トップページへ   樹の散歩道目次へ
樹の散歩道
  「松の実はうめーべや! 
   やっぱ この味が一番だべさ!」とエゾリス君


 ある樹木園にチョウセンゴヨウ(チョウセンマツ)が数本植栽されていて、是非とも自分で直接採取した松の実を味わってみたいと思っていた。知り合い曰く、「松の実はリスが落とした球果を頂戴するのが一番!」との話も聞いていた。
 そろそろエゾリス君がこれを狙って活躍する頃であろうと見当を付けて様子を見てみると、案の定、働き者の活動の痕跡を確認した。【2011.11】 


 チョウセンゴヨウの球果は数個確認したものの、残念ながら皆エゾリス君が一仕事を終えた後で、球果の種鱗がバラバラに散らかっていて、種鱗を剥ぎ取られた球果はトウモロコシの穂軸のような状態となっていた。餌食となった球果は、種子が収まっていたであろう大きな空洞が確認できた。がっかりであったが、残骸の一つをよーく見ると、多くの種子がぱらぱらと散らかっている。これは明らかにエゾリス君の置き土産に違いない。
 
     散らかったチョウセンゴヨウの種鱗
 同じ場所に必ずしも球果があるとは限らない。
       同左(別の箇所の残骸)
 小さいエゾリスにとっては大変な仕事であろう。  
     通称エビフライの名がある球果の残骸
 先端部を残してすべての種鱗が剥ぎ取られている。正確に言えば、種鱗は途中で折れた状態となっている。
          別の“エビフライ”
 殻(種皮)だけとなった種子と無傷の種子が周りに散らかっていた。
 
 無傷の種子を持ち帰ってワクワクしながら早速割ってみたところ、何と! すべてがしいなであった!!

 エゾリス自身は苦労して種鱗を剥ぎ取ったのに、多くがしいなで、空振り状態であったに違いない。ということは、エゾリスは種子の微妙な重さの違いでしいなを識別して放り投げたということになる。これも驚くべきことであるが、実はそんなことより、食いはぐれた当方としてはがっかりであった。

 実は、エゾリスもしくじることがあるようで、しばしばエゾリスが割った種子にしなびた胚乳が入ったものが見られる。
 
        エゾリスが残した種子
 大きさは十分で、期待したものの、残念なことにすべてがしいなであった。
       エゾリスが残した種皮の残骸
 下の2個にはしなびた胚乳が入っているのか見られる。
 
 そこで、日を改めて現地を訪れ、エゾリスの気配を探っていると、突然 ドスン という音に驚き目をやると、何とあこがれのチョウセンゴヨウの球果である。エゾリスが仕事中とわかり、そっと様子をうかがっていたところ、幸いにもいとおしいリスちゃんの仕事ぶりを写真に収めることができた。 
 
  チョウセンゴヨウの球果と格闘するエゾリス君                同左
 
 仕事の様子は、おおよそ次のとおりである。

 果柄をかじって落とした球果を両前足で押さえ、口で種鱗を1枚ずつ剥ぎ取る。
 しばしば付近の堆積した落葉の中に頭を突っ込んでいる。多分、種子を埋めているのであろう。いわゆる貯食行動である。 
 定期的に作業中の球果をくわえて移動し、また同じ作業を継続する。
 
 
 別の場所を見れば、今度は無傷の新鮮な球果が落ちていた。多分、これもエゾリスが落としたものであろう。これ幸いと早速手にすると、何とチョウセンゴヨウの新鮮な球果というものはヤニ(脂)で全身がひどくベタベタの状態であることがわかった。観察すればすべての種鱗の尖った先端部からヤニが吹き出た状態となっているのである。さらに種鱗の間にもこのヤニが流れ込んでいる。こんな厄介な球果は初めてであり、簡単にはおいしい食べ物にありつけないことを痛感した。と同時に、これでは口で種鱗を剥ぎ取るエゾリスは間違いなく足や口がヤニでべたべたの状態になってしまうことがわかった。有機溶剤で拭き取ることもできないエゾリスのことが少々気になってしまった。

 エゾリスのことを心配しながらも、多分エゾリスが落としたと思われる球果を3個ばかり頂戴した。(下の写真)
 
                 チョウセンゴヨウのムッチリ大きく重い球果
 右の球果は一部の種鱗が剥ぎ取られていて、種子が顔を出している。種鱗の先端部の白く見えるものはすべてべたべたのヤニである。大型の球果で、長さは15〜16センチほどある。
 
 さて、これで松の実を試食する準備が整った!!試食編
 
      枝の上でポーズするエゾリス君 その1              同 その2

 北海道ではよく見られる風景である。 腹が白いのはデザイン的には大変よろしい。しかし、みてくれはシマリスのかわいらしさには及ばない。色彩的にはやはり、周囲に溶け込んでしまう地味な色合いである。そうでないと、鳶に簡単に見つかってしまう。