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続・樹の散歩道 スイカズラ属のいかにも美味しそうな実を食する
ある樹木園で鮮やかな紅色の薄皮に包まれた、いかにも美味しそうな実(液果)が目に入った。対生の葉の表面に沿うように果柄を伸ばして対で2個の実を付けていて、既製品の樹名板には「ネムロブシダマ Lonicera chrysantha var. crassipes」とある。初めて聞く名前である。外観は「ねえ、お願い! 食べて!」と言っているような美味しそうな外観である。まずは美しい果実の写真を撮ってから、試食することにした。 期待しながら一粒を口に入れると、全く甘みがなく、さらに言えばそもそも味が全くない。がっかりしてプッと吐き出した。この果実に関して図鑑ではどんな解説をしているのかを知るため追って確認してみた。 【2014.6】 |
1 | 奇妙な名前の低木の正体 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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じぇじぇじぇじぇじぇっ!! ネムロブシダマの果実は〝有毒〟とある!! しかも、「ブシ(附子)」とはトリカブトの意とある!! ウッウ~・・・・ まずくてすぐに吐き出したものの、しっかり口に入れたことを思い出した。 ところが、図鑑の説明や写真と見較べてみて、またもやびっくりであった。「ネムロブシダマ」として植栽されていたものは、何と明らかに全くの別物であることがわかったのである。 にわか勉強したところでは同じスイカズラ科スイカズラ属のヒョウタンボクの仲間である「エゾヒョウタンボク」と同定した。 |
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実は、こうしてわかっても、全く安心材料にはならない。何しろ一般に有毒のイメージが定着している「ヒョウタンボク」の文字が入っている。しかしながら、このエゾヒョウタンボクに毒性があるのか否か、肝心なこの点に関する明確な記述が見当たらない。そもそも、正確な知見が得られているのか、いよいよ気になったことから、さらに他の図鑑類で調べてみることとした。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2 | スイカカズラ属の仲間の毒性は? 図鑑類その他の情報で、特にヒョウタンボク類を含むスイカズラ科スイカズラ属植物の毒性に関して触れた部分に着目して抽出すれば、以下のとおりである。 |
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以上のリストで概観すれば。
といったことを確認した。 ヒョウタンボクの仲間に関する図鑑の記述では、特定の種について有毒としているものをしばしば見るものの、個々の種(しゅ)では必ずしも毒性に関して統一的に触れているものではないことがわかった。つまり、現在に至るも、体を張って個々の種の毒性に関して検証をした人がいないということである。たまに、ある種で「苦くて食べられない」とだけ記述した例も見られるが、その後の具体的な症状(変調をきたしたのか否か等)の記述がないのは実に残念であり、不満である。 そもそも、毒性に関しては、如何なる重篤な症状に陥るのかについての実証的・客観的な記述こそが大切である。 口に含むだけなら普通は問題はないから、せめて甘いのか苦いのか、あるいは舌がピリリとするのかだけでも横断的に調べればレポートになるが、これさえ見かけないのは果敢な挑戦者がいないということなのであろう。(もちろん、当方は妻子が大切であるから、挑戦する気持ちはさらさらないのは言うまでもない。) とりあえず、仕方がないので、説明の混乱が見られたハナヒョウタンボクについて、恐る恐る口に含んでみた。「果実は甘くて食べられる。」としていた図鑑がみられたが、甘味は全く感じられず、「食べられる」とした内容も益々怪しさを感じる。 |
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3 | さらなる怪しい看板の存在 なお、怪しい樹名板のあった樹木園には、ヒョウタンボクの仲間として他に「キンギンボク」と「チシマヒョウタンボク」とした樹名板のある植栽木も見られた。改めて樹名板にとらわれることなく、素直な心で検証してみると、キンギンボクは正解であったが、チシマヒョウタンボクとしていたものは、花時期の記憶では花色が確か白色~黄色であった記憶があり、またしても間違いのようである。こうなると、もう楽しくて仕方がない。 そこで、撮った写真を図鑑と見較べると、何と! 「チシマヒョウタンボク」の看板を掲げた低木こそが「ネムロブシダマ 根室附子玉」そのものと判明したのである。以下の写真は(たぶん)真正のネムロブシダマと思われる個体の写真である。 |
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この公的な樹木園(場所はマル秘)では、ほかに例がないほど実に楽しく魅力的な “ミステリーゾーン” をしばしば発見できることから、大好きな樹木園の一つとなっている。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
4 | スイカズラ属のきれいな花と美味しそうな果実たち 以下はスイカズラ属の変化に富んだ美しい花と、いかにも食欲をそそる美味しそうな果実たちの例である。ただし、「スイカズラ」だけは食用になりそうもないことが直感的にわかる。 |
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注:飛び入りの「セッコウボク」はスイカズラ科シンフォリカルポス属 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
<追記:西日本での同様の事例> | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
以下の写真は西日本のある公的な樹木園で、「ヤマヒョウタンボク」とした樹名板を付された低木であったが、これほど鮮やかな紅色の花を付けているから、明らかにヤマヒョウタンボクではない。では、北海道に分布するベニヒョウタンボクかとなると、花の様子が異なるし、葉には毛がないからどうも違う。 これはたぶん、しばしば園芸的な利用実態があるとされる外来のアカバナヒョウタンボク(赤花ヒョウタンボク) Lonicera tatarica 又はその栽培種と思われる。ヒョウタンボク類は樹木園の鬼門か? |
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