トップページへ 樹の散歩道目次へ 続・樹の散歩道目次へ 続々・樹の散歩道目次へ |
続々・樹の散歩道 ミラクルフルーツのミラクルワールド
植物園の温室で「ミラクルフルーツ」の名の低木をしばしば目にし、タイミングが合えば小さな赤い実をつけた姿を観察することができる。あまり丁寧な説明を付すと、赤い実があっという間に姿を消す恐れがあるためか、説明書きは最小限の内容となっていた。 しばしばマスコミ等が採り上げてきた経過があるため知っている人も多いと思われるが、この小さなアオキの実のようなものが、わずかな個数を単位にして驚くほどの高値(高級マロングラッセ並みの価格)で普通に販売していることを知った。やはりこの実のミラクルな個性をお遊び的に体験したい人や何らかの演出用として活用したい人のためのものと思われ、さらに面白半分で鉢植えで栽培したい人のためにこれまた高額な苗木も普通に通販されている。 【2022.1】 |
1 | ミラクルフルーツ樹の様子 | |||||||||
注: 「ミラクルフルーツ」の呼称は、実態上、樹種名及びその果実を指しているため、ここでは便宜上「ミラクルフルーツ樹」の名も使用した。 | ||||||||||
|
||||||||||
2 | 一粒だけを初めて体験 | |||||||||
|
||||||||||
植物園の説明書きは体験意欲をあおることになってしまうような具体的な記述は決して期待できないから、多数の事業者が販売している果実の説明を読むことで、おおよその手順は理解できる。 果肉をすぐに飲み込んでしまったら高い果実が無駄になってしまうから、要はミラクリンで舌がコーティングされるように、果肉を舌に満遍なく擦りつけるようにするすればよいとのことである。 幸いミラクルフルーツの果実が一粒だけ手に入ったことから、早速ながら体験してみることにした。 果実は15ミリほどの長さで小さく、口に入れてみるとほとんどが種子で果肉は薄い。味はわずかに甘酸っぱい。 さて、試験対象の酸味食品であるが、あいにくレモンの買い置きなどないため、たっぷり常備、愛用している「無水クエン酸」(レモンの酸味の主成分に同じ。)の粉末を利用することにした。 ミラクルフルーツを口に含んでしっかり舌にコーティングした後に、クエン酸をつまんで舌にパラパラと撒いてみた。すると、酸味はそれとして感じる一方で甘さも感じて、結果として心地よい甘酸っぱい味に転じてしまったのである。1時間ほど後に同様の試験をしたところ結果は全く同じで、驚異のミラクルワールドを体感することができた。 クエン酸単体では強い酸味があるだけであるから、大変な変化(あくまで間抜けな舌の感覚)であり、実に奇妙な感覚を経験することになる。 不思議物質の正体は「ミラクリン」(miraculin)の名があり、日本の研究者による命名とされる。さらに日本の研究者によってミラクリンのメカニズムが明らかにされたほか、遺伝子を組み換えたレタスやトマトでミラクリンを生産することも可能になったという。 |
||||||||||
3 | ところで ミラクルフルーツの花はとこにあるのか? | |||||||||
ミラクルフルーツ樹には蕾らしきものが頂生する葉の下に多数ついているのを確認したものの、開いた花が一向に見られない。調べてみると、どうやらこの樹は花らしき花をつけない少々変わった個性の持ち主のようである。 改めて、あちこちに多数ある蕾の様子を目を凝らして見みてみると、ごくわずかな数の閉じたままの米粒のような花を確認することができた。栽培条件による違いもあると思われるが、この樹ではまとまって開花するのではなく、五月雨方式で、パラパラと少しずつ開花していた。 |
||||||||||
|
||||||||||
<参考資料> | ||||||||||
|
||||||||||
3 | ミラクルであるが やはり何か変である | |||||||||
天然あるいは合成の甘味料の場合は、元々阿呆な舌が勘違いしてこれ自体を甘く感じてしまうため、砂糖の代替になるというシナリオであるが、ミラクリンは酸味に対して舌をど阿呆にして、酸味を甘味として勘違いさせてしまうという仕組みのようである。 しかし、よくよく考えてみると、そんなに用途があるとは考えられない。気づきの点は以下のとおりである。 |
||||||||||
@ 単独では何の作用もない ミラクリンは単体での摂取では何の作用もなく、これ自体が甘く感じられるわけでもない(果肉はわずかに甘いことは前述のとおり。)とされ、あくまで、特定の味(酸味)の感覚を別のものに感じさせるという極めで尋常ではない薬物効果を有する物質と理解される。 A デブにならない甘味料の代替とはならない 舌にミラクリンが残存している限りにおいて、酸味のあるものを甘く感じられるだけであるから、この作用を享受したところでデブから脱出できるはずがない。つまり、これ自体がダイエット甘味料となるものではないから、既存のノンカロリーの甘味料に対して何等有利性はなく、それらに取って代わることなどあり得ない。。 B レモンが甘く感じたとしてもそれはただの錯誤でしかない そもそもレモンが甘く感じるというのは一時の驚きではあるが、明らかに自ら舌を正常ではない状態に陥れるものであって、常用する目的などあり得ない。レモンはやはり酸っぱいからレモンなのである。 C 気休めにはなるかも知れない ダイエットの基本は必要以上に食べないことが何よりも大切であるが、軟弱にも擬似的なものであれ甘く感じるものにどうしても執着する場合は、ぜいたくな(高くつく)気休めにはなるかも知れない。英語版のWikipedia で「日本ではミラクルフルーツが糖尿病患者やダイエットする人たちの間で特に一般的になっている(reason.com)」との英文記事を引用しているが、そこまで普及しているとは思えない。 非常におもしろい存在であるが、機能的には真の実用性には欠け、残念ながらイベント等のネタとしての活用以外の出番は考えられない。ビジネス化の野望は衰えがないようであるが、個人的にはもう興味は失せてしまった。 |
||||||||||
4 | ミラクルフルーツ関係商品の現状 | |||||||||
国内で関係商品がどれだけ消費されているのかは明らかではないが、通販商品は賑やかである。以下のようなものを目にした。 | ||||||||||
|
||||||||||
その他栽培用の種子、苗木の販売を目にする。 |
||||||||||