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続々・樹の散歩道
  チャトゲコナジラミの学習


 チャトゲコナジラミヒサカキの葉裏ではふつうに見られるカメムシ目コナジラミ科の変わり者の昆虫(Aleurocanthus camelliae)で、この素性がわかったことをもって安心してしまって、既に関心が薄らいでいたが、カメムシ目には奇妙な昆虫が多数見られることを追って知り、改めて本種について学習してみることにした。すると、そもそも本種の名前の「チャトゲ」「茶」は色を意味するものではなく、茶畑のチャノキの「茶」らしいことがわかってきた。さらに、本種は近年に中国から侵入した害虫として、茶畑で被害が生じていることがわかってきた。それまでは気楽に虫の観察をしていたが、国内での茶被害の拡大を背景として、国や地方の研究機関、行政が本種の防除のための情報提供に努めていることもわかってきた。 【2020.1】 


 被害のないふつうのヒサカキの様子  
 
 ヒサカキ科(モッコク科)ヒサカキ属の常緑低木〜小高木。(Eurya japonica )

 ヒサカキは特に目立つこともないありふれた存在であるが、花の時期は特有のくさい臭いを放出するため、毒ガスの木の名を与えてもよいほどである。それでも生垣として多用されている。

 また、サカキが得にくい地域では神前の玉串としてサカキの代用として利用されている。

 果実を豊かにつけたヒサカキの様子  
 
 
              ヒサカキの葉           ヒサカキの白覆輪の品種
   
            ヒサカキの雄花
 雄花では雌しべが退化していて、雄しべは12〜15個あるとされる。
          ヒサカキの雌花
 雌花では雄しべが退化していて、雌しべの花柱は深く3裂している。 
 
 
 ヒサカキの葉裏に取り付いたチャトゲコナジラミの様子  
     
   コナジラミ類としては多くの種類が知られているが、特にオンシツコナジラミタバココナジラミは従前から各種の野菜に被害を及ぼしている模様である。コナジラミは幼虫、成虫とも寄主植物の葉を吸汁して損ない、ウィルス病を媒介するほか、排出する甘露がすす病を招くことがあることが知られている。   
     
       多数のチャトゲコナジラミの幼虫が取り付いたヒサカキの葉の裏の惨状
 これだけのチャトゲコナジラミに吸汁されたら、たまったものではない。本種は他のカメムシ目の昆虫と同様に口針を師部に上手に刺し入れて吸汁するとされる。
 
              チャトゲコナジラミの卵、幼虫(蛹)、成虫の様子
 淡黄色の微小な米粒型のものが(長径0.2ミリほど)で、黒色の楕円形で背面の多数のトゲの先端からしずく状の液体を出しているのが幼虫(体長0.2〜1.3ミリほど。羽化直前であればということになるが、区別は不能。)、斑紋のある翅を持ったものが成虫(体長1.1〜1.3ミリほど)である。
 
 
                 チャトゲコナジラミの初齢幼虫
 コナジラミの幼虫は葉裏にピタッと貼り付いて吸汁している姿のイメージしかないが、本種の初齢幼虫はチョロチョロとよく動き回り、さらに奇妙なことに2対の淡黄色の長い毛が見られる。
 
 
      初齢幼虫が脱皮している風景か?
 また同じような形態の2齢幼虫が登場しているように見えるのであるが・・・。
   チャトゲコナジラミの初齢幼虫の腹面
 脚をばたつかせるため、ブレた写真となっているが、昆虫らしい6本の脚を確認した。
 
 
 
        チャトゲコナジラミの幼虫
 研究機関の記述では、本種の幼虫は肛門から甘露を排出するとしているが、どこに肛門があるのかわからない。一方、多数のトゲ(刺毛)の先端から水滴状に液体を出すが、これも甘露ではないのか? 衛生上の問題があってなめていないため、よくわからない。
     チャトゲコナジラミ幼虫の管状孔
 赤矢印の部分を管状孔と呼んでいて、孔の奥に複雑な組織があるらしい。 
   
 
     脱皮殻の一部が付着した幼虫
 チャトゲコナジラミの幼虫には、しばしば前回の脱皮殻の破片が付着したままとなっている。周辺の白い部分はロウ物質とされる。
       成虫が羽化した蛹の殻
 蛹から成虫が羽化する際は、殻の背を縦に割って登場する。寄生バチが羽化・脱出した場合のもの(後出)では、ガリガリかじって丸い孔を開ける。
   
    チャトゲコナジラミの幼虫の腹面
 葉から剥がしてひっくり返した状態で、写真ではわかりにくいが、口吻らしきもの(赤矢印)を確認した。口針は切れて脱落したのかもしれない。 
  チャノキで確認したチャトゲコナジラミの幼虫
 チャノキ(やぶきた種)が多数植栽された箇所で葉裏を一生懸命にチェックしたが、チャトゲコナジラミの幼虫はわずかしか確認できなかった。 
   
 別項で、同じくカメムシ目のヤツデキジラミ、フカヤカタカイガラムシ、アオキコナジラミ等の極めて細くて長い口針を確認したが、チャトゲコナジラミでも左の写真ではその口針(赤矢印)が確認できた。

 動画は割愛するが、左写真の口針はピクピクと動いていた。     
     チャトゲコナジラミの腹面の口針   
   
 【参考比較用: ミカントゲコナジラミ】  
        ミカントゲコナジラミの幼虫 
 ミカントゲコナジラミはチャトゲコナジラミによく似た近縁種とされるが、柑橘類の葉裏でわずかに確認できた。
      ミカントゲコナジラミの幼虫から
     寄生バチが脱出した跡

 写真左側に丸い孔が見られるから、明らかに幼虫を乗っ取った寄生バチが羽化・脱出した痕跡である。 
 
 
   チャトゲコナジラミの寄主植物は、チャノキ、ヤブツバキ、サザンカ、サカキ、ヒサカキ、シキミ、サンショウなどが知られているのに対し、ミカントゲコナジラミはミカン科、バラ科、バンレイシ科カキノキ科、ブドウ科、アケビ科植物を寄主植物とするという。

 なお、ミカントゲコナジラミ Aleurocanthus spiniferus は明治中期に南方から日本に侵入したとされれ、これまではチャトゲコナジラミと同一種とされてきたが、チャトゲコナジラミは追って2011年になって新種記載された経過があるrという。 
 
     
    (ヒサカキの葉裏のチャトゲコナジラミの成虫)  
                    チャトゲコナジラミの成虫 1
 粉状のワックスを全身にまとう。複眼は赤色、吸汁のための口針を持つ。前翅には不明瞭な白斑が9 か所みられ、近縁種のミカントゲコナジラミのもの(7 か所)と区別される。
 
                  チャトゲコナジラミの成虫 2
 
                   チャトゲコナジラミの成虫 3
 赤い複眼が印象的で、触角と口吻のバランスも良く、なかなか精悍な面構えである。口針は口吻の先にわずかに露出している。