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サワフタギの様子 |
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開花時のサワフタギ(6月中旬)
ハイノキ科ハイノキ属の落葉低木。 Symplocos coreana |
サワフタギの葉(6月下旬)
葉はとがった粗い鋸歯に特徴がある。 |
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サワフタギの花(5月上旬)
ハイノキ属の花はどれもよく似ているが、長い雄しべが多数あってきれいに見える。 |
サワフタギの青い果実(9月上旬)
青色系の果実は少ないため、印象的である。 |
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サワフタギの新梢の茎に群がるアブラムシ(5月上旬)
ふつうのアブラムシであれば、そのおぞましさに顔をしかめるところであるが、これは鮮やかな橙黄色のアブラムシで、さらに見事な踊り振りについつい見とれてしまった。 |
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サワフタギの新梢で踊るアブラムシの風景 |
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アブラムシが踊る姿を見るのはこれが初めてであった。自分が管理・栽培する植物がアブラムシの餌食となったら腹が立つが、公園等の植栽樹であれば実に冷静に、気楽に観察する(時に楽しむ)ことができる。このアブラムシの名前は不明であるが、鮮やかな美しい橙黄色で、その踊りは見事である。タイミングさえよければなお一層すばらしいマスゲームのようなパフォーマンスを鑑賞できる。次の動画は決して最高の動きをとらえたものではないが、おおよその雰囲気は確認できる。 |
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昆虫図鑑等で調べても、アブラムシは種類が多すぎるためか、サワフタギに取り付くアブラムシの名前は確認できなかった。しかし、キョウチクトウなどのキョウチクトウ科植物に取り付く「キョウチクトウアブラムシ」が知られていて、写真で見る限りその姿形はそっくりであり、ひょっとすると、これと同一又は近縁種なのかも知れない。アリの姿は見られなかった。
注:一般的に、アブラムシの種類ごとに寄主植物がきまっているといわれる。 |
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キョウチクトウアブラムシが踊る風景 |
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そこで、早速身近なところにあるキョウチクトウの様子を見たところ、極く一部であったが、その新梢に、先般のアブラムシと全く同一種に見えるキョウチクトウアブラムシを確認することができた。そして、このアブラムシもうれしいことに一生懸命踊っているのを確認した。アリの姿は全く見られなかった。(5月上旬) |
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キョウチクトウの新梢の茎に群がる
キョウチクトウアブラムシ 1
やはり、細くて柔らかい茎が好みである。 |
キョウチクトウの新梢の茎に群がる
キョウチクトウアブラムシ 2
総じて逆さまのスタイルが好きである。 |
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アブラムシの動きの観察 |
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サワフタギのアブラムシと、キョウチクトウのアブラムシの踊りの質に全く違いはなく、この集団演技の様子を観察した結果、以下の点を確認した。
踊り(ダンス)はシンクロの団体演技とは異なっていて、隣接個体の動きにやや時間差があるようである。このためチューチュートレインダンス(ロールダンス)を連想する面があり、あるいはスポーツ競技の観客のウェーブを思わせるところもある。
さらに、個々のアブラムシの踊りの動きをみると、これは明らかに「尻振りダンス」であることがわかる。その際に、もちろん口針は茎に刺し入れたままで、ほとんどの個体は後ろの2本脚(後脚)が浮くほどに尻を高く突き上げているのは何とも奇妙でユーモラスである。
そして、何よりも驚くべきは、まだ小さな赤ちゃんアブラムシまで、一丁前に成虫と同じ動きを見せていることである。これは一体全体何なのか?
なお、アブラムシが間断的に尻振りダンスをするのは、別に捕食者等の接近がきっかけになっているものではない。寄主となっている樹体のあちこちの離れた集団は、それぞれのタイミングで尻振りをしているからである。 |
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(キョウチクトウアブラムシのプロフィール写真) |
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キョウチクトウアブラムシ 1 |
キョウチクトウアブラムシ 2 |
キョウチクトウアブラムシ 3 |
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キョウチクトウアブラムシ4 |
キョウチクトウアブラムシ 5 |
キョウチクトウアブラムシ 6 (腹面) |
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個々のアブラムシを見ると、体の大きさに対して口器の口針が大きくて立派であることがわかる。「3」の写真は赤ちゃんで、尻の角状管がまだ小さいにもかかわらず、口針は一人前に見える。幼虫として産み落とされて、すぐに親と同じように師管液を吸汁するたくましさが反映しているようである。なお、アブラムシはセミやカメムシと同じ半翅目(カメムシ目)で、ストロー(口針)はよく似ている。 |
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アブラムシの踊りは一体何なのか |
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この件について調べてみるも、アブラムシ類のこうした行動に関する総論的な科学的講釈は目にすることができなかった。こうなると、自由に想像の翼を羽ばたかせることができる。 |
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北朝鮮と同質のマスゲームなのか?
最高権力者による強制で集団演技をしている例がみられるが、アブラムシでグループを先導する力の強い成熟個体のリーダーがいて、これがウェーブの起点になっているとは全く考えられない。 |
A |
クローン集団内の一種のコミュニケーションなのか?
尻振りダンスといえば、ミツバチは花蜜や花粉源を仲間たちに知らせるために、8の字を描く尻振りダンスをして距離と方向を知らせることが知られていて、この行動は「収穫ダンス」と呼ばれている。しかし、吸汁アブラムシはストロー(口針)を茎に差し込んだままでほとんど移動しないから、何らコミュニケーションは要しないと思われるが、ひょっとすると、単為生殖によるクローン集団と理解されているアブラムシ社会内で自分達の存在確認をしているのかも知れないと思いついた。しかし、これも現実的ではない。 |
B |
捕食者に対する威嚇行動なのか?
例えば、重量感溢れるフクラスズメの幼虫は危険を感知すると、体をブルンブルンと揺すり、人でもその突然の動きに腰を抜かすことがあるが、小さなアブラムシが連帯して尻を振ったところで、捕食者を前にしたら屁の突っ張りにもならない。そもそも常時、適当な間隔を置いて踊っているから、これも考えられない。余計なお世話かも知れないが、この動きはむしろ捕食者に対して自らの存在を示すことになってしまっているような気がする。 |
C |
寄生蜂の攻撃に対する防衛行動なのか?
研究報告として、ミカンクロアブラムシで見られる尻振り行動は寄生蜂による産卵目的の攻撃に対する防衛行動であると解し、この尻振り行動によって、寄生蜂の産卵行動がある程度抑制される効果をもたらしていたとするものがある。つまり、尻を振っているために物理的に産卵がしにくくなっているのであろうと解しているものである。
果たしてこの解釈がアブラムシ類一般の尻振りダンスに適用できるのかはわからない。少なくとも、サワフタギのアブラムシでは、攻撃者の存在とは無関係と思われる条件下で、どこの梢端でもダンスが見られたからである。 |
D |
生理的に必要な(有効な)運動なのか?
最後の可能性である。例えば、体を震わせることで吸汁した師管液の体内での吸収・処理が促進されるなど、生理的に有益な効果をもたらす可能性が考えられる。 |
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最終的にはアブラムシに対して聴き取り調査をしなければ結論が得られないが、やはり、Dの可能性を期待したい。 |
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<参考メモ> |
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【日本の鱗翅類】
アブラムシ類など半翅目昆虫は口吻(注:口針)を植物の師管に突き刺して師管液を吸汁し、ショ糖の一部を吸収し、余分な師管液を大量の甘露(honeydew)として排出している。 |
【世界文化生物大図鑑 昆虫T】
キョウチクトウアブラムシ (アブラムシ科)Aphis nerii
無翅型(翅のないタイプ)は体長約2mm。橙黄色で触角、角状管(かくじょうかん)、尾片(びへん)、脚は黒色。触角は6節で体長の約2/3の長さ。角状管は円筒形。(有翅型は省略)
キョウチクトウ、ガガイモ、トウワタなどに寄生。(注:新梢の茎や葉裏に寄生する。) |
【その他】 |
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尻の上方に2本見られる突起は、角状管(かくじょうかん)と呼んでいて、アブラムシに固有の器官で、捕食者などに襲われると、この管の先からフェロモンを出して、仲間に危険を知らせる。 |
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アリと共生関係にあるアブラムシは、アリが大好きな甘露(honeydew)を肛門から排泄する。 |
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尻にある短い尾のようなものを尾片(びへん)と呼んでいる。 |
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アブラムシは単為生殖の期間中はクローンのメスの幼虫を次々と生み続ける。 |
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