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木あそび
  ニマを楽しむ 


 「ニマ」とはアイヌ語で「くり鉢」を意味し、アイヌがこのニマを作る技法を指して、通称「ニマ工法」と呼んでいる。秋岡芳夫氏の著作で初めて知り、さらに、氏を中心とする木工体験の集まりで教えをいただく機会に恵まれた。
 ニマは水分をたっぷり含んだ生木を、器を想定して必要な長さに切り、これを縦に半割して皮の側から彫って船型の器に仕上げるのが標準的なタイプである。生材は柔らかいため、ノミを使うとサクサクと気持ちよく、手早く彫ることができる。
  



 生材は普通、乾燥に伴ってどうしても木口面から一定の深さまで割れが入るが、ニマの作成に際しては、早めに器をある程度薄く仕上げれば割れないとのことである。(木固め塗料を利用した割れ防止のテクニックもある。)  彫りやすくて割れにくいとは、このことだけでも感動ものである。また、器の縁の部分に木の皮を残すことで味のあるものとすることができることも魅力である。
(注)樹種により、乾燥に伴って樹皮が剥がれやすいものがあり、これ自体は避けようがない。
   
   習作 1

素材はイヌエンジュ。(以下同様)
半割した丸太を材料にして、皮の側から彫り進めたもの。最もオーソドックスなかたちで、最も彫りやすい。イヌエンジュは辺材が白いので、やはりこれを残した方が面白い。
習作 2

これは、芯を持った状態の丸太を材料にして彫り進めたもの。ユニークなかたちとなる。
習作 3

これは、木口から彫り進めたもの。木口をきれいに彫るのはなかなかしんどい。しかし、仕上がりは最もまともである。ウレタン系の木固め(後述)をたっぷりしみこませてあるため、汁物を入れてもOKである。




習作 4

習作1のバリエーションで、少々浅くして、両端の形を変えてみた。
習作 5
上記の材料よりも径の細い小丸太を使用。彫り方は「習作1」と同じで、長さが55センチほどあって、フランスパンを入れると様になる。
 
道 具  ニマをつくるには、丸ノミがあればOKである。体験の集まりでは、秋岡氏の「ばんかき」という手前に掻き削る道具や、こね鉢の仕上げにも使われる「前鉋」(槍鉋より細身で反りが大きいもの。「笹鉋」とも。)を使わせてもらった。
塗 料  水気の物を入れないのであれば、オイルフィニッシュでしっとり仕上げるのもよし。
 水気の物を入れる場合は、ウレタン系の定番塗料として「木固め」がよく知られている。
(http://www.monomono.jp/kigatame_a/)
参 考  製品としてのニマは販売もされている。以下はその例。

白樺ニマ:北海道置戸町 オケクラフトセンター森林工芸館
 北海道ではごく普通にあるシラカバであるが、爪楊枝の材料になっても木工・クラフトの素材としては積極的に使われることがなかったものに大きな付加価値生み出した。非常にきれいに仕上がっており、シラカバを見直してしまう。
ウッドアート楽:大分県大山町(TEL 0973-52-2032)
 旧名称の「梅の木工房」の時代に店を拝見した。大山町は梅を特産としており、この梅の木の古木を素材として、時松辰夫氏の指導を得て若者グループが始めたものである。ウメの木の深みのある材色が印象的である。ウメの材は元々緻密で、櫛、数珠、算盤玉などにも利用されてきたとされるが、花はおなじみでも材に接する機会は少ないため、その意味でもおもしろ味がある。