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続・樹の散歩道
緑の小道で見つけた小さなトウモロコシのような形の 黒い物体の正体


 緑の小道で小さな不思議な形態の物体を見かけた。
 色は黒色、形はたわら状で、大きさは長さが6〜9ミリほど、径は5〜6ミリほどである。
 表面の形態を観察すると、細部の造形は驚くほど緻密である。
 改めて、(知らないことがあればあるほど)身の回りはワンダーランドである。 【2015.12】
 


     
  拾い集めた不思議な物体(撮影は7月下旬)  
     
   謎のたわら状物体の側面は、トウモロコシのような粒状の模様で覆われていて、その並びは本物のトウモロコシで見られるような列の乱れや欠落は一切なく、キッチリ、整然と粒が並んでいる。

 次に、俵のふたに相当する面はこれまた驚きで、ハート型の花弁の6弁花といった風情で、細い軸に付いた形態となっていて、どこで切断しても同じ形態の金太郎飴状となっている。

 乾燥した可能性もあるが、質はカチカチで、指で崩そうとしてもびくともしない。まるでクヌギの菊炭のような質感であり、皮で覆われた構造ではないから、明らかに果実や種子ではない。
 
     
 
 実は以前にも雨上がりの緑の小径で同様のものを見かけたことがあり、首をかしげながら小枝で突いたところ、あんこのような質感で簡単に崩れたことを思い出した。
(右の写真) 
 
   雨上がりの謎の落とし物
 
     
   そこで、念のためにこのカチカチの俵状の物体をしばらく水に漬けて置いたところ、やはり同様に軟化していることを確認した。

 さればでござる。可能性として、この大きさに見合う何らかの動物のウンチである可能性も感じる。しかしながら、体の管の中の蠕動運動によってこうしたきれいな粒々構造や断面に6つの切れ込みのある構造が形成されるとはとても信じられない。

 そこで、気楽に調べてみると、何と スズメガ類の幼虫の糞 であることが判明した!!
 やはりウンチであった!! さずがに原色日本昆虫類ウンチ図鑑は存在しないから、残念ながら種の絞り込みは困難である。 
 
     
 
 
精緻な造作のスズメガ類の糞   菊炭のようなスズメガ類の糞 
 
     
   それにしても不思議である。このスズメガの幼虫の糞は、幼虫の腹の管を通過する間にこの形態が形成されるというより、この標準仕様の形態にがっちり体内で集積・成形して、一気にプリッと出すのかも知れない。しかも、糞の収納部位はこの糞の雌型の形状となっているに違いない。

 ところで、一般的なスズメガ類の幼虫の大きさに対して、この糞はあまりにも巨大である。機会があれば、スズメガの幼虫がどんな顔をしながら、さらにどんな手際でこの手榴弾のような大きなウンチを放出するのかもじっくり見てみたいものである。 
 
     
   【追記 2018.11】   
   カイコ(蚕)の糞も同じような形態らしい!!   
   たまたま、蚕の幼虫の糞が、先のスズメガ類の幼虫の糞と同様の形態であることを知った。
 蚕は飼養の歴史が長く、いろいろな研究がなされてきた歴史があるに違いないから、糞が奇妙な形態となることについても、昔から当たり前のこととして知られてきた可能性がある。

 そこで、調べてみると、参考となる情報を目にすることができた。次のとおりである。

 「(蚕の幼虫の消化器官の)中腸管内の食桑片は,小腸を通って結腸で圧縮され,さらに直腸で筋肉の働きによって六角の柱状に固められ,糞として肛門から体外に排出される。」(養蚕:平成22年3月1日 財団法人大日本蚕糸会 蚕業技術研究所)

 蚕の和名はカイコガで、カイコガ科の蛾であり、スズメガ類はスズメガ科の蛾であるが、たぶん消化器官は似たような形態なのであろう。ただし、きれいなトウモロコシ様の粒状となるメカニズムについては特に言及がなく、残念ながら未だよくわからない。