一般的に木々の樹皮は年数を重ねるにつれて次第に表面の質感が粗くなり、さらに様々な形態で割れが生じたり、剥がれ落ちたりするなど、外観が変化する樹種が多い。もちろん、ブナのように大径木となっても樹皮が平滑なままのものもや、ヤブツバキのように樹の太さに係わらす表面の微細な縮緬模様を維持するものなどもあるが、樹皮に変化の見られる樹種にあっては、目の届く範囲は概ね均質な印象である。しかし、まれに樹幹の下部が長い年数を経過したように粗くなっているにもかかわらず、上を見上げるとツルッとした若木のような樹皮を持った樹が存在し、まるで下方と上方にかなりの時間差があるかのように見える奇妙な変わり者が存在する。【2012.6】 |
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@ ドロノキ |
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A ギンドロ(ウラジロハコヤナギ) |
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B ヤマナラシ |
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ヤマナラシの下部 |
ヤマナラシの上部 |
ヤマナラシの葉 |
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C チョウセンヤマナラシ |
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チョウセンヤマナラシの下部 |
チョウセンヤマナラシの上部 |
チョウセンヤマナラシの葉 |
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D ヨーロッパシラカンバ |
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ヨーロッパシラカンバの下部 |
ヨーロッパシラカンバの上部
枝先は写真のように垂れ下がる。 |
ヨーロッパシラカンバの葉 |
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@〜Cは、ヤナギ科ヤマナラシ属(Populus 属)に分類されている樹木たちである。セイヨハコヤナギや改良ポプラとは雰囲気が異なっていて、成木の樹皮を見ると、下部を見れば暗色でゴツゴツと粗く割れているのに対して、見上げれば、中央以上の樹皮は面白いことにツルッとした肌にしばしば特徴的な菱形の皮目が点在している。 |
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Dだけはカバノキ科の樹木で、ヨーロッパではごく普通に分布するヨーロッパシラカンバ Betula pendula(シダレカンバ、ペンデュラカンバ、オウシュウシラカンバとも。英語名はシルバーバーチ Silver birch 。)である。
種小名のペンデュラは、「下垂した」の意で、本樹種の枝先が垂れる特徴をとらえたものである。
日本で見られるシラカンバ Betula platyphylla var. japonica よりもごつい印象で、特に下部の樹皮は深く粗く割れ、しかも非常に硬くて、その質感はまるで溶岩で覆われているかのような印象である。
(右写真はヨーロッパシラカンバの樹幹最下部の樹皮) |
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こうした個性があると、字数が制限される図鑑の記述として、これだけを丁寧に扱うことは困難なはずで、やはり上下の違いの様子まで詳しく記述されてはいない。一般には「若木では・・・成木では・・・」として簡便に表現されている。
さて、次に紹介するものは、上記とは少々異なっている。 |
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ヤチダモ |
タニガワハンノキ 1 |
ヤチハンノキ |
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アカマツ |
ミズナラ |
セイヨウトチノキ |
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上の写真はいずれも特定の個体を増殖する必要性があって接ぎ木された樹木で、接ぎ木部分がはっきり確認できる。果樹や花木であれば接ぎ木で増殖される場合が多いから、同様の風景が確認されるかも知れない。
ちなみに、上のアカマツについては、台木として強健とされるクロマツが使われているため、上がアカマツ、下がクロマツといった面白い状態となっている。穂木のアカマツ自身は、そんなことに全く気付かないまま、いつのまにか年数が経過しているのかも知れない。
また、上のセイヨウトチノキでは、台木として日本のトチノキが使用されている。実生のセイヨウトチノキは国内では育ちにくいためこうしているとのことである。赤い花がきれいなためにしばしば街路樹としても利用されているベニバナトチノキ(ヨーロッパ産のセイヨウトチノキと北米産のアカバナトチノキの種間雑種)でも、これが種間雑種であることも加わって、同様にトチノキを台木としている模様である。 (接ぎ木の話はこちらを参照) |
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<補説> |
接ぎ木に際して、台木と穂木の間の言わば相性の良し悪し(「接ぎ木親和性」の良否)が見られることが、古くから知られている。
実用上の接ぎ木では、台木の選定に当たって、穂木と同じ樹種とする方法(台木を共台(ともだい)と呼ぶ。)のほか、経験則で穂木と異なる樹種の組み合わせによって、何らかのメリット(果樹で多くの収量が得られる等)あるいは高い親和性が得られることがわかっている場合は、その特定の組み合わせが定型化している場合がある。結果として、適正に活着し、接ぎ木部が滑らかに癒合し、さらにその後の成長に問題がなく、期待した効果が発揮されれば御の字である。
しかし、時に、活着しても台木が穂木(接ぎ穂)よりも著しく肥大したり(「台勝ち」と呼んでいる。)、穂木(接ぎ穂)が台木よりも著しく肥大する(「台負け」と呼んでいる。)ことがある。不格好であるため、すぐにわかる。
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