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カラタネオガタマ(トウオガタマ)の様子 |
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カラタネオガタマ 唐種招霊 Michelia figo (syn. Michelia fuscata)は、中国南部原産のモクレン科オガタマノキ属の常緑小高木で、トウオガタマ、バナナノキの名前も目にする。花はバナナに似た強い芳香があることが広く知られていて親しまれている。中国からの渡来時期に関しては江戸時代(中期)とする説と明治時代初期とする説の両方を見る。英語名はそのものずばりの
banana shrub 又は banana magnolia である。中国では含笑又は含笑花と、興味深い名称となっている。平開しない控えめ、清楚な開き方の花の様子に由来するのであろうことは想像できる。 |
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カラタネオガタマの葉
一般にシキミの印象に近いといわれている。 |
カラタネオガタマの若い枝
若い枝には褐色の毛が密生する。 |
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カラタネオガタマの花 1
写真を撮るにはしばしば花を少々開かせてもらう必要がある。 |
カラタネオガタマの花 2
花被片の赤紫色の縁取りがアクセントになって美しい。 |
カラタネオガタマ・ポートワイン
Port Wine Magnolia (品種) |
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<カラタネオガタマに関する参考メモ>
注:断りのない場合はカラタネオガタマに関する情報で、オガタマノキの情報についてはその旨を記している。 |
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暖地の日当たりのよい湿気の多いところを好み生育する常緑低木~小高木。庭園、公園、学校などに植栽し、芳香ある花を楽しむ。神社、寺院などにも植えられる。(原色樹木大図鑑)
*神社での植栽はむしろオガタマノキの方が大きくなるために存在感を示している。 |
| ・ |
宋の李綱の含笑花の賦に「南方花木の美なるもの含笑に若くはなし」とあり、コブシ台木に接ぐか、取木又は挿木によって増殖する、挿木は根づきよしとはいへない。(?)台湾夫人は黒髪の上にこの花を飾りにする。(樹木大図説)
*繁殖は挿し木によって容易にふやすことができる(原色園芸植物図鑑)との記述がある。 |
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中国では「含笑花」と称し女性がこの花で頭髪を飾る風習がある。(園芸植物図譜) |
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花の香りが非常に高く、バナナの香りがする。1日のうちで、香りが最も高いのは午後3時から4時ごろまでである。(植物観察事典) |
| ・ |
増殖は実生、取木、挿木による。(園芸植物大辞典) |
| ・ |
花を茶の原料にする。品種に帯赤色花のポートワインPort Wine Magnolia とよばれるものがある。繁殖は挿し木。(生物大図鑑 園芸植物Ⅱ) |
| ・ |
オガタマノキの和名はオキタマ即ち招霊(注:「招魂」としている説明もある。)の伝にて之を神前に供し神霊を招祷(オキ)奉る故オガタマと云ふと謂へり、又是れオカダマ即ち小香実にしてオカは小香即ち香ひ、タマは其実の形ち玉に似たれば云ふとも謂へり、又サカキの真物は此樹なりとの説あり。(牧野日本植物図鑑) |
| ・ |
招霊(おがたま):神霊のやどる神の木といわれモクレン科の花はやや紫を帯びた白色で果実は毬果状をなす 神代の天宇受売命(あめのうずめのみこと)が天岩戸の前で「かぐら」を舞ったときこの枝を持っていたと伝えられ鈴のような実を結ぶため「かぐら鈴」の起源といわれる(大分市西寒多神社のオガタマノキの看板) |
| ・ |
招霊の木:(モクレン科(別名黄心樹)天鈿女命(あめのうずめのみこと)此の枝をもち舞わせ給い 神楽鈴の起源であると伝え例年4月頃白い花開花 秋に鈴様の実を結ぶ 常陸宮殿下(義宮)昭和29年御成年式 昭和39年ご結婚に際し苗木を献上す おがたまの花が常陸宮家の御紋章及殿下のおしるしであります
(高千穂町天の岩戸神社のオガタマノキの看板) |
| ・ |
オガタマノキの名はオギタマ(招霊)の転訛、この枝を神前に供えて神霊を招きたてまつることから、オガタマ(小香玉)、オガミタマ(拝魂)の転訛など、諸説がある。カラタネオガタマのカラタネ(唐種)は渡来した意味。オガタマは招霊(おきたま)の転訛したもの。また、オガタマは小香実で、オカは小香、つまり香のことで、タマは実の形が玉に似ることによる。(木の名前) |
| ・ |
カラタネオガタマの名は、ごく希にしか結実しないことから「実の付かないオガタマ」という意味の名前です。(京都府立植物園)
*非常にわかりやすくておもしろい説であるが、出所は明らかでない。 |
| ・ |
属名 Michelia はイタリアの植物学者P. A. Micheli (1679-1737)を記念してつけられた。(原色園芸植物図鑑)
*例によって全くつまらない身内での命名の事例である。 |
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カラタネオガタマの果実に関する情報 |
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目にした国内の複数の図鑑類の範囲ではあるが、特に園芸分野の図鑑でしばしばカラタネオガタマの結実が希であることに触れていたが、一般の図鑑では結実の特性については特に触れていないのがふつうで、さらに集合果の形状に関して記述している図鑑類は皆無であった。
WEB上の画像検索(性格上、正確性は期待できないが)でも日本語、中国語、学名で試しても果実に関する有用な情報は得られなかった。そこで、中国植物誌と中国樹木誌を調べたところ、さずがに原産国で、集合果の形状に関しては基本的な情報として記述されているが、残念ながら本種の結実の特性に関しては特段の記述は見られなかった。ということは、中国内では特記すべき性質はないとも受け止められる。(あとで再検討) |
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| 樹木大図説 |
果実は極めて稀に結実するが大体オガタマノキに同じである。 |
| 生物大図鑑 園芸植物Ⅱ |
果実はまれに結実し、秋に成熟する。 |
| 原色樹木大図鑑 |
種子の結実は少ない。 |
| 最新園芸大辞典 |
果実は少ないが結実する。 |
| 講談社園芸大百科事典 |
まれに実を結ぶ。 |
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国内の図鑑でカラタネオガタマの果実の性状に関する記述が見られないのは、国内でのデータ不足及び自生種ではないことから、早々に諦めているものと思われる。 |
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| 中国植物誌 |
集合果は長さ2-3.5cm、袋果は卵形または球形、頂端部はくちばし状に短く尖る。花期は3-5月、果期は7-8月。 |
| 中国樹木誌 |
集合果は長さ2-3.5cm、果梗は長さ1-2cm、径1-2mm; 袋果は扁卵円形又は扁球形、先端はくちばし状に短く尖る。花期は3月-5月、果期は7月-8月。 |
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カラタネオガタマの果実に遭遇!! |
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カラタネオガタマについては稀にしか結実しないためにその情報が少ないことを確認できたが、たまたま多様な緑化樹木を展示したある公園にカラタネオガタマが5本植栽されていて、何とそのうちの1本だけが、控えめではあるがそこそこの果実を付けていることに目が留まった。成熟前ではあるが、幸いにもカラタネオガタマ果実との初めての対面であった。 |
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| カラタネオガタマの果実 1 |
カラタネオガタマの果実 2 |
カラタネオガタマの果実 3 |
カラタネオガタマの果実 4 |
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| カラタネオガタマの果実 5 |
カラタネオガタマの果実 6 |
カラタネオガタマの果実 7 |
カラタネオガタマの果実 8
これは珍しく袋果が多い。 |
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| カラタネオガタマの果実 9 |
カラタネオガタマの果実 10 |
カラタネオガタマの果実 11 |
カラタネオガタマの果実 12 |
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果実(集合果)はたった1つから2つの袋果のみからなる場合が多く、オガタマノキやモクレン属の樹種に較べると集合果の袋果の数ははるかに少なく、貧相で、しかもまばらにしかついていなかった。このため、案外見過ごされていることも多いものと思われる。 →(注を参照))
なお、経過観察した複数の個体では、集合果はいずれもピンクに色づくことなく、緑色のまま裂開して赤い種子を出していた。
ところで、先程の5本の樹が実生木であれば、個体差が生じる可能性を理解できるが、挿し木や接ぎ木によるものであれば個体差の存在は理解しにくいものとなる。しかし、残念ながらこれらの個体の素性はわからない。
また、仮に中国でふつうに結実が見られるのであれば、日本で結実が少ない理由が例えば花粉の媒介に適合した甲虫が少ないないとか、興味深い背景が想定されるところであるが、中国での結実の特性の情報が得られないのはもどかしいことである。
そもそもオガタマノキ属の樹種は国内ではオガタマノキ1種が自生するのみであるが、中国樹木誌では、アジア熱帯、亜熱帯及び温帯に約60種、中国に約35種産するとしていて、さらに中国植物誌では、約50余種存在し、中国に約41種産するとしているから驚きである。(図鑑掲載リストは次項で紹介)
| (注) |
カラタネオガタマの果実を確認して目が慣れたせいか、追ってあちこちのカラタネオガタマの植栽樹についてよく見ると、ポツポツと 果実をつけている例が多いことを確認した。確かに実の付きはよくないが、それほど珍しいものでもないことを知った。 |
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中国産オガタマノキ属の樹種の例 |
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中国樹木誌には中国に産するとするモクレン科 オガタマノキ属(中国名 木蘭科 含笑属)の26種1変種が掲載されている。さらに、中国植物誌ではこれらをカバーして、41種3変種が掲載されていて、ほとんどの種の名称に「含笑」の文字が含まれている。
これらでは傲慢にも台湾に産するものも自国の台湾省に産するものとして扱っていて、それがたまたま日本にも自生するオガタマノキで、中国名は台湾含笑(台湾名烏心石 )である。
念のために、各樹種の結実の特性に関する情報を探したが、白蘭を除き、特に記述は見られなかった。
また、何れの図鑑でもそうであるが、例えば香りに関して必ずしも均質に記述が整理されているものではないため、結果として言及のないものはまるで香りがないような印象を持つことになる。外国の樹種では確かめようがないが、程度の差はあれ、モクレン科の樹種ではそれぞれがそれなりの香りを持っているものと推定される。下表のリストの整理に際しては、「芳り」の欄では香りに関する言及内容だけを抽出して整理した。 |
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<中国樹木誌・中国植物誌掲載のオガタマノキ属樹種> 青字は中国植物誌固有の掲載内容 |
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| 区分 |
中国名 |
学名 |
香り |
その他の中国名
その他参考事項 |
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絨葉含笑 |
Michelia velutina |
- |
- |
| 2 |
黄蘭 |
Michelia champaca |
花は橙黄色で強く濃厚な芳香がある。花から芳香油や煎茶が得られ薬用にもなる。葉からは精油が得られ香料となる。
花は黄色で強く濃厚な芳香があり、芳香油が得られる。 |
黄玉蘭、黄緬桂
有名な鑑賞樹種
和名:キンコウボク(金香木、金厚朴)
花の精油はチャンパカ champaca oil の名がある。 |
| 3 |
白蘭 |
Michelia alba |
花は白色で強い香りがある。花から精油や燻茶が得られ薬用にもなる。新鮮は葉からは香油が得られ、「白蘭油」と称して精油となる。有
小枝の葉には芳香があり、新鮮な葉から香油が採れて「白蘭葉油」の名がある。
花は白色で強い香りがあり、精油や薫茶が得られる。 |
白蘭花、白玉蘭
有名な庭園観賞樹種。果実を見ることは少ない。
花及び葉の精油が市販されている。 |
| 4 |
南亜含笑 |
Michelia doltsopa |
- |
Michelia doltsopa ' Silver Cloud '(シルバークラウド)が知られ、芳香がある模様。 |
| 5 |
多花含笑 |
Michelia floribunda |
- |
- |
| 6 |
峨眉含笑 |
Michelia wilsonii |
花は黄色で芳香がある。 |
- |
| 7 |
川含笑 |
Michelia szechuanica |
- |
- |
| 8 |
雲南含笑 |
Michelia yunnanensis |
花は白色で強い芳香がある。葉に香気があり粉末にして抹香となる。
花は白色で強い芳香があり、エキス剤が得られる。葉にも香気があり、抹香となる。 |
皮袋香
優良な観賞植物
和名:ウンナンオガタマ
ウンナンオガタマノキ |
| 9 |
紫花含笑 |
Michelia crassipes |
花は紫紅又は黒紫色で強い芳香がある。
花は紫紅色又は深紫色で強い芳香がある。 |
和名:アカバナオガタマ(流通名) |
| 10 |
野含笑 |
Michelia skinneriana |
花は淡黄色で芳香がある。 |
- |
| 11 |
含笑 含笑花 |
Michelia figo |
花は淡黄色で芳香がある。花弁は茶葉に入れ花茶となる。葉の芳香油は薬用となる。
花淡黄色で甘くて濃厚な芳香があり、花弁を茶葉に入れて花茶とすることができ、また芳香油が得られ薬用とする。 |
中国での属名の代表種
花が全開しないために「笑いを浮かべる花(含笑花)」と称する。
和名:カラタネオガタマ
紫色の栽培品種 Michelia figo ‘Purple Queen’も知られる。 |
| 12 |
苦梓含笑 |
Michelia balansae |
花は白色で淡緑色を帯び、芳香がある。 |
苦梓、緑楠、八角苦梓、春花苦梓 |
| 12-a |
細毛含笑 |
Michelia balansae var. appressipubescens |
- |
- |
| 13 |
黄心夜合 |
Michelia martinii |
花は黄色で芳香があり、芳香油が得られる。
花は淡黄色で芳香があり、芳香油が得られる。 |
烏氏含笑 |
| 14 |
長蕊含笑 |
Michelia longistamina |
- |
- |
| 15 |
楽昌含笑 |
Michelia chapensis |
花は淡黄色で芳香がある。 |
- |
| 16 |
亮葉含笑 |
Michelia fulgens |
- |
- |
| 17 |
金葉含笑 |
Michelia foveolata |
- |
- |
| 17-1 |
灰毛含笑 |
Michelia foveolata var. cinerascens |
- |
- |
| 18 |
醉香含笑 |
Michelia macclurei |
花は白色で香気がある。
花は白色で芳香があり、香精油が得られる。 |
火力楠 |
| 18-1 |
展毛含笑 |
Michelia macclurei var. sublanea |
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- |
| 19 |
白花含笑 |
Michelia mediocris |
- |
苦子、吊鱗苦梓、苦梓 |
| 20 |
平伐含笑 |
Michelia cavaleriei |
- |
- |
| 21 |
闊瓣含笑 |
Michelia platypetala |
- |
雲山白蘭花、広東香子、闊瓣白蘭花 |
| 22 |
香子含笑 |
Michelia hedyosperma |
花には芳香がある。 |
黒枝苦梓、香子楠 |
| 23 |
石碌含笑 |
Michelia shiluensis |
- |
- |
| 24 |
深山含笑 |
Michelia maudiae |
花は白色で芳香がある。
花は純白で芳香があり、芳香油が得られ、薬用にもなる。 |
光葉白蘭花、莫夫人含笑花
庭園観賞樹種となる。
和名:深山含笑 ミヤマガンショウ(流通名) |
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台湾含笑
烏心石 |
Michelia compressa |
芳香があるとする記述は見られない。 |
台湾白蘭花、黄心樹
「烏心石」は台湾での呼称、
台湾では主要な用材樹種の一つである。
和名:オガタマノキ、トキワコブシ、ダイシコウ
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壮麗含笑 |
Michelia lacei |
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- |
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狭葉含笑 |
Michelia angustioblonga |
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灰岩含笑 |
Michelia calcicola |
- |
- |
| 29 |
美毛含笑 |
Michelia caloptila |
- |
- |
| 30 |
雅致含笑 |
Michelia elegans |
- |
- |
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素黄含笑 |
Michelia flaviflora |
花は淡黄色で香気がある。 |
- |
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福建含笑 |
Michelia fujianensis |
- |
- |
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鼠刺含笑 |
Michelia iteophylla |
花は白色で香気がある。 |
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| 34 |
西藏含笑 |
Michelia kisopa |
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チベット、ネパール産。 |
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溜葉含笑 |
Michelia laevifolia |
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- |
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長柄含笑 |
Michelia longipetiolata |
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- |
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長柱含笑 |
Michelia longistyla |
- |
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厚果含笑 |
Michelia pachycarpa |
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多脉含笑 |
Michelia polyneura |
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球花含笑 |
Michelia sphaerantha |
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| 41 |
黄花含笑 |
Michelia xanthantha |
花は黄色で香気がある。 |
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よく知られるギンコウボク(銀香木、銀厚朴)Michelia ×alba は、中国原産のキンコウボク Michelia champaca とインドネシアの Magnolia montana (syn. Michelia montana )との雑種で観賞用などに栽培され、芳香がある(植物の世界ほか)とされ、かつては Michelia longifolia の学名が与えられていた模様である。一部の書籍では、ギンコウボクは Michelia alba (中国名 白蘭)であるとしているなど、見解がいろいろである。
さて、ここで先の疑問点を整理してみる。
「国内植栽のカラタネオガタマの結実が少ないのは本来の姿なのか?」という点である。
本家中国において、カラタネオガタマがふつうに結実しているのであれば、日本に渡来したものがたまたま実の付きの悪い個体で、これが無性繁殖され続けてきたことになって興味深いのであるが、本家中国の図鑑でもカラタネオガタマの果実に関して特別の記述がないのは先にも触れたとおりである。この詳細は不明で、その他の同属樹種でも白蘭についてのみ滅多に実をつけないことに触れているだけであった。ただ、WEB版の中国植物誌で多数見られるカラタネオガタマの画像でも果実の画像は種子を放出した後の貧相な抜け殻の集合果が1点見られるだけであるのを見ると、中国でもカラタネオガタマの結実はよろしくないのかも知れない。
さらに、表の整理をしていて、新たな疑問が生じた。
日本にも自生する分布するオガタマノキに関して、国内では一般に(バナナの香りではない)強い香りがあることが知られているが、中国の図鑑ではこのことに一言も触れていないのである。そこで、つまり
「台湾産と日本産のオガタマノキは本当に同一種なのか?」 という疑問である。
そこで、再度各種図鑑をパラパラ見てみると、一般的には国内産と台湾産のものは同一種として取り扱っている(中国の先の図鑑でも同様)が、台湾産のものを変種としてタイワンオガタマ Michelia compressa var. formosa とする見解もあることがわかった。
その場合、タイワンオガタマは ① 葉が細い(日本の野生植物)、② 葉形が特に小さい(樹木大図説)、③ 葉がやや小さく、下面は白味を帯びないでやや質が薄い(原色日本植物図鑑) 等の説明を見るが、香りの強さの違いに関しての情報は見つからなかった。しかし、台湾産のものは香りが弱いことが明確に確認されれば理解が深まるのであるが・・・ |
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<参考メモ:日本と台湾のオガタマノキの材の利用> |
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オガタマノキ属の樹種は総じて材が堅くて重く緻密であることから、有用な材としての利用が見られるようである。
こうしたなかで、カラタネオガタマは灌木で、その材は原産国の中国でも特に記すべき利用実態はないようであるが、オガタマノキは大きく育ち、材質もよいことから、全く位置づけが異なっている。ただし、国内では出材がほとんどないため、市場での定着した評価を見ない。このため、話は自ずと台湾産の材の利用に関する情報となる。 |
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| 西寒多神社のオガタマノキ |
柞原八幡宮のオガタマノキ |
天の岩戸神社のオガタマノキ |
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神社でしばしば見るオガタマノキは何れも大きく育っていて、花や果実を付けてもはるか上空の出来事であり、じっくり検分することが難しいのがふつうである。カラタネオガタマであれば背が低いために、花の香りを堪能することができる。 |
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| 木の大百科 |
タイワンオガタマ Michelia compressa var. formosa
(本書では台湾産のものはオガタマノキの変種として扱っている。)
高さ30m、直径1mにも達する。台湾、フィリピンにあり、石垣島、西表島、与那国島にも分布する。台湾では大木になる良材の一つでかなり伐採されたが、現在造林もいくらか行われている。材は均質・緻密で用途が広く、建築、車輌、家具、器具、農機具、紡績用シャトル、楽器、鉛筆、彫刻などがあげられる。 |
| 台湾植物誌 |
台湾名:烏心石 Michelia compressa
樹高は20m又はそれ以上となり、直径は1mとなる。南日本から琉球諸島、台湾まで分布。 |
| 中華民国荒野保護協会 |
台湾名:烏心石 Michelia formosana
樹高は20m~30mに達する。木材は広葉樹の一級木で家具や建築用として適合する。材質は緻密で、木理は均一、まな板の好材料で、家庭の主婦が最も好む。心材の色が濃く、しかも石のように堅いことから烏心石の名がある。日陰や風に耐え、汚染に対する能力があり、病害が少ないため、街路樹や公園緑地の景観植物となっている。綠斑鳳蝶(コモンタイマイ Graphium agamemnon )の食草である。 |
| 中国樹木誌 |
中国名:台湾含笑 Michelia compressa
(日本に分布するものも含めて同一種とする立場である。中国植物誌と同一内容。)
高木で、高さは17mに達し、胸径は1mに達する。
台湾における主要な用材樹種の一つである。材質は堅重で木理通直、肌目は緻密、開裂しない。建築、家具、造船、車輌、農具、彫刻や細木工の用材として供される。 |
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オガタマノキの材の様子を身近で見ることはできないが、「烏心石 木材」の語で画像検索すれば、台湾における製品例を目にすることができる。心材は赤みを帯びた褐色で美しく、まな板(砧板)を1枚手に入れたくなる。 |
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国内で見られるモクレン科樹種の花と果実の例 |
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以下は目にしたオガタマノキ属とモクレン属樹種の花と果実の様子である。
モクレン科樹種の香りに関しては、よく香るホオノキやカラタネオガタマの印象が強いが、何れもそれなりの香りがあるようである。ただし、時間帯によって香りの放散量が異なるとか、人によってはちっとも匂わないとかいった具合に感受性には個人差があるなどから、客観的な表現は難しく、図鑑の表現もまちまちである。
また、北米産のユリノキ属のユリノキ以外は蜜を出さないと思われ、匂い(この場合は人が感じなくても昆虫にとっての匂いである。)で甲虫類を誘引して花粉を運んでもらっているようである。 |
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