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カラムシとは |
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道端のカラムシ |
カラムシの葉裏
白い綿毛が密生している。 |
カラムシの雌花序 |
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カラムシ : イラクサ科カラムシ属の多年草。 Boehmeria nipononivea
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葉の表面はざらつき、裏面は白い綿毛が密生して白っぽい。雌雄同株。雄花序は茎の下部につき、雌花序は茎の上部につく。葉の裏面に面毛がないものをアオカラムシ var. concolor という。カラムシより全体に大型で、茎や葉柄に灰白色の粗毛があり、葉が卵円形で大きいものを ナンバンカラムシB. nivea という。繊維をとるために栽培されたものが野生化している。この変種がラミー var. candicans で、繊維が水に強くて丈夫なので、船舶用の網や漁網などに使われている。
カラムシ(茎蒸)の名は、茎(幹(から))を蒸して皮を剥ぎ、繊維をとることによる。この繊維は長くて丈夫なので、越後上布をはじめ、昔から上質の織物が作られている。【山渓 野に咲く花】
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A |
栽培種には、葉の裏面に白毛が密生する白チョマ(カラムシ)と、毛のない緑チョマ(アオカラムシ)とがある。白チョマは古くから日本、中国など温帯で栽培され、繊維は良質。茎からとった粗繊維は丈夫で水に強く、ロープや網、消火ホース、蚊帳(かや)などにする。またブラジルではコーヒー豆を入れる袋をつくる。この粗繊維からペクチン質を除き精製すると光沢の美しい強い繊維がとれる。このため灰汁(あく)につけ、水洗いしては雪上にさらす。布を織ってさらすのが「縮」、さらした糸で織ったものが「上布」である。
なお、緑チョマはおもに熱帯で栽培され、繊維の品質は劣る。【平凡社世界大百科事典】 |
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<比較用:アオカラムシ(緑チョマ)の様子> |
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アオカラムシ(葉表) |
アオカラムシ(葉裏) |
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材料の調製 |
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写真はカラムシの皮から外皮を削ぎ落としたものである。透けるほど薄くぺらぺらであるが、艶があり、強い繊維性を感じさせる。 |
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カラムシの紙漉きは一般的でないため、以下はミツマタ等を我流で処理した方法に準じて実施した。 |
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葉を落とした茎の皮を剥ぐ。簡単につるりと剥ぐことが出来る。 |
A |
剥いだ皮をまな板の上に載せ、包丁など手近な道具を使って表皮を削ぎ落とす。残った内皮は淡緑色半透明のぺらぺらで、艶があって、強い繊維であることがわかる。 |
B |
繊維が非常に長いため、適宜短冊状に切断。 |
C |
重曹で煮る。 |
D |
板の上で金槌で叩き、繊維を解して洗浄。これを適宜繰り返す。 |
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出来上がった「カラムシ和紙」 |
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はがき大のカラムシ100%の紙 |
同左拡大写真 |
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(気づきの点) |
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カラムシの皮を剥いた後に表皮をそぎ落とすと、目的とする残る内皮は透けるほどに薄く、したがって、三椏などに比べると繊維の収量歩留まりは非常に低いことがわかる。 |
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カラムシは先に試した三椏や姫楮と異なり、贅沢なことであるが、紙を漉くためには繊維が長すぎて、繊維を解すのが難儀である。ミキサー(ミル)にかけたところ、案の定、回転部にこんがらがってしまったことから、方針変更して、繊維を短く切った後に叩くことにした。 |
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細くて長い繊維は引っ張りに対して非常に強く、出来た紙を引き裂く実験はしていないが、紙としても強度に優れていることは間違いない。 |
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【追記 2013.4】 |
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カラムシ(チョマ 苧麻)や大麻(アサ)を素材とした和紙が 古代においては貴い高級紙とみなされ、「麻紙(まし)」の名があったということである。 |
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<参考1:麻とは>
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世界で使われてきた麻は、主に三種類ある。苧麻(ちょま。イラクサ科のカラムシ)、大麻(たいま。クワ科)、亜麻(あま。アマ科。リネン)で、前の二つは主に中国、韓国、日本などの東洋圏で、亜麻はエジプト、ヨーロッパなどで用いられてきた。今日街で見かける麻シャツ地は、ヨーロッパ産の亜麻の機械紡織糸によるものである。【別冊太陽 日本の自然布:2004.1.5、株式会社平凡社】 |
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<参考2:各地の上布> 【産地別 すぐわかる 染め・織りの見分け方:株式会社東京美術】 |
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越後上布
(新潟県越後地方) |
重要無形文化財。織りあがった布を雪晒しして仕上げている。 |
能登上布
(石川県鹿西町) |
近江から技術を導入したもの。石川県無形文化財。「蚊絣」と呼ばれる模様で知られる。 |
近江上布
(滋賀県湖東地方) |
生平と絣柄がある。板の上で手揉みをする独特の仕上げ法によって出されるしぼ(皺しわ)も近江上布の特徴。 |
八重山上布
(沖縄県石垣市) |
織り上げ後、10日から1ヶ月ほど日に晒した後、八重山上布だけの手法である海晒しをする。 |
宮古上布
(沖縄県都島) |
重要無形文化財。島がかつて薩摩藩に属していたことから、「薩摩上布」とも呼ばれた。 |
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<参考3:ラミーカミキリ> |
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ラミーカミキリ Paraglenea fortunei
ラミー(カラムシ)、ムクゲに集まり、幼虫はラミーの茎、ムクゲの幹・枝を加害し、下降して成長し、冬季には幼虫態で地中の株の中に入り翌年5・6月蛹化、まもなく成虫となり外部に出る。斑紋の変化が多くいろんな型が知られる。分布は本州、四国、九州、支那、台湾、トンキン。 【保育社原色日本昆虫図鑑】 |
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写真はカラムシが大好きなラミーカミキリである。美しくないカミキリが多い中で、随分おしゃれな名前で、姿形もおしゃれである。運よく写真が撮れたが、落ち着きがないカミキリであった。素性を確認すると、中国からカラムシの仲間であるラミー Boehmeria nivea を導入した際に国内に侵入した帰化種とされている。「ラミー」の名前については、以下の説明が見られる
「ラミーという名は、マレー半島で生産された苧麻をマレー語で Rami と呼び、その後麻を賞用するフランスを経て “Ramie” として各国に波及し、現在では世界の通用語となっています。」 【日本麻紡績協会】
ユニークで美しい模様から人気がある。全体としては模様が燕尾服姿に見えるという感想が多い。胸部の二つの黒い紋はおしゃれなサングラスに見える。 |
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【追記 2014.11】 |
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都内の意外なところにカラムシの大群落が!! |
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カラムシの大群落の様子 その1
場所は皇居の南西側、桜田濠の土手である。写真は上からお堀を見下ろした状態で、カラムシが優先してびっしり生えている。 |
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カラムシの大群落の様子 その2
斜面を遠望した写真であるが、カラムシはあくまで雑草として存在しているため、刈払い作業が行われていた。斜面が急であり、刈払い機による作業としては、少々怖い条件である。 |
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【追記 2015】 |
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カラムシの葉を食うフクラスズメ Arcte coerulea
の幼虫
フクラスズメはヤガ科の蛾で、カラムシはその食草の一つである。この大きく育った幼虫は、外からの刺激を感知すると、体をブルンブルンと揺すって気味が悪い。写真は頭の黒いタイプである。成虫は地味であるが、幼虫はよく目立つ。
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