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木あそび
 
  美しい炭
             


 家庭における日常の煮炊き・採暖用の燃料としては姿を消した木炭であるが、輸入炭に押されつつも屋外レジャー用燃料、営業用としては安定した需要があると思われる。また、丁寧に仕上げられた茶道用の「茶の湯炭(茶道炭とも)」では国産炭が頑張っているようである。
とりわけ「菊炭」の名があるクヌギを原料とした茶道炭は現在でも複数の産地で焼かれていて、その姿は実に美しい。【2009.3】
  


        クヌギの菊炭の外観 1
 菊炭は樹皮がしっかり付いていることが命で
 ある。
 今西:兵庫県川西市黒川字大上197
        クヌギの菊炭の外観 2
 年輪までくっきり見えて数えることもできる。
 菊炭の名は木口に綺麗に現れる放射状の割れ目模様が菊の花を思わせることに由来する。また、樹皮もそのまま綺麗に炭化してかたちを留めていて、それが特に木口面での美しさをさらに高めていて、眺めていて退屈しない。もちろん見た目だけではなく、火付き・火持ちもよく、燃材としても一級品とされる。これらはいずれもクヌギの特性によるものである。クヌギは専らシイタケの原木(ホダ木)として昔から評価が高いが、優良なクヌギの木炭はクヌギのもう一つの忘れてはならない顔である。
 クヌギの木炭として昔からその名が広く知られていたのは、佐倉炭(さくらずみ)池田炭(いけだずみ)である。
  
 佐倉炭は江戸時代までは池田炭と並んで茶の湯炭として知られていたものであるが、現在では名称を維持できるほどの生産は見られない。現在の千葉県佐倉市、茨城県鉾田市、栃木県芳賀郡で生産されていたとされる。

 一方、西の池田炭はかつて池田(現在の大阪府池田市)が炭の集積地であったことに由来する名称で、現在でも池田炭の名称を使用して大阪府能勢町、兵庫県川西市で生産されている。小規模ではあるが伝統の火を絶やさないことを意識した取り組みとして映る。

 なお、クヌギを素材とした茶道炭としては愛媛県の大洲市や内子町の製品も知られていて、「伊予炭」、「伊予切り炭」、「伊予くぬぎ菊花炭」等の名称が使われているほか、「菊丸」としたユニークな名前も見られる。

 これらの美しく仕上げられた炭は茶の湯炭としての用途のほかに、鑑賞、装飾用としての需要もみられる。もちろん、近年注目されてきた炭の様々な効用も期待してのことであることはもちろんである。兵庫県川西市産の池田炭では、観賞用としてツルかごとセットになった商品も見られる。

 実はこうした観賞用あるいは部屋置き用のツルかごやバスケット入り木炭については、全国的に見られるようになった。木炭生産量の断トツは岩手県であるが、北海道がこれに次いでいて、その北海道の内陸部の芦別市で部屋置きの炭製品を見かけた。地域のカラマツを利用した木炭や炭化した松ぼっくりを主体に、かわいい小物を配してバスケットに収めたものが、「木炭オブジェ『炭物語』」矢田木材 北海道芦別市上芦別町517番地)の名で販売されていたのは随分前のことである。インテリアとして楽しく置ける製品であった。また、和歌山県の備長炭でも同様の製品(紀州川商 和歌山市井辺1-4)を見かけた。

 こうして炭を眺めていると寒い冬には火鉢で手あぶりしたり、スルメを焼きたくなってしまう。できれば桐の胴丸火鉢がいい・・・骨董屋で探してみるか・・・
 
【追記 2010.1】 
 骨董屋で「桐の胴丸火鉢」を入手!! → 参照