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続・樹の散歩道
  何とも地味な虫えい ナラハタイコタマフシ


 虫えい(虫こぶ)はやはり目が釘付けになるような意外性のある色合いや形態を伴っていないと面白くない。総じてその多様性には驚かされるが、しばしば全くときめかない実に地味なものも存在する。そのひとつがナラハタイコタマフシである。この虫えいを初めてコナラの葉で目にしたときは、フムフム、確かに虫えいには違いないが、とても人目を引くような存在ではないし、たぶん、小さな幼虫か蛹が1匹収まっているだけなのであろうと想像した。そこで、その虫えいを割って見ると ・・・・・ ちょっとだけ個性があって、成虫にもちょっとだけ個性があった。 【2019.6】 


 コナラの色々な表情  
 
             コナラの新葉
  絹毛におおわれた新葉は美しい。
          花期のコナラの風景
 多数の長い雄花序が垂れて、遠目にもよく目立つ。 
   
   
            開葉期の雄花序
 葉の展開と同時に雄花序を延ばす。花粉放出前の様子である。
           花粉放出中の雄花
 花被の外側に褐色の軟毛がある。1単位の雄花の雄しべは4〜6個とされる。
 
 
       コナラの雌花
 小さな雌花は新枝の上部につく。花柱が3個あることが確認できる。
      コナラの堅果
 殻斗の孔−産卵痕(矢印)はコナラシギゾウムシハイイロチョッキリの仕業なのかは不明。
       コナラの芽生え
 主軸の調子が悪いと両脇から軸を伸ばして葉をつける。(植木鉢内)
 
 
   コナラの芽生えなどの観察には、例えば新座市の野火止緑道はコナラが豊かに生育していて都合がよい。    
 
 ナラハタイコタマフシの様子  
 
   本虫えいについて、虫こぶハンドブックには次のようにある。    
     
 
ナラハタイコタマフシ
形成者:ナラハタイコタマバチ Andricus moriokae
形状:葉の表裏、ほぼ同程度にふくれた準球形の虫えい。えいの上端と下端が平らになるのが、太鼓の名のおこり。内部の虫えいは、上下2室の中間に、葉脈で支えられているように見える。1虫室で1幼虫。
生活史:5月に雌雄が羽化。単性世代虫えいは未知。
分布:本・四・九・朝鮮半島・ロシア沿海州 
 
     
 
   ナラハタイコタマフシ(葉表)
 必ずしも太鼓状には見えない。  
  ナラハタイコタマフシ(葉裏)
 葉裏も同様に膨らんでいる。左下の白いものはダニである。 
  ナラハタイコタマフシの断面 1
 虫えいの表面を掻き取ると、宙に浮かんだような虫室が現れる。
     
   ナラハタイコタマフシ の断面 2
 肉質部分のない二重構造である。
  ナラハタイコタマフシの脱出孔 
   ナラハタイコタマバチの蛹 1
 若い蛹で、まだブヨブヨである。
 
 
     ナラハタイコタマバチの蛹 2(背側)        ナラハタイコタマバチの蛹 3(腹側) 
 
     
 
      ナラハタイコタマバチの成虫 1          ナラハタイコタマバチの成虫 2 
 
     
   虫えいの住人は、一般にフシダニ類、タマバエ類、タマバチの類で、どれもこれも似たようなものであることが多いが、ナラタイコタマバチは珍しい緑色系の金属的な光沢を有していて、眩しいほどの輝きを放っている。鑑賞に耐えるタマバチである。