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樹の散歩道
 納豆でなくても糸を引く   糸を引く葉っぱ など
   (糸を引く植物など)  



糸を引く葉っぱ
 ミズキ(ミズキ科ミズキ属)

 ネバネバの糸ではなく、維管束が引きずり出されることによるものとされ、個々の葉脈の箇所で糸を引く。

 そこで、よーく見てみると、糸状のものは維管束そのものではなく、非常に細い繊維が束状になったものであることが確認できる。つまり、維管束自体は断裂しているが、細胞壁の繊維構造が伸び出したもののように思われる。 
 ヤマボウシ(ミズキ科ミズキ属) 

 ヤマボウシでも同様で、こうした性質があるから、何らかの有利性があるとは特に聞かない。
ハナミズキ(ミズキ科ミズキ属)北米産

 このサンプルでは主脈部分の糸がしっかり太めである。 
 サンシュユ(ミズキ科ミズキ属)
 中国等原産

 こうしてみると、ミズキ科樹種は皆同じような性質があるようである。 
 オオバコ(オオバコ科オオバコ属)

 オオバコの場合も葉をちぎろうとすると太めで丈夫な維管束そのものがある程度伸び出す。 踏まれて葉が損傷してもこの特性から通道機能がしっかり確保されると思われる。
 写真のように特に葉の基部と葉柄の2箇所を切ったところ、中間部は維管束に沿って上下にスライドさせることができた。
 したがって、ミズキ科の葉で見られるような細い繊維の束とは全く異なっているのは明らかである。  
 トチュウ(トチュウ科トチュウ属)
 中国原産

 杜仲茶で知られるトチュウの葉は、ミズキ科樹種やオオバコの場合と異なり、ゴム質の糸を引く。葉や樹皮には2〜7%のグッタペルカ(ゴム状樹脂で、ガッタパーチャとも)を含むとされる。

 トチュウの樹皮を乾燥したものは日本薬局方で生薬「トチュウ」として収載されている。 

糸を引く果実
   トチュウ(トチュウ科トチュウ属)

 トチュウの再登場である。これはその果実(翼果)である。平たいトチュウの果実もグッタペルカをたっぷり含んでいるようであり、粘性の強い糸を引く。 
 ヤドリギ(ビャクダン科ヤドリギ属)

 写真はヤドリギの中でも赤実をつけるアカミヤドリギの果実を指で挟んでつぶした後に開いた際の様子である。果肉に粘りああることに加えて、繊維質の成分が含まれていて、糸を引く。果実を食べた鳥のウンチも同様の状態となって木に付着し、根付くとされる。

糸を引く種子
   コブシ(モクレン科モクレン属)

 モクレン科の各樹種の果実(袋果)に納まった種子を引きずり出すと、珠柄の繊維質が伸びて白い糸(細い繊維の束)にぶら下がった状態となる。 

 自然状態では決して写真のようにはならない。

糸を引く花粉
  オオムラサキツツジ(ツツジ科ツツジ属) 

 ツツジ属の仲間の花粉が糸を引くことが知られている。昆虫に花粉を運ばせるたもの工夫である。つぼ状に上方に口を開けた葯からはみ出た花粉に針を押し当てた後に離すとと、微細な糸(粘着糸)に連なった花粉がずるずると引き出される。もちろん、指で軽く触っても同様であり、面白いシステムである。
 この花粉を指で擦り合わせてみると、ベタつき感は特になく、さらさらとしている。この花粉は4集粒とされる。
(背景の色はオオムラサキの花冠の色)
カルミアの糸を引く花粉はこちらを参照

折れる葉っぱ
 モッコク(モッコク科モッコク属)
 
  葉が肉厚で、折り曲げるときれいにパチンと割れる。
 

字の書ける葉っぱ
 タラヨウ(モチノキ科モチノキ属)

  葉裏を細い棒でひっかくと、黒く変色することから、文字を書くことができる。この性質を、インドで葉に経文を書く多羅樹(ヤシ科のウチワヤシ)にたとえて、多羅葉という名が付いたとされる。
 この現象は、タラヨウの葉のタンニン類が多いこと、ポリフェノール酸化酵素活性が強いことによると考えられる(日本植物生理学会 みんなのひろば)とされる。
 こうした性質から、日本郵政公社(現日本郵便株式会社)がタラヨウに断りなく「郵便局の木」に指定した経過がある。
 セイヨウバクチノキ(バラ科サクラ属)

 バクチノキよりセイヨウバクチノキの方が字がきれいに浮かび出た。

はぜる(爆ぜる)葉っぱ 
 ソヨゴ(モチノキ科モチノキ属)

  葉をライターの火で熱すると、その部分の表皮が膨れてパーンと音を立ててはじける。この性質からフクラシバ(膨ら柴)の名がある。

 写真は葉裏で3連発後の様子である。 

はぜる(爆ぜる)葉っぱ 2
 マテバシイ(ブナ科マテバシイ属)
 
 
「死環」のテスト(こちらを参照)をしていたら、マテバシイもパーンといい音がした。葉が大きいから何発でもやり放題である。

はぜる(爆ぜる)葉っぱ 3
 タブノキ(クスノキ科タブノキ属)

 こちらは、パチパチ連発音が生じる。火遊びは実に楽しい。

はぜる(爆ぜる)葉っぱ 4
   トベラ(トベラ科トベラ属)

 トベラも意外やよくはぜる。単独の葉をライターであぶってもよいが、できれば葉付きの小枝をそのままあぶれば、パンパン、パチパチと実に賑やかな音が発生して愉快である。葉は破裂する際に二層にはがれるほどの状態となることもある。