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続・樹の散歩道
  ナツメの名前、花、果実 そしてナツメの仲間たち


 あるときナツメの名前の由来を問うクイズに遭遇した。抹茶(薄茶)を入れる茶器(容器)としての棗(ナツメ)はその形が樹木のナツメの果実に似ることからその名があることは承知するものの、ナツメの名前そのものの由来となると、特に心当たりはない。そもそもナツメは中国から渡来したものであり、漢字名はたぶん中国から頂いたそのままであろうことは想像できるが、訓読みの語は国内で発生した呼称を漢名(中国名)に充てたという印象がある。しかし、ナツメの名の由来は考えてもわからない。結局のところ、正解とされるものは「初夏に芽を出すから夏芽」なのだという。このセンスは素直に受け止めにくいが、「芽」が芽生えなのか、芽吹きなのか不分明なため、とりあえずは調べてみることにした。ついでに遅ればせながら初めて乾棗(乾燥果実)と蜜棗(蜜煮果実)を調達してそれぞれ試食してみた。 【2018.11】 


 *ナツメ及びサネブトナツメクロウメモドキ科ナツメ属)の形態の細部情報は主として中国植物誌による。  
    ナツメの葉(開花時期)
 葉は紙質で卵形、卵状楕円形、長さ3~7センチ、頂端は鈍いか円形、まれに鋭尖、小尖頭を持つ。基部はやや不対称、近円形、辺縁円鋸歯状鋸歯がある。中国名「棗」
       ナツメの樹皮
 樹皮は褐色又は灰褐色で、縦に割れる。 
       ナツメの花 1 
 展開途中の様子で、花は黄緑色、両性で5数性、腋生集散花序をなす。がく片は卵状三角形。小さな花弁は倒卵円形、雄しべと等長、個々の花弁は開花途中まで雄しべを包む。
     
       ナツメの花 2
 さじ型の花弁はやがて外反し、雄しべが姿を見せて花粉を出す。雄しべは花粉放出後に外側に倒れる。
 この写真では、雄しべを包んでいた花弁がほぼ離れており、直立した雄しべは花粉を出している。
      ナツメの花 3 
 花盤は厚く、肉質、円形、5裂。子房は花盤内の下部にあり、花盤と合生、2室、各室に1個の胚珠があり、花柱は2半裂。
 この姿を初めて見ると、基部に爪のある小さなぺらぺらしたものが花弁であるとは思えない。 
       ナツメの果実 
 中国では果実(核果)は矩円形または長卵円形で、長さ2-3.5センチ、直径1.5-2センチとされるが、国内では長さ3センチに及ぶものは見ない。栽培種はさらに大きい。成熟時は紅色で、後に紅紫色に変わり、中果皮は肉質で厚くて甘い。  
 
 
 
       開花途中のナツメの花(部分)
 雄しべを包んでいた花弁が開きつつある状態で、葯はまだ花粉を出していない。
      ナツメの花(結実花と非結実花) 
 写真のものは一見すると受粉した花と受粉しなかった花と思えるが、実は当初から自ら結実を調整していたと理解するのが正解かも知れない。
 
     
 
   サネブトナツメの葉(開花時期)
 一般にナツメより葉がやや小さいとされる。果実を見ないと自信を持ってナツメと識別するのは困難である。中国名「酸棗」 
    サネブトナツメの樹皮 
 樹皮の印象はナツメと変わりがない。中国植物誌によれば、サネブトナツメ(酸棗は通常は灌木であるとしているが、国内では高木しか見ないのは奇妙である。
    サネブトナツメの果実 
 果実は明らかにナツメより小さいく、丸っこい。中国植物誌によれば、核果は球形に近いか短矩円形で、径0.7~1.2センチとしている。国内で1センチ未満のものは目にしない。
 
     
 
              ナツメの刺 
 長い刺と短い刺がセットでついている。中国には刺のない「無刺棗」があるほか、多数の栽培品種が存在する。
 国内では、ある薬用植物園で刺のないタイプがナツメとして植栽されている例を見た。
           サネブトナツメの刺 
 同様の刺が見られる。 
   
    ナツメとサネブトナツメの果実の比較
 観察したナツメ果実は楕円形で径22~24ミリ、長さ25~27ミリで、サネブトナツメ果実はほぼ球形で小さく、径12~14ミリ、長さ12~15ミリほどであった。  
    ナツメとサネブトナツメの果実の断面
 ナツメ果実は果肉(中果皮)は厚く、食感、味ともリンゴ風であった。サネブトナツメは落下果実では果肉がぼけていたため食していないが、一般に果肉は薄くて酸味が強いため、食用にならないとされる。 
   
      ナツメとサネブトナツメの核の比較
 サネブトナツメの核はナツメより小さくて丸い。
   中国産乾ナツメ(右は国内のナツメの果実 
 市販されている食用の中国産の乾棗(乾燥ナツメ)は大きく、長さが3~4センチもある。大果の栽培品種である。
   
 
          中国産乾ナツメの核
 乾棗の核は国内で目にするナツメの核と違って、両端が細く尖って長い。植えてみたが発芽しなかった。
          中国産蜜ナツメ
  市販されている中国産の砂糖煮とした「蜜ナツメ」で、タネ抜きタイプである。
   
 生薬としてのナツメ(トゲナシナツメ)の乾果(生薬名:大棗 タイソウ)の薬効は、緩和、強壮、利尿、精神安定作用があるとされ、漢方処方としては甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)などに処方されており、これに対して、サネブトナツメの乾燥種子(生薬名:酸棗仁)の薬効は、鎮痛、健胃作用があり、神経衰弱、睡眠障害などを改善するとされ、漢方処方として酸棗仁湯(さんそうにんとう)などに処方されている。 
      サネブトナツメの種子(仁)
 硬い核の殻(内果皮)の中に小さな扁平の種子(仁)が1つ入っている。
 
 
 ナツメの名前  
 
 複数の図鑑をパラパラと見たところ、誠に残念なことであるが、ナツメの名前は「夏芽」で、例えば「その芽立ちが遅く、初夏に入ってようやく芽を出す特性を以て名付けたのである(新牧野日本植物図鑑)」とする説が優勢で、既に思考が止まっているようである。しかしながら、初夏に芽吹きするという印象はなく、4月には葉がほとんど出そろっている姿を見る。

 そこで、もう少し受け入れやすい説明がないものかと調べてみると、「一説には夏実で、晩夏に実の熟するによるという(樹木大図説)。」とする記述が見られた。確かに、ナツメの呼称として、ナツミ、ナツウメの地域名も存在するから、夏実、夏梅の名が語源である可能性もあり、個人的には「夏梅」に1票を投じたい。(果実は9~10月に赤く熟した姿を見るから、梅よりも遅い時期に青い実をつけた状態をイメージしたものとすれば理解しやすい。)

 なお、一部に果実が茶器の棗(ナツメ)に似るからこの名前があるとする説があると、安易に紹介している例が見られるが、これは全く間抜けな話で、植物のナツメの名前は茶器の棗が創案される以前からあるようであることから、要は逆である。

 せっかくの機会であるため、次にナツメについて少々学習することにした。
 
     
 ナツメの図鑑での説明内容  
 
 以下に、図鑑等をざっと見た上での気づきの点をまとめてみる。  
 
 原産地に関する記述がバラバラとなっている。

 ナツメ(ここではZiziphus jujuba 及びその品種を指す。)は中国からヨーロッパにかけて、長きにわたる栽培の歴史があり、特に中国では3千年以上前から栽培されてきた(日本大百科全書)とされるためか、原産地がはっきりしないなかで、様々な自由な見解が図鑑の記述に反映している。
 中国の図鑑では泰然として自国が原産地としているが、ヨーロッパからアジアに分布(自生)しているとしている場合も多い。 
 国内に渡来したナツメ類に関して、学名と和名の対応が図鑑により異なっている。

 導入種にかかわる基本的な分類、学名、和名がスッキリ整理できていない印象がある。 この際、とりあえずは基本的な整理は原産国の中国の図鑑に頼らざるを得ないと思われる。そもそも国内でナツメ属の樹種に関する広い知見を有し、実際に国内に導入・植栽されたものを適切に同定できる者がいるのかとなると心許ない。 
 頼りにしたい中国の図鑑等でも学名、中国名、中薬名の対応が一部で錯綜している。

 中国でも従来の文献にいろいろな種名の掲載がある模様であり、必ずしも整理し切れていない面が伺える。さらに実際の流通上の中薬名の適用となると、ひょっとすると魑魅魍魎の世界があるのかも知れない。 
 複数品種(変種)のナツメの渡来の経過の真実がはっきりしない。
 従前に渡来した国内の複数品種(変種)のナツメの同定が怪しい面があると思われる。


ナツメ類の核(内果皮に包まれた種子)が6世紀後半の上之宮遺跡(奈良県)から出土している(植物の世界)とされるなど、中国からの渡来の歴史は古いとされるが、複数品種のナツメが渡来した経過の詳細・真実ははっきりしないようである。 
 
 
 ナツメ類の図鑑等での記述例 (個々の図鑑の内容は関心部分のみを抜粋したものである。)  
 Zizyphus の属名は旧名で、現在は Ziziphus を使用している。  
学名 図鑑 抜粋
Ziziphus jujuba var. jujuba 原変種
 
属名Ziziphus はアラビア語~ギリシャ語に由来
種小名 jujuba は
アラビア語より
中国植物誌 中国名:棗落葉小喬木、稀に灌木で樹高は10m余に達する
中国原産で、アジア、ヨーロッパ、米国で栽培されている。
長枝は短枝と無芽小枝(新枝)と比べて光滑で紫紅色又は灰褐色で、長枝には2個の托葉刺があり、長い刺は3センチに達し、太くて直立し、短い刺は下方に湾曲し、長さ4-6ミリ。短枝は短くて太く、老枝から出る。当年生の小枝は緑色で下垂、単生又は2-7個束になって短枝につく。核果は矩円形又は長卵円形で長さ2-3.5センチ直径1.5-2センチ、成熟時は紅色で、後に紅紫色になる。中果皮は肉質で厚く甘い。核の頂端は鋭く尖り、基部は鋭く尖るか鈍い。1個又は2個の種子が入っている。花梗長は2-5ミリ。種子は扁楕円形で、長さ約1センチ、幅8ミリ。花期は5-7月、果期は8-9月。
果実は生食以外に蜜棗、紅棗、薫棗、黒棗、酒棗、牙棗をつくることができ、棗のあん、麺、酒、酢などの食品工業原料となる。また薬用として養胃、健脾、益血、滋補、強身の効があり、種子と根にも薬効があり、種子は心を鎮めることができ、重要薬品のひとつとなっている。
Zizyphus jujuba 
(???)
中薬大辞典  中国名:酸棗
中薬名「酸棗仁(サンソウニン)」の基原は本種の種子(果核を除去したもの)
翻訳書の適用和名:サネブトナツメ
落葉低木又は小高木で、高さ1~3メートル。枝には長さ約2センチのとげ長さ約3ミリの反り曲がったとげがある。核果の径は1~1.4センチ、熟したときは暗赤色で、酸味がある。本植物の根皮(酸棗根皮)、棘刺(刺針)、葉(棘葉)、花(棘刺花)も薬用にされる。乾燥した熟した種子は扁平な円形又は楕円形。
*本文の内容は後出の Ziziphus jujuba var. spinosa であろう。 
Zizyphus jujuba var. jujuba 牧野新日本植物図鑑 和名 ナツメ として掲載。
ヨーロッパ南部、アジア西南部の原産でふつう人家に栽培されている無毛の落葉低木あるいは小高木である。
日本名は「夏芽」でその芽立ちがおそく、初夏に入ってようやく芽を出す特性を以て名付けたのである。漢名は棗。この植物はまたタイソウ(大棗)とも呼ばれ、食用或いは薬用にする。サネブトナツメからできたもので、棘を生ぜず、また果実が大形となった栽培変種である。
Ziziphus jujuba var. jujuba
Ziziphus jujuba var. spinosa) 
(???)
新牧野日本植物図鑑  和名 サネブトナツメとして掲載。  
西アジアから中国北部の乾燥地帯に広く自生する落葉低木で、日本では時折人家に植えまた時に野生化している。節に托葉の変化した鋭いとげがあるが、これの出方の少ないものをナツメという。果実はナツメより小さいことがふつう。果実の小さい割に核が大きいからサネブトという。これはナツメの原種に当たるが、その間の区別は必ずしも明瞭でない。
*中国名「酸棗」(後出)の学名を括弧書きしてシノニムとしているのは独自見解か?
*牧野植物図鑑は版により内容が揺れ動いている。 
Ziziphus jujuba 植物の世界 和名 ナツメ として掲載。
中国中・北部原産とされる落葉高木で、高さ10メートルに達する。長枝には托葉が変形した長さ3センチほどのとげがある。
Zizyphus jujuba  小石川植物園看板  和名 ナツメとして表記。刺あり。 
Ziziphus jujuba 園芸植物大事典 和名 サネブトナツメ(???)として掲載
高木ないし低木。・・・新梢基部にはふつう刺がある。原産地はヨーロッパ南東部からアジア南部とされているが明らかではない。古くから中国中北部で広く栽培されているものは、本種の改良品種である。また、刺のない変種をナツメ(var. inermis )として区別する見解がある。現在中国においては、400品種以上が知られている。
Zizyphus jujuba Mill. 樹木大図説 和名 サネブトナツメ(???)として掲載
一名マルナツメ(本草啓蒙)、スキナツメ(本草和名)、カラナツメ
落葉小喬木又は灌木、高10メートル、径0.3メートル、托葉は刺針と化す。枝に長枝、短枝あり、短枝上に長短2針と3~4個の長約12センチの結実枝を有し、長刺は3センチ、直立し、短枝は鈎状、長6センチ(注:正しくはミリ)、長短2刺は萌芽にも腋生す、結実枝の枝端のみ有毛、小枝は通常数本宛束生す。若枝に針状托葉あるも老木の枝にはこれを欠く。核果は球形、楕円体、長10~30ミリ、種子1個。本来刺の大きいのが棗であるという。
欧州東及び南部、アジア東及び南部の産。日本には享保7年及び12年漢種酸棗渡るという記事あり。現に小石川植物園には当時の樹木が残っている。日本では各地に半野生状に生じており、各地で庭樹として賞用する。
(注:本図鑑ではZizyphus jujuba Lam. を別途イヌナツメとして掲載している。) 
Ziziphus jujuba フローラ 翻訳書の和名:ナツメ として掲載。
英名 chinese date , chinese jujube , common jujube
南ヨーロッパから中国にかけて広く分布する。成長の早い、刺のある落葉高木。
Zizyphus jujuba 世界大百科事典 和名 ナツメ(棗) として掲載。
クロウメモドキ科の落葉高木で、地中海沿岸、中国では古来からの重要果樹。中国原産と推定され高さ10メートルにも達し枝にとげがある。
みつナツメ(蜜棗)は砂糖煮製品。材は堅く、車軸や印材となる。木版印刷の版木の材料ともなり、〈棗本〉とはその書物を指す。日本には野生種がなく、中国から古く渡来したが、果樹としては発展しなかった。
ナツメは薬用にもされ、種子は酸棗仁(さんそうにん)とよばれ、脂肪油、トリテルペノイド、サポニンを含む。鎮静安定、催眠作用があり、他の生薬と配合して心因性神経性の不眠症、健忘症、口渇、循環器系疾患、虚弱体質者の多汗、便秘に用いられる。
Ziziphus jujuba var. inermis 変種

変種名 inermis は刺針のない
中国植物誌 中国名:無刺棗 (棗樹、棗子、紅棗、大棗、大甜棗)
原変種との違いは長枝に皮刺がなく、幼枝に托葉刺がない点である。
産地は原変種とほぼ同じで栽培され、用途も原変種と同じ
花期は5-7月、果期は8-10月。
Ziziphus jujuba var. inermis  中薬大辞典  中国名:棗(刺棗とも) 
中薬名「大棗(タイソウ)」の基原は本種の熟した果実
翻訳書の和名:ナツメ
低木か小高木で、高さ10メートルに達する枝には対になったとげあり、まっすぐ伸びるか鉤状に曲がる。果核は卵形ないし長円形、名が亜1.5~5センチ、成熟時は真紅色で、果肉は甘く、核の両端は鋭く尖っている。本植物の根(棗樹根)、樹皮(棗樹皮)、葉(棗葉)、果核(棗核)も薬用にされる。大棗は加工の違いにより、紅棗と黒棗の区別がある。薬用にされるものは一般に主として紅棗である。
*学名に反して枝にとげがあると淡々と記述している点は違和感がある。  
Ziziphus jujuba var. inermis 中国本草図録 中国名:棗
翻訳書の適用和名:ナツメ
中薬名「大棗(だいそう、たいそう)」は本種の成熟した果実。枝はなめらかでとげなしか又はとげがある。果実は isoquinoline、五環のトリテルペノイド化合物、zizyphus サポニンⅠ、zizyphus サポニンⅡなどを含む。
〔効能〕:脾虚を補い、和胃し、気力を増し、津液を生じ、営衛を調える。
〔応用〕:脾虚による食慾不振、気・血・津液の不足、倦怠無力、営衛の不調和、動悸、ノイローゼ、女性のヒステリー、紫斑病などに用いる。
Ziziphus jujuba var. inermis  中国・百度百科  中国名:無刺棗
(植物形態は中国植物誌をベース) 
Zizyphus jujuba var. inermis 日本薬局方 生薬名タイソウ 大棗ナツメ Zizyphus jujuba var. inermis の果実である。  (注:生薬名は中国名に従ったもの。)
Zizyphus jujuba var. inermis  東京都薬用植物園  和名 ナツメ
生薬名 タイソウ(大棗)
薬用部分 果実

用途 漢方処方用薬:鎮静・強壮(葛根湯
成分 トリテルペン等
刺のないタイプが植栽されている。樹高は6メートルほど。 
Ziziphus jujuba var. inermis 日本の野生植物 和名:ナツメ(棗) *漢字名は中国名より
中国北部原産の落葉高木。日本では古くから栽培し、果実を食用にした。
長枝には托葉から変わった2個のとげがあり、うち1個は直生し、長さ約3センチになる。他の1個は短くて下へ曲がり、鉤形になる。
核果はきわめて短い花柄を持ち、球形ないし長楕円形で、長さ1.5-2.5センチ、熟して暗紅色になる。外果皮(注:正しくは中果皮)は肉質で甘い。
*枝にとげがあると淡々と記述している点は違和感がある。
Ziziphus jujuba var. inermis  新牧野日本植物図鑑  和名 ナツメとして掲載
西アジアから中国北部の原産で、人家で差に栽培されている無毛の落葉低木あるいは小高木である。根がのびた先から時に若い下部が新生する。高さは10メートル位に達し、しばしばとげを持つ。核果は楕円体でなめらか、長さ2センチぐらいであるが大きいものは3センチぐらいになる。初め緑色であるが、後に黄褐色となる。サネブトナツメからできたもので、とげがないかあっても少なく、また果実が大形となった栽培変種である。
日本名は夏芽で、その芽立ちがおそく、初夏に入ってようやく芽を出す特性を以て名付けたのである。
*牧野新日本植物図鑑では Zizyphus jujuba var. jujuba をナツメとしていた。 
Ziziphus jujuba var. inermis APG原色牧野植物大図鑑 和名:ナツメ
西アジアから中国北部の原産。若枝にときにとげがある。和名夏芽(なつめ)は初夏に芽を出すのでいう。
Zizyphus jujuba var. inermis 樹木大図説 和名 ナツメ (ナツウメ、ナツミ、ナツモ、ナシンメ、タイソウ)
刺のないもの。南欧、西アジア、西方アジアの産という。各国に栽植品多く、サネブトナツメの改良品ともいわれる。日本でも農村に栽植している。
日本にあるものには果実が球形と楕円体と2種あり、果皮も赤褐色と淡黄色と2種あり、風味には差異がない。
Ziziphus jujuba var. spinosa 変種

変種名 spinosa は刺多い
中国植物誌 中国名:酸棗 (棘、酸棗樹、角針、硬棗、山棗樹)
本変種は通常灌木で葉はかなり小さく、核果も小さくて球形に近いか短矩円形で、直径は0.7-1.2センチ、中果皮(果肉)は薄くて酸っぱく、核は両端が鈍い。花期は6-7月、果期あ8-9月。中国のほか朝鮮、ロシアに分布。
酸棗の種子(酸棗仁)は薬用となり、心を鎮める効があり、神経衰弱、不眠等の症状を治す。果実は肉薄であるが豊富なビタミンCを含むみ、生食又はジャムを作ることができる。花には芳香があって蜜腺が多く、華北地区の重要な蜜源植物のひとつとなっている。枝には鋭いとげがあり、生垣に利用される。
Ziziphus jujuba var. spinosa 中国本草図録 中国名:酸棗
翻訳書の適用和名:サネブトナツメ
 
中薬名「酸棗仁(さんそうにん)」は本種の果核。樹高1~3メートルの落葉小低木。分岐の基部に1対のとげがあり、1つは直立し、太く硬い、もう1つは下向きに湾曲し、小さい。托葉は針状。核果は多肉質でほぼ球形、熟すると暗赤色になる。果皮は薄く、酸味がある。
果核には jujuboside A・Bなどを含む。
〔効能〕:肝を滋養し、鎮静・止汗作用がある。
〔応用〕:心労による精神不安・不眠、動機・神経過敏、津液不足による口渇、衰弱時の多汗に用いる。 
Ziziphus jujuba var. spinosa  中国・百度百科  中国名・酸棗
落葉灌木又は小喬木で、高さ1-4メートル 核果は小さく、味は酸っぱい。
(中国植物図像庫ベース)
Ziziphus jujuba var. spinosa 日本薬局方 生薬名サンソウニン 酸棗仁サネブトナツメ Zizyphus jujuba var. spinosa の種子である。 (注:生薬名は中国名に従ったもの。)
Ziziphus jujuba var. spinosa  東京都薬用植物園  和名 サネブトナツメ
生薬名 サンソウニン(酸棗仁)
薬用部分 種子
用途 漢方処方用薬:神経強壮・鎮静(酸棗仁湯)
成分 ジュジュボシドA、B、C 等 
刺のあるタイプが植栽されている。樹高は6メートルほど。小粒の果実を確認。
Ziziphus jujuba var. spinosa  小石川植物園看板  和名:サネブトナツメと表記
中国名が酸棗であること、園内植栽樹が享保12(1727)年に中国から輸入されたものであることを紹介している。
★小石川植物園の植栽樹は、台風被害を受けて倒れた状態となっているが、太枝が存命である。倒れ幹は立派な大径木でであり、灌木からはほど遠いことから、少々疑念を持ったが、小さな落下果実を見かけたことから、サネブトナツメと受け止めることとしたい。 
Ziziphus jujuba var. spinosa 日本の野生植物 和名:サネブトナツメ
果肉がやせて核が大きいもので、枝にはとげが多い。核を生薬名「酸棗仁」といい、薬用にする。
Ziziphus jujuba var. spinosa APG原色牧野植物大図鑑 和名:サネブトナツメ
西アジアから中国北部の乾燥地帯の原産。日本へは、享保8年と12年に小石川植物園(当時の幕府薬園)に植えられた。中の核が大きいのでサネブトという。漢名棗(注:正しくは酸棗)。
:「中の核が大きい」とする表現は不適当で、ナツメより果実も核は小さく、果肉が薄い。
Zizyphus jujuba var. spinosa 牧野新日本植物図鑑 和名:サネブトナツメ
ヨーロッパ南部、アジア東部及び南部の乾燥地帯に広く自生する落葉低木で、日本では時折人家に植えまた時には野生化している。若い枝に鋭いとげがあり、この出方の少ないものをナツメという。果実はナツメより小さいことがふつう。果実の小さい割に核が大きいからサネブトという。これはナツメの原種に当たるが、その間の区別は必ずしも明瞭ではない。
新牧野日本植物図鑑ではZizyphus jujuba var. jujuba と同種としている。
Ziziphus jujuba var. spinosa 植物の世界 和名:サネブトナツメ
核果が小形で果肉が薄い変種で、野生に近いものと考えられている。
Ziziphus jujuba cv. Tortuosa 栽培品種  中国植物誌 中国名:龍爪棗(通用名) 
小枝は常にねじ曲がって上に伸び、棘はない。花柄は長く、核果はかなり小さく直径は5ミリ。公園、庭園に植栽され、観賞用とされる。
Ziziphus jububa f. lageniformis 品種 中国植物誌 中国名:還有葫芦棗 (*葫芦は瓢箪の意)
小喬木で、果実は中部以上が細くくびれて瓢箪状を呈する。華北産で北京ほかにわずかな栽培がある。
 
 
  【参考】その他のナツメ属樹種  
   (中国植物誌掲載種)  
 
毛果枣(毛果棗)  Ziziphus attopensis Pierre  中国、ラオス
よじ登り灌木。核果は扁楕円形または扁円球形で長さ1.9-2.2センチ、鬱金色または黄褐色の密な短柔毛に被われる。 
褐果枣(褐果棗)  Ziziphus fungii Merr.   広東、雲南南部・西南部
よじ登り灌木。核果は偏球形で長さ9-14ミリで、深褐色、はじめは錆色の密な絨毛に被われるが、後に脱落する。 
印度枣(印度棗)  Ziziphus incurva Roxb. インクルウァ  中国、チベット、インド、ネパール、ブータン
高さ15mに達する喬木。核果は球形に近いか球状楕円形で、長さ1-1.2センチ、無毛、成熟時紅褐色。 
球枣(球棗)  Ziziphus laui Merr.  広東海南島、ベトナム
よじ登り又は直立の灌木。核果は小さく球形に近く、径4-5ミリ。 
大果枣(大果棗)  Ziziphus mairei Dode  雲南中部から西北部
高さ15mに達する喬木。核果は大きく球形又は倒卵状球形に近く、黄褐色で斑点があり、長さ2.4-3.5センチ。 
滇刺枣(滇刺棗テンシソウ) 
緬棗(中薬大辞典)
Ziziphus mauritiana Lam. マウリティアナ 和名イヌナツメ一名インドナツメ  中国、スリランカ、インド、アフガニスタン、ベトナム、ミャンマー、マレーシア、インドネシア、オーストラリア、アフリカ
常緑喬木又は灌木で高さ15mに達する。核果は矩円形又は球形、長さ1-1.2センチ、橙色又は紅色で、成熟時は黒色となる。
中薬名「緬棗(メンソウ)」の基原は本種の樹皮。常緑小高木で高さ3~6m。小枝には短い柔毛があり、反り返ったとげがある。薬用としては外皮を除去する。消炎、肌を小汁の効能があり、やけどを治す。(中薬大辞典)
イヌナツメの材は淡紅色で重硬、耐朽性がある。大きい樹がないので、小物の器具、建築雑用材、薪などに用いられ、ゴルフバット、銃床、ベッド部材、アラビア帆船の肋材に使われたとの記載がある。イヌナツメの実はシバ神の夜祭にはその神前に捧げられる。(木の大百科) 
山枣(山棗)  Ziziphus montana W. W. Smith モンタナ  四川、雲南、チベット
喬木又は灌木で、高さ14mに達する。核果は球形又は球形に近く黄褐色で長さ2.5-3センチで無毛。 
小果枣(小果棗)  Ziziphus oenoplia (L.) Mill.   雲南、広西、インド、ミャンマー、震度品、スリランカ、マレーシア、インドネシア、オーストラリア
核果は小さく球形又は倒卵状球形、黒色で光沢があり、長さ5-7ミリ。 
毛脉枣(毛脈棗)  Ziziphus pubinervis Rehd.  貴州、広西
喬木又は灌木。核果は球形に近く葉腋に単生し、長さ10-15ミリ。葉の脈又は脈の下部がまばらな短柔毛に被われ、明瞭な網脈がある。 
皱枣(皺棗)  Ziziphus rugosa Lam. ルゴザ  中国(広東、雲南、広西)、スリランカ、インドのシッキム、ミャンマー、ベトナム、ラオス
常緑灌木又は小喬木で高さは9mに達する。核果は倒卵球形又は球形に近く、橙黄色、成熟時は黒色となり、長さ9-12ミリ、毛に被われ、後に次第に脱落する。 
蜀枣(蜀棗)  Ziziphus xiangchengensis Y. L. Chen et P. K. Chou   四川
小喬木又は灌木で高さは2-3m。核果は円球形、黄緑色で径12-15ミリ。(蜀は四川の意) 
 
   
   (園芸植物大事典・木材大百科掲載種)  
 
Zizyphus nummularia   インド、スリランカ、ネパール、中央アジア
刺の多い低木。果実は球形、径約8ミリ。イヌナツメの台木に使われる。 
Zizyphus xylopyrus  インド、スリランカ
樹冠が開張性の大低木又は小高木。果実は球形で灰色のビロード毛を布き、径1.3-2.5センチでほとんど乾質。 
Zizyphus trinervia  インド産
小高木で刺がない。 
Zizyphus oxyphylla  インドの西北地域産で小高木。 
Zizyphus talanai  フィリピン産
木材用の大きな木になる。 
Zizyphus greuioides  パプアニューギニア産 
Zizyphus angustifolius  ニューギニア産 
Zizyphus calophylla  マレー、スマトラ、ボルネオ産のつる性低木で、曲がった刺が多い。 
Zizyphus spina-christi  アジア西部、アフリカ北部
低木~高木で、18mに達する。果実は球形に近く径1.8センチで紅色に熟す。刺があり、生垣用に各地に導入されている。キリストの茨の冠はこの樹で作ったと伝える。 
Zizyphus lotus 
ロツス
ヨーロッパ南部、アフリカ北部
高さ1~2mとなる低木。ギリシャ時代の記録に残るのは本種とされている。 
Zizyphus abyssinica  熱帯アフリカのサバンナに広く分布
高さ8mまでになり、果実は球形で、径約1.5センチ、紅褐色に熟す。 
Zizyphus espinosa  ガーナ、コンゴ産
高さ20mに達する。 
Zizyphus pubescens  ケニアからローデシア、モザンビークに至る東アフリカ産
高さは15m余になる小高木。刺はない。 
Zizyphus mucronata  アフリカ南部産
高さ9mに達する小高木。 
Zizyphus chloroxylon  ジャマイカ産
高さ9~18mの高木で、材はオリーブ色などで強靱、緻密。かつてはコーヒー、砂糖工場の固定枠材、大歯車、ローラーに最良のものとされた。 
Zizyphus mistol  アルゼンチン産
高さ15mに達する高木で、材は鮮紅色ないし紅褐色。 
 
     
4   ナツメの各変種の名前と属性の暫定的な整理   
     
   前項で列挙した個別の情報にこだわると、その錯綜した内容のために訳がわからなくなるため、とりあえずの最大公約数と思われる内容を暫定的に以下に集約するとともに、わかり易くするための和名の改名案を提示したい。
 なお、本当のところは中国に乗り込んでDNAを解析して系統を整理するのが望ましいところである。
 
     
 
学名 中国名 和名改名案 現在の
和名
属性 中薬 日本薬局方
Ziziphus jujuba
(var. jujuba

学名上は原変種であるが、トゲのある栽培種の印象
ナツメ
(トゲナツメ)
ナツメ
(棗)
落葉高木、まれに灌木
刺あり
果実)(薬用木本植物野外鍳別手册)
酸棗仁(種子)(中薬大辞典)→×
*収載なし
(注:次のものと明確に区分されているのか疑問)
Ziziphus jujuba var. inermis
変種名 inermis刺針のない
トゲの少ない栽培種の印象
無刺棗 ナツメ
(トゲナシナツメ)
ナツメ
(棗)
落葉高木、まれに灌木
刺はないかほとんどない
大棗果実)(中国本草図録)
大棗果実)(中薬大辞典)
タイソウ(大棗)本種の果実
Ziziphus jujuba var. spinosa
変種名 spinosa刺多い
学名上の原変種よりもこちらの方が野生の形質を残した原種の印象
酸棗 ヤブナツメ(藪棗)
コナツメ(小棗)
サネブトナツメ
(核太棗)
落葉灌木
刺あり
葉は小さく、核果は球形に近く小さくて中果皮は薄く酸っぱい
果実、核果ともに小さい。
酸棗仁本種の核)(中国本草図録) サンソウニン(酸棗仁)本種の種子
 
 
注1   サネブトナツメは核果が小さい割りに(相対的に)核が大きいからこの名があるとの説明例がみられるが、そもそも呼称として不適当で、外形的な特徴をとらえていないため、わかりにくいものとなっている。なお、一部にサネブトナツメの別名を勝手に「ヤマナツメ」としている例が見られるが、中国では Ziziphus montana を山枣(山棗)としており、混乱を避けるため、ヤマナツメの呼称は避けるべきであろう。
     生薬名 タイソウ(大棗)
 都立薬用植物園におけるナツメ乾果の展示品である。
注2  中薬あるいは生薬として、無刺棗は多分、実態上は区別されていないと推定される。このためか、日本及び中国でも情報の錯綜が見られる。
 例えば、日本薬局方ではZiziphus jujuba var. inermis の果実のみを生薬名「タイソウ(大棗)」として収載しているが、実態上はZiziphus jujuba (var. jujuba) もごちゃ混ぜになっているものと推定される。
 また、日本薬局方ではサネブトナツメ Zizyphus jujuba var. spinosa の種子のみを生薬名「酸棗仁」としているが、ナツメの種子でも同様の効用がある模様で、流通の実態は謎である。
注3  ナツメの刺のない(少ない)タイプは単に選抜されたものと推定され、タラノキにおけるメダラのような存在と解される。 
 
     
   (暫定案: さらなる試案)

 身近なところで植栽されたもので、ナツメ及びサネブトナツメとして樹名板を付されたものを見ても、果たして中国における標準的な系統のものなのか怪しげな場合もあるように感じられる。特に、サネブトナツメ Ziziphus jujuba var. spinosa は中国の図鑑では灌木としているにも関わらず、都内で見るものはそうでもない。図鑑における記述のバラツキを合わせ考えると、国内では変種の認識と同定がキッチリできていない可能性がある。

 よくよく考えてみると、現在見られる複数の変種名自体が統一的な見解があって、それを反映したものでもないようにみえる。したがって、Ziziphus jujuba var. spinosa (ヤブナツメ)をナツメの野生種(原種)として認知し、Ziziphus jujuba (var. jujuba)(ナツメ・トゲナツメ)としてきたもの及び Ziziphus jujuba var. inermis(ナツメ・トゲナシナツメ)としてきたもの、並びに多くの栽培種を合わせて単なる栽培品として理解するのが素直な受け止めなのかも知れない。

 つまり、目にするナツメ類は野生種と栽培種に二大別し、日常生活的な呼称としては、十把一絡げで単に「ナツメ」として呼ぶことで交通整理した方がよいと思われる。その考え方で、学名は以下のように整理した方がわかりやすい。

 Ziziphus jujuba var. spinosa  Ziziphus jujuba 基本種とする!!
 Ziziphus jujuba    → Ziziphus jujuba の栽培品(基本変種としない!!
 Ziziphus jujuba var. inermis  Ziziphus jujuba の刺なし栽培品  
 
     
5   乾ナツメと蜜ナツメを試食する   
     
   先に紹介したように、国内では果実を乾燥した「乾ナツメ(乾棗)」と核を取り除いて砂糖煮とした「蜜ナツメ(蜜棗)」がふつうに販売されている。食品用としては生薬扱いではないから、「強壮用」などとしている例はないが、いずれも店舗で目にしたものは中国産で、その他韓国からの輸入や、わずかながら国産(長野県産、福井県産)の製品がネット販売されているのを確認した。    
     
 
乾燥ナツメ
(乾棗) 
 ナツメの乾燥果実で、砂糖処理なしでベタつき感がないタイプ(種入り)。
 乾燥果肉は暗褐色の湿ったスポンジ状となっている。長さは3~4センチと大きめである。
 表面に湿り気は全くなく艶があり、ほんのり甘い香りがある。砂糖煮した蜜ナツメに較べると、手がベタつかないのはよいが、乾燥して薄くなった果皮が少々口に残るため、食感がややイマイチと感じる人がいるかもしれない。4ミリほどの花柄がしっかりついていて、少々邪魔である。
 製品によっては、表面にしわの多いものが見られるが、味に大差ない。 
蜜ナツメ
(蜜棗) 
  種抜きの干しナツメを砂糖で飴煮したタイプで、プルーンと似た印象で食べやすい。販売されているものはこちらのものがほとんどである。
 
     
6   販売されているナツメ類の苗木の例   
   
 現在では庭に植栽する果樹として、ナツメはマイナーな存在と思われるが、複数の品種らしきものが販売されている。たぶん中国系と思われる大実タイプは恐ろしいほどの高値で、旧来の国内に導入されてきた品種は低価格となっている印象である。 以下は販売されているナツメ苗木の事例である。呼称、講釈は販売品のままである。  
     
 
 ・ ナツメ 無核大金絲棗 (むかくたいきんいと) 4,536円(税込) 種なし 
 ・ ナツメ 新疆大棗(中国品種)  4,320円(税込) 最大果重117g(平均59g) 
 ・ ナツメ 国光棗   4,536円(税込) 最大果94g(平均45~50g)の特大ナツメ 
 ・ ナツメ 一才ナツメ  1,933円(税込) 日本で古くから栽培される小型ナツメ 
 ・ なつめ 日本ナツメ  1,058円 (税込)  
 ・ なつめ 超大実 皇帝ナツメ 4,298円 (税込) 最大果重は50gほど 
 ・ 新疆棗王(しんきょうなつめおう)  7,344 円(税込) 果実は最大で 110g 
 ・ 大実ナツメ スーパージャイアント  3,663円 果重は50~100g 
 ・ インドナツメ  7,538円(税込) Zizyphus mauritiana  
 ・ 鈴なりナツメ 3,950円 (税込) 直径2.5cm の中実・豊産性のナツメ 
 ・ チベットジャンボナツメ 7,200円 (税込) 最大果重110g 
 ・ 中国大棗 5,000円  1果10~25g、長径約5センチ 
 
     
8   参考:クロウメモドキ科の花の特徴   
     
   先にナツメの花に個性的な特徴があることを確認した。つまり、萼片よりはるかに小さい、実に貧相な個々の花弁が対生する雌しべを両側から包み込んでいた点である。花粉運搬者の止まり木の機能は大きな萼片に委ね、花弁は花粉放出前の雄しべを保護することに専念しているかのようである。

 ナツメが属するクロウメモドキ科の植物はあまり身近な存在ではないことから馴染みがないが、かつて見た範囲の花の写真を確認してみると、個々の花弁が雄しべを抱く形態は共通しているようである。
 なお、以下に掲げた種類の花はすべて両性花である。 
 
     
 
 
    ネコノチチの花(ネコノチチ属)
 花弁に包まれた雄しべが、葯の部分だけを除かせて花粉を出している。 花托が蜜で濡れている。
ケケンポナシの花1(ケンポナシ属)
 こちらも花糸が花弁に包まれたままで花粉を出しているが、萼が外側に反り返っている。花托には毛が密生している。 
ケケンポナシの花2(ケンポナシ属) 雄しべは花粉放出後に、花弁に包まれたままで外側に反り返っている。花弁が少しゆるんで花糸が見えている。
       
 
    ケンポナシの花(ケンポナシ属)
 萼はやがてケケンポナシと同様に強く反り返る。花弁少しがゆるんで花糸がわずかに見えている。
  クマヤナギの花(クマヤナギ属)
 花弁に包まれた雄しべが葯だけをのぞかせて花粉を出している。
   イソノキの花( イソノキ属)
 厚手の萼は大きく開くこともなく、狭苦しい中で花弁に包まれた雄しべが葯をのぞかせて花粉を出している。
       
   
    ヨコグラノキの花(ヨコグラノキ属)
 ナツメの花に近い印象である。
 クロウメモドキの果実(クロウメモ
ドキ属)

 残念ながら、花の写真の手持ちがないことが判明した!
 
 
     
   なお、「日本の野生植物」には、クロウメモドキ科の花に関しては以下のように説明されていた。
 「花は両性、まれに雑居性、又は雌雄異株。花弁は小型で、両側から強く内へ巻き、基部は爪になることが多い。ときに花弁のないものがある。雄しべは花弁と対生し、しばしば花弁に抱かれる。」 
 
     
7   参考メモ: ナツメとナツメヤシの比較   
     
   ナツメヤシ(Date palm デーツパームPhoenix Dactylifera)の果実はデーツ(date , dates)の名で呼ばれ、ナツメよりも一般性があって、食品売り場のナッツ・乾果類のコーナーには必ず見られる。世界各地で生産されている模様で、例えばイラン産、米国産等の製品を見かける。

 和名のナツメヤシは、果実がナツメに似ることによるとされる。しかしながら、従前に目にした生のデーツ乾果のデーツともに細長いものが主であった印象があり、少しもナツメに似ていない(乾果と比較しても)ことに違和感を持っていた。そこで、もう少しデーツの製品を探索したところ、米国産のデーツが大粒で、ナツメもビックリの堂々たる大きさの乾果が存在することを知って、違和感は解消した。デーツは栽培の歴史が非常に長く、品種が多数あるようである。

 ナツメヤシの乾果の種子を試しに植えておいたところ、驚くことに次々と芽を出した。乾燥地の種子が強靱なのであろうか。

 なお、ナツメの英語名に Chinese date の一般名があり、軸足はデーツの方にあって、ナツメヤシの和名の場合とは逆にデーツに似ていることが呼称の由来となっている。 
 
     
 
   
        市販デーツの乾果
 米国産は表示はないが、たぶん大粒のマジョール種と思わ、長さは約5センチ。イラン産ピアロム種は長さ3.5~5センチほど。
           デーツの種子
 本来的に強靱なのか、それとも果肉に粘りがあってしっかり保護されているのか、乾果の種子にも関わらす発芽率は良好である。
   
ナツメヤシの芽生え
 芽生えた種子を掘り出したものである。
   ナツメヤシの芽生え      
  とりあえず硬い葉を1枚だけ出す。
     乾果の種子で育ったナツメヤシ
 この時点では、葉にわずかに裂け目があるが、基本的には単葉である。
 
     
 
 
        すくすく育っているナツメヤシ
 2年経過した状態で、単葉はわずかに残すのみで、本来の羽状複葉を多数出している。 
   参考:ナツメヤシのナマの果実
 つくば実験植物園産。ガラス温室で、大きくなりすぎて伐採された個体に由来する。