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続・樹の散歩道 オリーブの花は両性花なのか雌雄同株なのか?
それとも・・・
オリーブの木は都内では公園にしばしば植栽されているほか、街路樹やビル周りの緑化木として並木としている例も目にする。このため色々な形態の紫色の果実を見ることもあって、こうした違いはたぶん品種に由来するのであろうと想像できる。ただし、ほとんど結実を見ない街路樹もあって、これは無慈悲な剪定による可能性があり、あるいは、果実が落ちて路面を汚すのを嫌った措置なのかも知れない。また、開花期には小さな白い花も見られ、何度か写真に収めたことがあるが、たまたま花のピーク時を過ぎた状態の木で、花をよーく見たところ、すべて両性花であると思い込んでいた花の中に、雌しべや子房が確認できないものが少なからず存在するのを確認した。ということは、オリーブの木の花はすべてが両性花なのではなく、かといって雌花と雄花で構成された雌雄同株というわけでもなく、両性花と雄花で構成されているように見えた。そこで、念のために複数の図鑑等で確認してみることにした。 【2017.7】 |
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図鑑等を見て気づいたのであるが、一般的な図鑑ではオリーブの花の構造につい詳しく記述していないのが普通であった。雄しべが2個あることさえ触れていないことが多いのである。こうした中で参考となったのは以下の2つの書籍の記述である。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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@については、受粉できない半端状態の雌花が見られるとの見解である。つまり雄花と雌花に分化する途中にあるとしているが、現在をとらえてその生理的な機能に着目すれば、明らかに両性花と雄花があると表現した方がよいと思われる。 Aについては柱頭が退化した不完全花の存在を指摘している。しかし、現在の状態はオリーブ自身の選択の結果が反映したものであり、それを指して不完全と表現するのは客観性に欠けており、花に対しても失礼である。これを客観的に表現すれば普通の雄花であるから、むしろ素直にそのように表現するのが適当であると思われる。 注:不完全花とは一つの花で、萼・花びら・雄しべ・雌しべのどれかを欠く花を指す語として慣用的に用いられることがあるが、完全花の対語として無理やりつくった印象があり、違和感がある。 ということで、参考にはなったが表現振りには不満が残った。いずれにしても、オリーブは外来種であるから、栽培の長い歴史を有する海外の情報の方が知見の集積が反映しているはずである。そこでウェブ情報を検索すると、簡単に納得情報が得られた。以下はその例である。 |
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ということで、オリーブの木の花は両性花と雄花で構成されていることについて確信を持つことができた。以下は観察した花の様子である。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
オリーブの両性花と雄花の様子 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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花は5〜7月、前年枝の葉腋から円錐花序をだし、芳香のある黄白色の花をつける。萼筒は浅く4裂し、花冠も4裂する。両性花では1個の雌しべと子房が確認できるが、雄花では雌しべと子房が貧相であるか、ほとんど退化している。花が小さい割りには2個の雄しべの葯が大きく、葯が裂開すると花粉が流れ落ちる。花粉を完全に放出した葯は褐色となる。 なお、新牧野日本植物図鑑で、雄しべが2本ないし4本としているが、雄しべが4個の花は確認できなかった。 |
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<参考メモ> | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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これらをみると、自家不結実性については品種により強弱があることがわかる。 また、Aの資料を読んでピンと来た。 山手線田町駅の芝浦口側、芝浦運河通りに、唐突にもオリーブの街路樹が見られる(冒頭で紹介)のであるが、芝浦公園沿いの3本を除いて花も実も見ないのである。ひょっとすると、海外での経験則を踏まえ、賢明にも都市部での植栽用として、花をつけにくい品種を選定したものなのかも知れない。オリーブの花粉によるアレルギー症状は国内では栽培実態のある香川県の小豆島に限られている模様であるが、花粉アレルギーの元凶のひとつとして突然に袋だたきとなったら大変であるから、想像通りであれば正しい選択なのかも知れない。 しかし、 調べてみると先の "Swan Hill" 及び "Wilsonii" の名の品種は花はつけるが花粉はほとんど出さず、実をつけないタイプとされているから、花がないのは品種由来とは考えにくい。ということは、やはり強い剪定で花つきが抑制されているのであろうか? そこで、真相を知りたく、港区の関係部局にメールで照会したところ、たぶん担当でもわからないのであろう、全く音沙汰なしである。 そもそも花も実もつけないオリーブでは、まったくオリーブらしくないとも言え、何とも情緒に欠けて寂しい限りである。 |
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*世界大百科事典(世界有用植物事典も同様)にはなぜかオリーブの花として、雄しべが2つ描かれた花の図を「雌花」として掲載している。オリーブには単性花の雌花はないからこれは誤りとなる。単に花としたかったところが、誤植で雌花としてしまったのであろうか。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
【追記 2021.4】 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
オリーブの核、種子、胚、芽生えの様子 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
以前にオリーブの種子の発芽テストをしてみたのであるが、発芽率が非常に悪かった経験がある。オリーブの種子は非常に硬くて厚い内果皮(核)に包まれていて、種子の保護には都合が良さそうであるが、発芽にはかなりの試練になっているのではないかとの印象があった。 調べてみると、小豆島のオリーブ園の経営者のHPがあって、オリーブの実生栽培に関して紹介していた。本業での増殖はもちろん挿し木であるが、手すさびでの実生栽培の経験も十分あって、要約すると以下のようなあっけない方法であった。 そもそもオリーブは発芽率はよろしくない。しばしば種子の尖った部分をペンチでカットするとよいと紹介されているが、腐敗を招きやすくおすすめできない。要は湿り気が多めの土に浅植えして、放っておけばよく、芽が出たらラッキーと思えばよいということである。 こんなことを言いながら、自分の苗畑にズラリとオリーブが発芽した写真を紹介しているのは癪に障る。文句を言っても仕方がないので、もう一度変わり映えのない発芽テストをしてみることにした。 |
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(オリーブの芽生えの経過) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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【追記 2021.5】 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
種子内の胚乳から取り出した胚だけで果たして成長できるか | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
これはお遊びである。オリーブの硬い核を割って何とか取り出した種子はもったいないため、胚乳を割って取り出した胚を剥き出しのままでしばらく水に浸漬しておいたところ、胚乳から隔離された状態にあるにも関わらす、緑色になってきた。せっかくなので、水を含んだスポンにの割れ目に挟んでおいたところ、何と子葉が展開した。こそで、これを植木鉢の土に植えたところ、ちゃんと本葉を展開したのである。以下の写真はその様子である。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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【追記 2021.5】 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
オリーブの材の様子 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
オリーブの材を使ったキッチン用品をしばしば見る。カッティングボードやボウルが多いが、個性的な色や木目模様が魅力である。そもそも、オリーブは木材の生産を目的として植栽、栽培されるものではないから、オリーブオイルの生産を目的とした植栽樹に気象害や虫害があって、更新するために伐採されたものが加工に回されるものと思われる。 オリーブの木はスギやヒノキのように通直には育たないため、採取される木材は短尺のものが多く、大きな家具材にはならないようである。 次の写真はオリーブ材のカッティングボードの例である。 |
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なお、オリーブの材に関する講釈として、次のような例を目にした。 【.woodassistant.com より抜粋】 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
オリーブ材はOlea europaea とOlea. capensis という2種のオリーブの木に由来する。 オリーブの木は高さ40メートルにも成長することができるが、こうした例はまれで植栽管理されたものの多くは高さ10メートル、径1〜1.5メートルほどになる。 オリーブ材は強靱であるが、外部要素や昆虫の影響を受けやすい。このため、一般に屋内家具や小さな木製品として目にする。外観的には一貫した肌目や木目、そして加工時に極めて独特なフルーティーな香りがあることが世界中で有名である。 オリーブの材は防虫、防腐に必須の天然オイルが少ないのが欠点で、屋外での使用には適していない。屋内で長くもたせるには、オリーブ材の家具では長年にわたって外部要素に曝されないように処理する必要がある。加えて、生のオリーブ材は乾燥が難しく、この過程で反りが生じる可能性がある。これを避けるため、オリーブ材は低温乾燥窯によって非常にゆっくりと乾燥する必要がある。 |
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