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続々・樹の散歩道
  何とも食べにくいアオギリの実を
  かつては誰が食べたのか


 アオギリの樹は都内の街路樹として広く利用されているほか、公園樹としてもしばしば見かけるお馴染みの樹である。しかし、一般に街路樹として管理されている樹木は一定の枝下高を確保することが安全等の観点から必要と考えられていることに加えて、全体に強く剪定されるため結実が少なく、仮に運よく結実したとしてもても必ずしも花や果実を手に取ってじっくり観察できる高さではないことが多い。あるとき、たまたま歩道橋を歩いていると、アオギリの樹幹が隣接していて、果実を十分に採取できる条件となっていた。この種子が食べられることは以前から承知はしていたが、あまりにも小さい種子で口にする気にもならないままになっていた。今回はよい機会と考え、初めて試食してみることとした。さらにこの翌年、花を観察可能な条件にある特定の街路樹を確認できたことから、遅ればせながら花の様子と果実の成熟過程についても観察することができた。 【2020.10】 


 アオギリのあらまし  
     
 
         アオギリの葉の様子
 アオイ科(アオギリ科)アオギリ属の落葉高木。     Firmaiana simplexFirmiana platanifolia
 国内では本州(伊豆半島・紀伊半島)・四国(愛媛県・高知県)・九州(大隅半島)・琉球(各島)に産し、中国、台湾、インドシナにも分布。葉は掌状に3~5裂する。アオギリの名は、桐に似た葉と樹皮の色による。
      アオギリの街路樹の例(都内) 
 都内でもしばしば街路樹として利用されているのを見る。標識の視認性確保等の事情から、一般に低い枝がないため、残念ながら観察しにくいことが多い。
 漢字名の梧桐は中国名をもらったもの。 
   
       アオギリの樹皮(中径木)
 若い枝や中径木までの樹皮は平滑・緑色で、いかにもアオギリらしい。
       アオギリの樹皮(大径木)
 太い樹になると、樹皮は灰白色となる。
   
   
      アオギリの葉芽の芽吹き(新葉)
 ふつうはこの写真のように赤い新葉を目にする。 
      アオギリの葉芽の芽吹き(新葉)
 ときに、淡緑色のものも目にする。 
   
        アオギリの巨大な花序
 アオギリの円錐花序は巨大で、雄花と雌花が混生している(雌雄同株)。咲き始めは雄花しか見ない。
 蕾の段階では雄花と雌花は区別できない。
      アオギリの雌花(左)と雄花(右)
 花弁のように見えるのは萼裂片で、厚手のテープ状(長楕円状披針形)で反り返る。開花初期は萼裂片の基部・内側は淡黄色で、その後に赤くなる。赤は受粉終了のサインであろうか? 観察した樹では大きなハナバチを多数見た。
 
 
     
 アオギリの雄花の蕾 1
 蕾の中の様子で、雄しべがキノコのように見える。この形態は雄しべの花糸が合着したもの(蕊体)とされる。
  アオギリの雄花の蕾 2
 合着した花糸は筒状との見解があるが、空洞ではなかった。先端の葯の形態が奇妙である。
   アオギリの雄花の蕾 3(取り出した雄しべ)
 葯は球体の表面に行儀よく配列していて、まるでバレーボールの革張りの模様のようである。葯は15個あるとされる(中国植物誌)。写真ではまだ花粉を出していないが、蕾の中で既に花粉を放出している姿をふつうに見かけた。 
 
 
   アオギリの雄花 1
 開花初期の雄花。 
  アオギリの雄花 2
 萼裂片が赤くなっている。
          アオギリの雄花 3
 球体表面の葯が花粉を放出している状態である。
 
 
 
      アオギリの雄花 4 
 雄花の萼裂片の様子である。
      アオギリの雄花 5 
 雄花の基部の断面で、萼裂片の基部・内側の毛でゆるく閉じられた空間に蜜があるらしい。花を切ると粘液が出る。
  アオギリの雄花 6
 役目を終えて落下していた雄花で、萼裂片の基部・内側は例外なく赤い。
 
 
   開花初期は花序のあちこちで一部の雄花が先行して咲き、雌花がまだ全く見られない状態で、一日花と言われる雄花はパラパラと落ち始める。   
     
     
    アオギリの雌花の蕾 1 
 伸張前の短い蕾の中の様子である。子房を取り囲んだ葯は退化していて、花粉を出さない。
  アオギリの雌花の蕾 2
 蕾の中で蕊体が伸長するとともに、子房が次第に膨らんできている。 
    アオギリの雌花の蕾 3 
 蕾から取りだした雌しべの様子である。子房と花柱は毛むくじゃらである。
 
 
      アオギリの雌花の蕾 4 
 これも蕾内の雌しべの柱頭の様子であるが、淡いピンク色である。浅く5裂している。
   アオギリの雌花 1 
 開花初期の雌花。 
 アオギリの雌花 2
 時間の経過で、萼裂片の基部・内側が赤くなる。 
 
 
    アオギリの雌花 1
 基部には雄花と同様に蜜が溜まるのであろう空間がある。
       アオギリの雌花 2 
 これも蕾内の雌しべの柱頭の様子である。
 柱頭の色合いの違いの意味は不明で、単なる個体差なのかも知れない。
      アオギリの雌花 3
 雌しべの子房の断面で、小さな胚珠が確認できる。子房は5室。 
 
 
   アオギリの若い果実 1 
 若い果実(袋状の蒴果)で、萎びた萼裂片がまだ下方に付いている。
    アオギリの若い果実 2
 5個の心皮の先がやや開いてきた。
   アオギリの若い果実 3
  蒴果はさらに成長してきた。
 
 
   
         アオギリの若い果実 4
 裂開間近の果実の様子である。 
         アオギリの若い果実 5
 5個の心皮は種子が成熟する前の緑色の状態で裂開する。複数の種子が心皮のふちについている。
 
     
  アオギリの裂開した心皮 1 
 1個の心皮の様子で、種子は1~5個つく。
   アオギリの裂開した心皮 2
 心皮のふちについた若い種子の様子。
    アオギリの裂開した蒴果
 種子が成熟した状態である。
 
 
 
            アオギリの種子
 成熟種子の外種皮には皺が生じている。種子の直径は4~6ミリ。
    アオギリの種子の胚乳(左右)と胚(中央) 
 2枚の子葉は種子の形状と同大である。(この写真では、2枚の子葉を少しずらして撮影している。)
 
 
 ナマの種子の試食  
 
   とりあえずは数粒をナマのままで試食してみることにした。種子が小さいくせに種皮が案外丈夫で、しかもやや柔軟性もあって爪で割ろうとしてもうまく割れないのである。結局は刃物で半割にした上で、針で突いて淡黄色の胚乳部分を取り出すという、何とも面倒な作業を強いられることになった。かつて、小さなキタゴヨウやハイマツのタネを試食したが、その際の肩こりをもよおすような苦痛を思い出してしまった。

  味はマカデミアナッツにははるか遠く及ばないが、シイの実とはいい勝負で、いわゆる木の実の味である。なお、ナマの種子では、薄皮の一部が破れてしばしばまとわりつくことがあった。

 アオギリは暖地に自生がみられるというが、一般的にはそれほど多くない植栽樹を目にするのみである。これが救荒植物でもあったというが、普遍性があったとはとても思えない。代用コーヒーとした歴史があるともいうが、どんぐりコーヒーと同じで、コーヒーが入手困難な状況下でのごく一部における特殊な利用と考えられ、とんでもない手間が掛かることが明らかであることから、実験は見合わせである。
 
     
 炒った種子の試食   
 
    アオギリの種子のむき実(炒って取り出したもの)           アオギリの炒った種子
 
     
   アオギリ種子の一般的な食べ方は、調べた範囲では炒って食べるというもので、木の実はローストすることでより香ばしく、美味しくなるという一般的な経験則に沿っている。また、一部の書籍情報では、炒ることで皮が剥きやすくなるように受け止められる表現(後出・樹木大図説)も見られた。

 そこで、念のために炒ってみて、このやっかいな種皮の処理に要する労力が幾らかでも軽減される効果がもたらされるのかを確認するとともにその味を確認することにした。

 炒った時間は適当であるが、種皮にパリパリ感が生じて、爪で種皮を割って何とか無傷の胚乳を取り出すことで来た。しかし、簡単に種皮を取り除くことができるわけでもなく、手間が掛かることには変わりがない。しかも、薄皮の一部がまとわりつく点も変わりがなかった。味は少々向上したような気もする。ということで、皮むきの苦痛を乗り越えるパワーが生まれるきっかけにはならなかった。

 個人的な感想としては、食用としてはアオギリ種子は採取効率が非常に低く、決して普遍性のある食用種子であったとは思われない。結論的にはこれよりもスダジイやムクノキの実を食べる方が賢明である。 
 
     
<参考: アオギリ種子の食用としての情報>   
     
 
 アオギリの種子は救荒食品の一つで成分は蛋白質20.6%、脂肪34.3%、含水炭素23.75%、繊維質1.79%、灰分5.06%あり、油をしぼるが皮のまま炒るときは破れ、中の薄皮も簡単にはがれる、塩炒りするか飯の中にたきこんでも食用とされる。【樹木大図説】2-1175 
 梧桐(アオギリ)の種子は、第二次世界大戦中にコーヒー豆の代用とされたが、古くは炒って食べていたといわれる。
 【世界の植物】
 アオギリの種子を炒って粉とし、コーヒーの代用とした。室町時代には菓子としていた。(尺素往来)【原色日本植物図鑑】 
 アオギリの木材は淡色、比較的軽軟で、狂いやすくまた耐久性が低いため特別の用途はない。樹皮は強靱で縄とし、またその粘性物質を和紙糊料とする。種子はタンパク質や脂肪に富み、炒って食べるほか、中国で腹痛、瀉下に用いる。【世界有用植物事典】 
 梧桐は庭園の鑑賞木として栽培される。木材は軽軟で木箱や楽器を作る良材である。種子は炒って食べたり搾油できる。油は不乾性油である。茎、葉、花、果実、種子は薬用となり、清熱解毒の効果がある。樹皮の繊維は純白で製紙、編縄に使用できる。木材の削片から粘液が出て、刨花、潤発という。【中国植物誌】 
 
     
 アオギリの芽生えの様子   
     
 
   アオギリの芽生え 1
 種皮を先端に付けてお辞儀をした状態で子葉を見せる。 
    アオギリの芽生え 2
 子葉に付着した白いものは胚乳の残骸である。
    アオギリの芽生え 3
 2枚の子葉は大きく成長し、さらに小さな本葉が出始めている。
 
     
 
  アオギリの芽生え 4
 最初の本葉は掌状ではなく卵形である。 
    アオギリの芽生え 5
 とりあえず3裂した葉を出している。
    アオギリの芽生え 6
 根を掘り出した状態である。5裂の葉が出るまでには、しばらくかかりそうである。