・マホガニーなどを使っているわけです。こういった材料の選択は、フォークギターでも同じことがいえますね。【ヤマハ管弦打楽器事業部商品開発部~知っているようで知らない ギターおもしろ雑学事典:湯浅ジョウイチ(2007.11.20、株式会社ヤマハミュージックメディア)】 |
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(駒) |
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弦の張力を支持して弦の振動を表面板に伝達する役目を持つので、硬くて丈夫で粘りのある木が選ばれ、一般にローズウッド、黒檀等が使用される。【ギターの知識と選び方:S43別冊現代ギター】 |
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(2) |
樹種別音響特性等
ギター用材(Tonewood)は多くの樹種が利用されていて、ギター愛好家にとっては広い選択肢があるのうれしいものの、これら特性(が明確にあるとすれば、それを)を体感的に理解するのはなかなか困難なことと思われ、このため、需要に応えた多くの解説事例があるものの、これがまた実に感性の表現であることから、さらに理解しにくいものとなっている。わかる人にはわかるということなのであろうか。 |
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樹 種 |
音響特性に関する記述例 |
シトカ・スプルース |
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シトカスプルースは北アメリカや日本製のギターでの使用例が最も多く、サウンドの特徴もニュートラルである。【AGマガジン】
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おそらく、スティール弦ギターの表板として最も一般的に利用されている。良く響き、鮮明で音量のある音響板となっている。マーチンギターの主要表板である。クラシックギターではあまり利用されないが、シトカスプルース表板の優れたクラシックギターも存在する。【tonewood.net】
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音色はクセのないキラキラした硬質な音がします。【guitarholid.com】 |
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イングルマン・スプルース |
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材質そのものはジャーマンよりも柔らかく、イングルマンを使用したギターは“繊細なサウンドが持ち味”とされるのが一般的である。【AGマガジン】
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ヨーロッパトウヒと材色のみならず重さが非常に軽いことも類似していて、シトカスプルースよりわずかに音量が優り、より到達性のある音が出るように思われる。材色は非常に淡色である。ヨーロッパトウヒとシーダーの中間に位置する。米国のクラシックギター製作者に利用される最も一般的なトウヒである。
【tonewood.net】
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音色は柔らかく、レスポンスの良い音です。【guitarholid.com】 |
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アディロンダック・スプルース |
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シトカやイングルマンといった他のスプルースに比べると木目(年輪)の幅は広めのものが多いが、音響的性質としては粘りとコシがあり、ピアノの響板を始め木製飛行機の構造材としても使用されてきた.ギターに使用した場合、一般的に“非常にパワフルなサウンドになる”といわれる。アディロンダックの供給量はシトカやイングルマンに比べてはるかに少なく、名前がよく知られたスプルースの中でも極めて稀少性の高い材料となっている。【AGマガジン】
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音の到達性と明瞭さに優れ、最も比強度の優れたトウヒ類のひとつで、非常に硬い。【tonewood.net】
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シトカに似るが、アディロンダックは軽いタッチと強いタッチのいずれにもレスポンスがよい。シトカよりも幅広に共鳴する。【dfoa.eu】
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弾き込む程に倍音が増していく、パワフルでクリアーな音色は人気があります。最近では良質は材は入手困難で、主に高級ギターに使用されています。【guitarholid.com】
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ヨーロッパトウヒ
(ジャーマン・スプルース) |
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ジャーマンスプルースはアディロンダックとはまた違った質感の粘りと張りを持った上品なサウンドが特徴。
【AGマガジン】
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(ギター用)ヨーロッパトウヒにはアルパイン・スプルース、ジャーマン・スプルース、シルバー・スプルース、イタリアン・スプルースの名もある。おそらく、クラシックのための最上の木材であろう。この材の特質はきらめく高音ときれいな力強い低音を伴う優れた音色に寄与していることである。【torvund.net】
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ドイツ松は粘りがあってクリアな、張りのある音がします。【ヤマハ】
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音質はクリアーでヌケの良いしまった音が特徴です。【guitarholid.com】 |
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アカエゾマツ |
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本格的なギターに使用されるトーンウッドとしては唯一の国産材。樹種としてはシトカ・スプルースに近いが、グレードの高いものをギターのトップ材として用いた場合のサウンド・キャラクターはむしろ、ジャーマンのそれに比肩するとされる。【AGマガジン】 |
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ウェスタン・レッド・シダー |
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スペインで利用が始まった。甘く柔らかい音色を持つシダーはスチール弦アコースティックの世界でも人気があり、マホガニーボディと組み合わせたギターはフィンガーピッカーなどを中心に愛好されている。【AGマガジン】
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この材は、暖かみと開放感から長きにわたってクラシックギターに利用されてきた。【torvund.net】
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この材は、音がよく響き渡ると共に明瞭であることから、クラシックギターの製作者たちは長きにわたって共鳴板として利用してきた。【tfoa.eu】
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米杉は甘い音色で、低音に丸みがあるのが特長です。【ヤマハ】
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スプルースと比べると柔らかく、レスポンスの良い温かい音色です。【guitarholid.com】 |
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ブラジリアン・ローズウッド |
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ギターのサイド&バックに用いられるローズウッド類の中で最高級とされる。本材は堅くて重く、シーズニングには時間がかかるが、乾燥後には安定性が高く耐久性にも優れ、ボディ材に使用すると周波数レンジの広い、強いタッチに対する弾力性を持った、音の遠達性にも優れる楽器となる。この材を使用したギターは工芸品としての価値も高くなる。
【AGマガジン】
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最高の太い低音ときらめく高音を伴って、良く響く。多くの製作家は、品質が標準に達したものであれば一般に最高のトーンウッドと見なしてきた。【torvund.net】
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(他の)ローズウッドよりも硬く、音の跳ね返りも良く、倍音を多く含んだきらびやかでコシのある硬質な音色が特徴です。【guitarholid.com】 |
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インディアン・ローズウッド |
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木材特性はブラジリアンのそれに近いものがある。【AGマガジン】
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深く暖かい低音を伴い良く響く。インディアンローズはブラジリアンより暖かい低音が得られるということで意見が一致している。【torvund.net】
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ローズウッドは比重も重く倍音が綺麗に出て、艶やかな高音とどっしりした低音が特徴です.中音域もしっかりとしていて全体にボリューム感のあるサウンドになります。【guitarholid.com】 |
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ホンジュラス・ローズウッド |
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音響特性自体はブラジリアンより優れているという意見の製作家も見られる。【AGマガジン】 |
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キューバン・マホガニー |
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一般にマホガニーは甘いサウンドが特徴と言われているが、良材の音はまず芯がしっかりしており、その芯を甘くまろやかな成分が包み込むサウンドというのが本来の特徴といえる。【AGマガジン】 |
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ホンジュラス・マホガニー |
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ホンジュラス・マホガニーは現在入手可能な唯一のマホガニーで、ギターに使用されるマホガニー材としても最高級とされている。キューバンマホガニーと同様、良材は音に芯があり、その上で甘く、明るく、透明感があるというマホガニーの典型的サウンドと呼ばれる特徴を兼ね備えている.一般にマホガニーはローズウッドの下というランク付けがなされているが、ローズとはキャラクターの異なる独特の甘いサウンドには昔から根強い人気がある。【AGマガジン】
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マホガニーはローズウッド、コア、メイプルよりもはるかに重量が軽い。明瞭で明るい高音が強調されたすばらしい音量のある音である。表板に使えばより柔らくて豊かな音色と強調された中音域が得られる。【torvund.net】
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中高域が明るく、抜けの良いサウンドになり、カラッとしたバランスの良いサウンドが得られます。時折トップ材としても使用されます。【guitarholid.com】 |
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セドロ |
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マホガニーよりも軽量なわりに強度があるため、とりわけクラシックギターのネック材として好まれてきた。現在ではマーチンを始め、スティール弦ギターの世界でも使用例が増えている。【AGマガジン】 |
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【引用資料】 季刊アコースティック・ギター・マガジン 2011夏号 ほか |
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5 |
樹種の違いで著しい音響的な差が生じるのか
一定水準のいろいろなバイオリンにとびきり高額の名器も混ぜ込んで専門家による目隠しテストを行ったところ、評価がバラバラになったとする話はしばしば聞くところである。これと同様に、様々な樹種及びグレードの素材で構成されたギターについても、例えば目隠しでその属性を聞き分け判断することは至難の業であろうことは想像できる。理由は次のとおりである。 |
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① |
木材は厳密には全く同じ物理的特性の板は存在しない上に、加工精度の変動も避けられない。
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② |
ギターは複数の部材で構成されるものであり、仮に、音響の主役をなす表板の違いによる差を論じる場合に、表板以外の条件(物理的特性)を全く同一に整えること自体が不可能であろう。
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③ |
さらに、複数の部材が複数の樹種で構成されている場合、音響、音色はトータルのものであり、これら樹種のそれぞれの影響の貢献度を耳で分離・分析するなど、到底困難であろう。 |
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前項でも紹介したとおり、樹種別の特性を記述している例が多くあるが、上記の困難さがある上に、特定の者が自らの感性のみで多くの樹種について体感として確認できる条件が満たされているわけでもなく、さらに感性の表現は主観的な語感、嗜好の反映でもあり、客観性を求めるような性格のものでもない。したがって、部位別の樹種による特性を一般論で集約するのは困難であると思われる。
一方、ギター演奏のベテランは、展示販売されている多くの高額の製品の試奏を許され、自らの感性に照らして納得できるものを手に入れているものと思われる。この際の感想、評価を万人にわかる客観的な言葉で表現するのは難しいであろうし、その必要性もないであろう。
もちろん、測定機器により、可能な範囲で物理的な特性を計測して明らかにすることはできるが、その者の感性による評価を限られた測定値で説明するなど永久に不可能であろう。
結局のところ、多くのギター愛好家は、実に多様な選択肢があることに感謝しつつ、予算を勘案し、わかる範囲で共感できる製品を手に入れるという、悩ましくも楽しいプロセスを経験しているのであろう。 |
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