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植物の種子の胚乳や子葉には多かれ少なかれ油脂成分が含まれているものが少なくないから、単に燈用として利用できるか否かという観点からいえば、多くのものが可能と思われるが、歴史的には量的な確保のし易さや、搾油のし易さ等の観点からは、対象が
“絞られていた” ものと考えられる。 |
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木の実の油を燈用に利用した樹木の例(燈用植物) |
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@ アブラチャン
クスノキ科クロモジ属
種子には多量の油を含み燈火用に使用されたほか、樹皮や枝葉にも精油を含み、たいまつにも使用されたという。
名称の「チャン」は瀝青(レキセイ:ピッチ)を意味するとされるが、疑問がある。 |
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割れはじめた果実(液果) |
アブラチャンの種子と断面 |
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A イヌガヤ(雌雄異株)
イヌガヤ科イヌガヤ属
油はイヌガヤ油の名があり、不凍性で、冬期の神事に際しての燈明用として重宝したという。 |
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イヌガヤの種子 |
外種皮を剥がした種子 |
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B ハイイヌガヤ(雌雄異株)
イヌガヤ科イヌガヤ属
イヌガヤと同様に、燈明用として、地域により利用されたという。
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ハイイヌガヤの種子 |
外種皮を剥がした種子 |
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C エゴノキ
エゴノキ科エゴノキ属
エゴノキの種子油をエゴ油とかズサ油と呼び、燈油として使ったとされる。
なお、エゴノキの種子はヤマガラが大好きで、種皮を割って胚乳部分を食べる一方で、貯食行動があるため、種子散布に貢献している。 |
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果皮が剥がれ始めた果実(刮ハ) |
エゴノキの種子 |
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D アブラギリ 中国・台湾原産?
トウダイグサ科アブラギリ属
種子から得られる油は桐油として燈油を含め広く利用された。油紙はこれを塗ったもので、和傘にも塗られた。 |
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アブラギリの果実(堅果) |
果実内の種子の様子 |
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E シナアブラギリ 中国原産
トウダイグサ科アブラギリ属
種子から得られる油は桐油として燈油を含め広く利用された。優良な乾性油で、現在でも中国から輸入され、塗料など広汎に利用されている。 |
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シナアブラギリの果実(堅果) |
種子と断面 |
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F シラキ
トウダイグサ科シラキ属
種子から油を搾り、食用油や燈油にしたという。種子油にはシラキ油の名がある。 |
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シラキの果実(刮ハ) |
裂開して種子を見せた果実 |
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G シロダモ
クスノキ科シロダモ属(雌雄異株)
開花時期と果実が熟す時期が重なるため、奇妙な風景を見せる。
種子から採れる油脂はつづ蝋としてろうそくに、つづ油として灯用に利用されたという。 |
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シロダモの若い果実(液果) |
シロダモの熟果と雌花 |
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H ナンキンハゼ 中国原産
トウダイグサ科シラキ属
果実の種子は3個見られ、白い蝋質の仮種皮に包まれる。
かつては種子から蝋や油を採取するために栽培された。採蝋のあとの二番絞りのものが燈油に用いられたという。 |
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ナンキンハゼの若い果実(刮ハ) |
裂開して種子を見せた果実 |
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I オリーブ 外来種
モクセイ科オリーブ属
ここで登場した中では異質な存在で、上質のオリーブ油は種子ではなく果肉(中果皮)から得られる。ヨーロッパでは古くは二番搾り以降の核油を主体とした低質な油が燈用に利用されたという。 |
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オリーブの熟果(核果) |
オリーブの核 |
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種子から燈油を採取した草本類の例(燈用植物) |
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@ エゴマ(荏胡麻)
シソ科シソ属
種子が古くから食用とされたほか、種子油は荏油と呼び、鎌倉時代までは主たる燈油として利用され、また優良な乾性油であることから油紙、和傘等にも利用された。
現在でも食用のほか、木製品用オイルとしても販売されている。 |
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エゴマの若い果序 |
エゴマの種子 |
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A アブラナ(油菜)
アブラナ科アブラナ属
アブラナは弥生時代に、セイヨウアブラナは明治期に移入されたとされる。種子油(菜種油)は江戸時代まで主たる燈油として利用された。 |
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セイヨウアブラナの花 |
セイヨウアブラナの果実 |
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B ワタ(綿)
アオイ科ワタ属
江戸時代には白油の名で販売され、燈油として一定の地位を占めていた。
現在は綿実油の名で呼ばれ、現在でも食用油として利用されている。 |
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裂開したワタの果実(刮ハ) |
和綿の種子 |
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参考資料:燈用植物(深津正、法政大学出版局)ほか |
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⇒その他の種子油、蝋が採取された植物については「木のよもやま話 民具・伝統的日用品」のページを参照 |
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