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樹の散歩道 松の実にありつくのは面倒でも やっぱ うめーべや!!
今度は別項で登場したエゾリス君ではなく、自分の感想である。ヤニでべたべたのチョウセンゴヨウの球果であるが、数日間放置しておけば、精油分が次第に蒸発して、ベタつき感がなくなることは追って確認している。しかし、当初は即実行あるのみで、不要な紙で手をガードしつつ、べたべたのヤニに立ち向かい、やっとの思いで種子を取り出した。【2011.11】 |
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球果単体 新鮮な球果の種鱗は厚みがあってずっしり重い。 種鱗の先端部はヤニでべたべたである。 チョウセンゴヨウはアカマツやクロマツと違って、球果が乾燥しても種子は放出されない。運ぶのは貯食行動が知られているリスなどである。 |
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1 | 市販品の松の実 まずは市販品(ほとんどが中国産で、一部に韓国産が見られる。)の様子から紹介する。松の実はつまみのナッツ類のひとつとして、あるいは健康食品として市販されているが、普段購入する機会はほとんどない。改めてサンプルとして小袋の商品を購入したが、量の割りには価格が高い。その理由はあとで実感できた。 |
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よく見ると、実の3分の1程度のものに、ナスのへたのような付属物がついている。たぶん何らかの呼称があるのであろうが、承知していない。神経質になるほどのことではないとしても、わずかに食感を損ねている。手で簡単に取ることは可能である。しかし、人件費勝負の中国でもそこまでできないのか、それとも特に気にならないのかはわからない。 ところで、市販品の松の実は生なのか、ロースとしてあるのかであるが、たぶん生と思われる。ナッツ類の専門店として知られる上野アメ横の小島屋では、松の実は軽くローストすればさらにおいしく食べられるとして説明している。 |
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2 | 球果から採取した種子の松の実 松の実もいわゆるナッツであるから、ナッツ類の一般的な処理方法を念頭に置けば、まずは適度に水分を飛ばすために天日乾燥した方がよいことは想像できるが、今回は体験であるから、新鮮な実も試食してみた。 |
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(1) | 実(胚乳)の取り出し | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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種子の殻(種皮)はしっかり厚みがあって非常に硬いため、ラジオペンチの刃の裏側の空洞部分を利用して割ることにした。数をこなすなかで、、やはり、エゾリスもがっかりする空っぽのいながしばしばあることを確認した。なお、へた状の付属物は、鮮度がいいうちはゴムのように伸びる柔軟性を持っている。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(2) | 採りたて・剥きたての松の実 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(3) | 薄皮のままロースト・剥皮 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(4) | 殻付きのままロースト | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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松の実を商品とするためには、小さな種子の硬い殻をひとつひとつ割り、さらにまとわりついた薄皮を剥ぎ取らなければならない。機械化できるような印象はないし、せいぜい天日乾燥して、幾分か薄皮をむきやすくするぐらいのことしか考えられない。 中国では現金収入を得るために、このとんでもなく面倒な作業をしている人がいることを思うと、松の実の製品を見る目が変わる。なお、米国では松の実の収穫は主としてアメリカ・インディアンが担っている模様である。 |
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<参考1:中国では如何にして松の実を生産しているか> | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ナッツ類を輸出するほどの生産量のある国で、収穫から製品に至るまで、どのような方法で処理しているのかは興味があるが、直接見る機会はない。 胚乳等を取り出す必要がある場合は、収穫、外果皮の除去、種皮の除去、薄皮の除去、選別等々の工程が必要となる。多分、各工程で、工夫を重ねた機会が可能な限り利用されているのであろう。収穫段階でも、かつてアーモンドの製品のCMで、車輌系重機のアームが樹幹をむんずとつかみ、強引に振動を与えて果実を落とす風景を紹介していたのは驚いた。 中国でのチョウセンゴヨウの実の生産についてであるが、松の実を輸入販売しているサンナッツ食品株式会社(神戸市)が取引先の中国の工場での作業風景を写真と動画で紹介しているホームページは大変参考になった。(他のナッツ類についても紹介している。) チョウセンゴヨウの球果の収穫は、大きな樹では、何と人がリスのようにスルスルと木に登って球果を落とし(これはもうビックリ!)、小さな木では鈎付きの竿で落としている。 球果からの種子の脱粒から薄皮むきまでの各工程(球果割り、殻むき、薄皮むき)ではそれぞれ専用の機械を使用するとともに、手作業を併用し、最終選別は手作業により行っていた。小規模な作業場では手作業の比率が高まることになるであろう。 |
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<参考2:パインマウスとは?> | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
栄養豊富で大変おいしい松の実であるが、欧米の食品安全当局が、松の実に係わる味覚障害の症状に関して情報提供している。英語でパインマウス( Pine Mouth )、パインマウス・シンドローム( Pine mouth syndrome)として知られているという。松のタネが大好きなネズミと勘違いしそうであるが、松口(くち)である。国内での報告例は目にしないが、日本政府関係機関でも欧米における情報を転載・提供している。 【米国FDA(米国食品医薬品国)】 「昨年、FDAは松の実にかかわる苦い金属的な味に関する多数の消費者の苦情を受理した。この味は “パインマウス pine mouth ” として知られていて、通常、松の実を食べた後の12~48時間後に始まり、平均すると数日から2週間続く。この間、何を食べてもいらだち、食欲と食べる楽しみが著しく減退する。この症状は、特段のよくない臨床上の作用を伴うことなく少しずつ消失する。 消費者の苦情が増加していることに応えて、FDAでは詳細な質問票を作成し、苦情を申し出た消費者の事例を収集・分析した。その結果、パインマウスにかかる大多数の松の実は、生の状態で(スナックとして、あるいはサラダやペストソースの材料として)食べられたものであることが明らかとなった。さらに、消費者は松の実を食べている時には、いやな味ともまずいとも感じていなかったことも明らかになった。最終的に、FDAとしては、パインマウスは松の実に対するよくない食物反応であって、典型的な食物アレルギーとは全く別のものであることを確認することができた。 FDAは、パインマウスの可能性のある原因を明確にし、引き続き消費者の苦情を分析し、症状の激しさと発症の可能性が松の実の摂取量に関係するのか否かを明らかにする。 FDAは、この問題の監視を続け、すべての新たな知見を一般に公表する。」 (Page Last Updated : 03/14/2011) なお、内閣府食品安全委員会がフランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)の記事を紹介していて、その中で、この味覚障害が中国から入った種、特に中国産の Pinus armandii (中国名は「華山松」、和名は「高嶺五葉 タカネゴヨウ」)が原因である可能性を指摘している。 |
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【追記1】 拾った球果から種子を取り出すには・・・ チョウセンゴヨウの球果から種子を取り出すのに、当初はヤニで難儀したが、頭ではなく“足”を使えば簡単であることが判明した。つまり、こういうことである。 球果を発見したら、左足で球果の先端を押さえ、右足で球果の基部から踏んづけながら種鱗をしごき落とすのである。こうすれば簡単に種鱗が軸を残してバラバラに落ちるため、あとはおもむろに種子を拾い集めればよい。 |
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【追記2】 チョウセンゴヨウ種子内の胚の様子 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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