トップページへ   木あそび目次へ

木あそび
  櫛の十三や

         東京と京都 どっちが本家? 


 「十三や」の看板を出す櫛屋が東京と京都にある。東京は上野池之端、京都は四条で、いずれも横看板は右書きである。

 東京の店は元文元年(1736)創業で、2007年時点で271年の歴史を刻む。店主の竹内勉氏は14代目で、台東区無形文化財〔工芸技術。平成15年3月指定〕でもある。
 一方、京都の店は明治8年(1875)創業。「京都唯一のつげ櫛御調製處」、「初代(治三冶)より現五代目に至るまで、つげ櫛を作り続けて百有余年。」との講釈である。

 京都の「十三や」は訪問したことはないが、両者を少々調べた結果を整理すれば以下のとおりである。

両者は直接の関係はない。
店の歴史は圧倒的に東京の店が古い。
「十三屋」の名前は江戸時代、「くし」が「九四、苦死」に通じるのを嫌って使用された言葉遊びの看板表記で、決して特定の店の独占的屋号ではない。
「十三や」の名称は登録されていない。
東京の店の製品用の袋には意識してか「本家」の文字が入っている。
京都の店では、表記は同じでも読みは「とみや」であり、回りが勝手に「じゅうさんや」と読んでいるだけであるとの未確認情報があったが、京都の店のメールアドレスは jusanya@kyoto-shijo.or.jp であり、自ら明確に「じゅうさんや」の読みで名乗っている。
両者は屋号に関して特に表立って争っている様子はない。
                   東京上野池之端 十三や       製品用の袋
 
 十三やの名前は「く」(九)+「し」(四)=十三のしゃれであることは広く知られていて、焼き芋のことを「栗(九里)より(四里)うまい」にかけて「十三里」と呼んだ言葉遊びと似ていて、江戸時代の遊び心がおもしろい。商品名や屋号をめぐる争いがしばしば見られる中で、静寂であることが何よりである。
 なお、話がややこしくなるが、京都には別につげ櫛専門店の「十三屋」があるとのことである。こちらも読みは「じゅうさんや」である。
 
【東京】十三や(十三や商店)
 東京都台東区上野2-12-21
【京都】十三や(十三や株式会社)
 京都市下京区四条通寺町東入ル13
【京都】十三屋
 京都市東山区五条橋東六丁目583-68
(こちらは少々新しくて、明治20年創業で、横看板は左書き)