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続々・樹の散歩道 クリ、クルミをむさぼり食う憎き幼虫の正体
拾ったり購入したいろいろな種類のクルミやハシバミ、クリ類をかごに盛り合わせにして、しばらくの間観賞用として飾って置いていたところ、ある日、予想もしなかった悲惨な状況を目の当たりにして、すっかり打ちのめされてしまった。 かごを持ち上げたところ、明らかに虫食いによると思われる粉(フン)がたっぷりと下部にたまっていたのである。大切な木の実コレクションを突然に襲った〝激甚災害〟であった。【2025.9】 |
1 | 被害の実態 かごの内訳と被害の有無は下表のとおりである。 |
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2 | 被害の総括 被害状況を整理すると以下のとおりである。 |
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3 | 被害の分析 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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以上の加害虫はいずれも小さなブヨブヨの白い幼虫であることを確認した。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
4 | 加害虫の正体 加害虫のの正体を見極めるためには、ブヨブヨの白い幼虫から昆虫の種類を同定することが必要となるが、これがなかなか難しいことを実感した。幼虫は成虫ほど個性がない上に、幼虫の詳細な写真を掲載している図鑑がなかなか見当たらないからである。 そこで、まずは書籍で総論の学習をしつつ、気長に羽化するのを待つ方針とした。 |
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(1) | クルミの場合 幼虫がうごめくクルミもろとも(割って生息を確認したもの)チャック付きのポリ袋に納めて、成虫になるまで放置することとした。途中、驚くことに幼虫がポリ袋を食い破って徘徊しているのを発見したことから、穴をふさぎ、二重の袋とした。食害されたクルミをチャック付きのポリ袋に納めて、幼虫が成虫になるまで放置することとした。 幸いにして、ある日、袋の中でパタパタやっていた小さな蛾(ガ)を観察することができた。 そこで、シナノクルミを購入した長野県内の販売業者に聞いたところ、クルミは梅雨時を過ぎるとひどくやられることがあるが、虫の名前についてはわからないとのことであった。そこで、長野県果樹試験場に成虫の写真を添えて照会したところ、「ノシメマダラメイガ」であろうとの回答をいただいた。 |
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上記書籍の掲載写真と比較すると、主たる犯人はやはりノシメマダラメイガであることが判明した。しかし、これとは異なると思われる蛾が2種類存在していることを確認した。このうちの1種はイッテンコクガであることを確認した。しかし、このような展開となると、幼虫について種類を同定することが困難となってしまった。 以下はこれらの写真である。 |
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(2) | クリの場合 クリの場合は、生活に密着した食品となっていることから、非常に情報が多い。生のクリの場合は専らクリシギゾウムシの幼虫が主たる犯人であるというのが定説である。加えてクリミガの幼虫も活躍しているようである。いずれもクリ虫の名前で広く知られている。(特に前者の成虫は一部で親しまれている。) |
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是非とも幼虫が成虫となった姿を確認したいところであるが、特にクリシギゾウムシの場合は成虫になるのに2~3年を要するとされる点は気が重いところである。結果クリミガだけでもやむなしとの思いで、クリ虫が生息する生栗をプラ容器中の土の上に放置して、気長に待つことにした。しかし、クリにカビが発生して生息環境が悪化したため、幼虫の正体の確認は断念せざるを得なかった。まあ、定説どおり、両種のいずれかであることは間違いないのであろう。 ついでながら、完全乾燥状態の中国栗である錐栗(ヘンリーグリ)に穴を開けた虫がいたため、クルミと同様にチャック付きのビニール袋に閉じ込めて、成虫になるのを待ったところ、やはり小さな蛾が発生していた。翅がよれよれで、種類はわからない。 以下はこれらの写真である。 |
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5 | 感想 栽培グルミは収穫され、しばらく経過した後にどこからともなくやってきた特定の蛾が、これ幸いと殻のたぶん尻の部分に卵を産み付け、ふ化した小さな幼虫が尻の隙間から侵入するものと思われる。人にとってはいずれも生活害虫であるが、ターゲットとなる食べ物さえあれば、確実に登場すること自体が驚きである。というより、〝自然豊かな〟住環境にあるということなのか? クリは収穫された時点で既にほとんどが卵を生み付けられているというから、そのこと自体が驚きである。しかも、栽培グリは実も大きく、生まれ来る幼虫たちにとってはこの上ないごちそうに違いない。しかし、よく管理された栽培栗に生み付けられたクリシギゾウムシの卵が、首尾よく成虫となれるのは、それほど多くないと思われる。 |
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<おまけ1:ゾウムシの仲間たち> クリの木についたほとんどの実に卵を産み付けると言われるクリシギゾウムシであるが、いろいろな時期に栗の木を観察したものの、残念ながらそのユニークな姿を確認することができなかった。クリシギゾウムシのお母さんは随分働き者に違いないから、額に汗しながら忙しく卵を産み付けている姿を是非見たかったのであるが、これが叶わなかったため、代替として以下にその仲間たちに登場願うこととする。 |
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<おまけ2:ドングリが大好きな虫たち> ドングリもクリと同様に、いろいろな幼虫にとっては豊かな食べ物となっているようである。やはり、樹上で卵を産み付けられるようである。 |
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ハイイロチョッキリについても成虫の姿を見たくて、産卵痕のある堅果を採取して経過観察したが、幼虫は多数発生したが、成虫を見届けることはできなかった。クヌギシギゾウムシは、特に産卵痕のないクヌギの堅果を水に浸けておいたところ、異常事態を感知したのか、幼虫が種皮に孔を開けて這い出してきた。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||