樹の散歩道 クヌギ移入種説の周辺
日本列島は沿革的にもユーラシアプレートのかけらのような存在であるから、植物の分布種数においても中国の足元にも及ばない実態にあり、したがって古くから有用な木本植物、草本植物を人為的にせっせと移入してきた歴史がある。このため、ごく身近な存在である植物が、古い時代に中国から渡来したものであることを知ると、「へー、そーなんやー・・・」ということになり、いいネタを仕入れたような気になってしまう。 こうした中で、北海道以外ではごく普通に見られるクヌギについて、図鑑類では触れられていないが、巷には根強い移入種説が存在する。【2010.3】 |
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具体的には次のような説を耳にし、あるいは目にした。必ずしも明確な根拠が示されているものではない。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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その一方で、次のような記述も見られる。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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1 | 弘法大師伝説の真偽 弘法大師はとにかく人気者で、北海道を除く日本列島各地にその伝説があるとされる。その数の多さには本人もあの世でビックリしているに違いない。弘法大師が登場すると 非常に楽しいが、残念ながら、@、Aの出所はもちろん不明である。 |
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2 | 花粉分析ではどこまでわかるのか 花粉分析は太古の植生を調べる手法として古くから行われていて、ここでは花粉分析でクヌギを同定できるのかが問題である。結論的には、その識別の限界は属の段階までといわれている。したがって、例えばクヌギとアベマキの花粉を識別することはできないということである。ということで、花粉分析のみを根拠として、太古の日本にクヌギが存在したか否かを判定することは困難ということである。 |
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3 | 出土木材の鑑定ではどこまでわかるのか 木材の細胞組織は、その樹種の分類群ごとに形態的な特徴を有することから、遺跡出土木材から顕微鏡切片を採取して、その樹種グループを判断することが一般的に行われている。 Eで、遺跡出土木でクヌギの使用が確認したとするレポートの存在に言及している。遺跡調査による樹種の鑑定成果を多数収録した図書を見ると、「クヌギ」、「クヌギ類」とした記述が確かに見られる。 そこで、木材組織の顕微鏡的観察でクヌギを同定できるかが問題である。結論的には、木材組織学的識別では、種のレベルまで識別できるのはごく一部の分類単位に限られていて、例えばクヌギとアベマキを識別することは困難とされている。 したがって、先のクヌギとして鑑定されている成果について、木材組織学的情報だけではクヌギとして特定することは困難であるはずで、「クヌギ類」であればわかるが、「クヌギ」と特定している根拠が、その他のデータを総合的に捉えて判断しているものなのかはわからない。 |
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4 | DNA分析ではどこまでわかるのか DNA鑑定に関しては、犯罪捜査における個人の特定、親子関係の判断、産地偽装の判断等に実用化されているとおりで、理論的には広くDNA情報が事前に集積されていて、対象のDNAが採取できれば樹種の特定や、さらには種内の無数に存在する系統の同一性の確認も可能とされている。 ただし、例えば国内の全樹種の遺伝情報が蓄積されているわけではないので、現時点では樹種鑑定サービスの一般的な手法として実用化されているものではないので、今後に期待するしかない。 |
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にわか勉強した限りでは、以上のとおりで、日本人の生活と共に存在したクヌギはいろいろな話題を提供していて、移入種説に関しても簡単に明快な結論には至りそうもない。 |
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参考メモ1:クヌギの利用 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
建築・工芸素材としての定着した使途は全く聞かない。小枝を柴とする場合、枯れ葉がまとわり付き気味で、コナラの評価に及ばなかった。しかし、炭材としては一級品として評価されてきた。(参照) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
参考メモ2:移入種いろいろ 注:説明文は主として「樹に咲く花」(山と渓谷社)より引用 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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