木あそび
研磨炭(研ぎ炭)の使い心地
木炭の様々な実用的な効用に関しては近年多方面で再評価され、生活との接点も随分拡大した感がある。しかし、炭を研磨材として利用するのは伝統工芸や特定の工業分野に限られるものと思っていたところ、漆工芸用の研ぎ炭に加えて、生活用品としての研磨炭(研ぎ炭)が北陸の村(現在は町)で生産され、現に販売されているのを確認した。 【2009.6】 |
これには絶滅危惧種に出会ったような感動を受けてしまった。研磨炭はその生産地が減少して、現在では福井県の旧名田庄村(現おおい町)のみとなっていることが知られているが、この製品も旧名田庄村の産であった。 家庭用の研磨材としては既にクレンザーが主役となって久しく、その利便性からクリーム状のクレンザーがふつうに利用されているのは周知のとおりである。研磨炭は使い勝手の点ではクリームクレンザーに対しては劣勢であることを否定できないが、個人的にはその機能性を試さずにはいられない。なお、ついでに言えば、実に環境に優しい研磨材である。 |
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家庭用研磨炭の商品説明チラシ | |||||||||
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■名田庄総合木炭 木戸口武夫 福井県遠敷郡名田庄村(おにゅうぐんなたしょうむら。現おおい町)井上49-20-1 TEL0770-67-2908 説明のチラシにあるとおり、柔らかめのアブラギリと硬めのホオノキを素材とした2種類の研磨炭がセットとなっていて、硬さの異なるこれらを対象によって適宜使い分けることになっている。 利用の基本は木口面を利用することで、他の面は研削力が弱いため使わないようである。説明書きによれば、両者の使い分けを次のように記述している。
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☆ 浴室鏡の湯アカ取り試験 この試験は説明書きには用途として記載されていない内容であるが、真っ先にやってみたい内容であった。 手順は簡単で、2種の炭の炭のいずれかを水に濡らして、その木口面で擦るだけである。洗剤が不要である点は実に具合がよい。なお、炭はきれいに切断されていて、木口面は概ね平面になっているから、そのまま使用できる。 試験結果は、湯垢はきれいに除去することができた。しかし、わずかに鏡面に擦り傷が生じてしまった。これについては、アブラギリの炭を主体にして丁寧に水平に当て、あまり力まずに加減して擦れば大丈夫と思われる。2種類の炭はいずれも鏡よりわずかに硬度が高いようである。これは全く予想外であった。 鏡の湯垢取りについては、専用のペースト状の研磨剤も販売されているが、一般家庭ではクリームクレンザーやいろいろな身近な酸を利用したりと、それぞれ悪戦苦闘しているようである。何が一番具合がいいのかをまだ知らないが、いろいろ試してみる価値がある。 |
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<参考メモ:漆工芸の研炭> 【2015.8 追記】 | |||||||||
漆工芸用の研炭は現在でも漆器産地では不可欠の製品となっている模様である。塗面の研磨という目的に適合した炭とするための焼成方法が採用されていて、しかも原料の樹種による特性が古くから知られていて、製作工程で使い分けがなされているというのは興味深い。以下は漆工辞典(漆工史学会編 2012.11.30 角川学芸出版)ほかの関係分の抜粋である。 | |||||||||
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注:先の福井県の生産地では、駿河炭のほか、朴炭、呂色炭、椿炭等も生産している模様である。 | |||||||||
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