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続・樹の散歩道
そもそもドロップハンドルには適合するブレーキレバーがないのか
それともドロップハンドルを公道で使うこと自体に問題があるのか
(ドロップハンドルの危険性・不完全性について)


 長らく古いランドナーに乗っているが、購入時にあまりにもブレーキが使いにくいために、最初からセーフティレバーをセットしてもらって今日に至っている。別に最近気付いたわけでもないが、本来のブレーキレバーはいかにも使いにくいため全く使っていない。こんな使えないブレーキは商品として欠陥にも等しいものであり、技術的にも自転車が本来的に確保しなければならない確実な制動機能を明らかに軽んじていたとしか思えない。こうした状況は現在でもそれほど改善されているとは思われず、数十年間にわたってこの問題が放置されてきていることになり、これ自体が信じ難いことである。  【2015.11】


    当方は自転車メカの専門家ではないが、ドロップハンドルのブレーキレバーに関しては実感として何かおかしいと感じ続けている。  
   
 1  悩ましいドロップハンドルとブレーキレバーの関係   
     
 @  セーフティレバーが有用となる事情   
     
    かつての工夫であるセーフティレバーについては、誰が見てもドロップハンドルのブレーキレバーは酷く使いにくい代物であるとの認識に立って、本質的な問題解決は脇に置いて利用者の現実の不満を和らげるための苦肉の策であったと思われる。こういった性格のものとして受け止めているが、このレバーはそのL型の形態に由来してハンドルのフラット部及び肩部でのブレーキ操作が自然にできるため、実に有用は補助具−と言うよりも、出来の悪いブレーキレバーに取って代わる信頼のブレーキレバーと化した。デザイン的にも既存のレバーと一体感があって、違和感がない。     
     
 A  ドロップハンドルとブレーキレバーの最悪の相性    
     
    ドロップハンドルは言うまでもなく、状況により、あるいは手の平の負担を緩和するために、いろいろな箇所を握ることができる便利さがあって、現在まで生き延びていることは明らかである。

 しかし、ブレーキレバーとの相性は最悪で、かつて中学生の通学におけるドロップハンドル車の使用は危険であるという理由でふつうは禁止されていたが、現在でも全く状況は変わっていないようで、これは全く正しい評価に基づく実に賢明な対応である。

 通常位置のブレーキレバーはフラット部で使えないのは仕方がないとしても、定位置たるブラケット部で最も使いにくく、、下ハンドル部ではまだましであるが、だからといって常に前のめりの姿勢に耐えるなどばかげている。本来的には、使用頻度の高いブラケット部を持ったときにレバーを自然に握ることができることが最小限の要件であるはずである

 ところが、ブッラケット部を持った時に、レバーは何とブラケットの軸方向に対して90度に近い方向を向いているのである。店舗で多数のドロップハンドルのブラケット部の握りで確認してみると、総じて古い時代のものよりわずかに改善されているものの、レバーの握りは相変わらず不快で、これだけでストレスが貯まってしまう。たまに形状の違い、取り付け角度、設定リーリ等に由来するものなのか幾らかレバーを握り易いものも見られるものの、こうした不快な握りを強要する機構自体が人間工学的に極めて合理性を欠いていると言わざるを得ない。

 この信じ難い劣悪な使用感はモノづくりの精神からすれば恥ずかしいほどのレベルであり、通常の工業製品のデザインとしてあり得ない不具合に等しい出来である。 
 
     
 B  対症療法の例   
     
    セーフティレバーは長らく姿を消していたが、要望に応えてまた復活したようである。一方、フラット部にヒゲのような形態の補助レバーを取り付けたドロップハンドルのツーリング車もしばしば見かける。デザイン的にはいかにも後付け的で、似たブレーキレバーが4つもあってやや滑稽な印象がなくもないが、普遍的、宿命的なブレーキの問題に対処するためのやむを得ない対症療法と理解され、現状では仕方がない。  
     
   ドロップハンドルとブレーキレバーの根源的な問題   
     
   ドロップハンドルはブレーキなしの固定ギアでトラックを下ハンドル専門で突っ走るには適合した形態と思われるが、中途半端なブレーキレバーを一つ付けて公道を走るには全くふさわしくない代物であると思われる。なぜなら、公道を安全走行するための基本的な機能としてのブレーキの使い勝手がひどく犠牲になっているからである。

 補助ブレーキを後付けすることができるとしても、主たるブレーキが機能不全では本末転倒である。なぜ、レバーをふつうに握りやすいものとすることができないのであろうか。変速機に複雑な改良を施したり、フレームに新素材を導入したりと技術力をアピールするのに熱心であったことは感じるが、ブレーキに関してはシステムの進化はあっても本来の使いやすさの観点が全くのお留守になっているとしか思えない。

 沿革的には汎用性のあるドロップハンドルの形態の有用性が認知されてきたものの、これと一体となった使いやすいブレーキレバーのデザインを怠ってきたということになる。

 しかし、少なくとも補助レバーは間違いなくふつうに使えるから、本気で全体を再デザインすることで、ときに補助レバーが主役の座を奪うことなってしまうといった間抜けな状況からは脱皮できるはずである。 現状を見るに、ドロップハンドルの基本的な形態を前提として、欲張ってブラケット部と下ハンドル部の両方に何とか適応したいと考えてきたために、定位置たるブラケット部での使用感が大きく損なわれるという悲しい結果を招いてることがよくわかる。

 もし、どうしても対応できないということであれば、補助ブレーキなしのドロップハンドル車の公道走行は禁止するのが筋である。製造者・販売者には、公道用のドロップハンドルにはデザイン、機能の両面で優れた補助ブレーキを付加するか(必要ならいくつでも)、別の形態のハンドルに切り替えるかいずれかの対応を願うしかない。

 メーカー、販売者は長きにわたって格好第一、安全第二で特に若者に対してドロップハンドル車の販売拡大に努め、利益を上げ続けてきたのは事実であり、改めて変わらぬ問題を抱えている現状を真摯に見つめて必要な見直しをすべきであろう。