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木あそび
 
  箸いろいろ
             


 デパート等の箸コーナーもなかなか充実していて、素材も多様、塗りも多様、形状も五角形、八角形があるなど、にぎやかで楽しい。毎日使うものであることに加えて、家庭でも各人専用となっていることが多いために意識されている面があるものと思われる。ここでは、普段あまりお目に掛からない製品を含めて紹介する。【2007】 

@イチイ箸

上:イチイ 天削(てんそげ)
中:イチイ 利休
いずれも北海道産材で、機械削り。手作りの箸は割木をして材料調整をするため、木目が通っているが、機械作りとなると歩留まりは向上するが、木目が切れるのは避けられない。

下:イチイ 面取り(手作り)
長野県産材で、手削り。天然のイチイは、年輪が非常に詰まっていて美しく、赤味のある色とその希少性が価値となっている。




A木曽ヒノキ箸(手作り)

長野県木曽産。天然の木曽ヒノキは元々材が適度に柔らかく均質で、刃物で快適に削ることができるのが特徴でである。名人は非常に少ない回数で、シュルシュルと長くてきれいな削り屑を出して仕上げる。鉈で小割りしたものを材料としているため、目が通っていて、仕上げ面も刃物で削った面であるため非常になめらかである。ヒノキはその香りがまた魅力となっている。



Bイスノキ箸

 
九州産。贈答用の夫婦箸で、箱には縁起を担いで「結寿箸」とある。「ゆすはし」と読むことになるが、「ユスノキ」はイスノキの別名でもある。この木の堅さを考えると、ナイフで削るのは至難の業である。
Cオノオレカンバ 

秩父産。オノオレカンバの製品といえば、長野県の「お六櫛」と岩手県の「プラム工芸」の小物が思い浮かぶ。これは埼玉県は秩父の箸製造者の製品。
物産展に出品されていたもので、素地のオノオレカンバの箸は珍しいため、喜んで買ってしまったものである。こういう半製品はなかなか手に入らない。プラム工芸のオノオレカンバの五角箸は1膳で3千円近いが、こちらは3百円程度であったように記憶している。やや白く見えるが、無塗装のためで、塗料に濡れればオノオレカンバの茶褐色のいい色になる。生漆を擦りこむのもよしで、まだ寝かせてある。
「はしや」秩父市中村町1-3-7
Dヒバ箸

ヒバの白木の箸はあまり一般的ではない。ヒバはその強烈な抗菌性やヒノキチオールをたっぷり含むことで知られるが、ヒノキとは異なるやや癖のある強い匂いから、箸としての利用に躊躇する向きもある。写真の製品は機械作りのため目が切れているほか、やや粗いサンダー仕上げのため表面にざらつきがあるのは残念である。

中西建具センター工芸部
青森県むつ市田名部槌川目24−8




E銀製箸(925)

銀はその色沢が魅力であるが、抗菌性についても強調したした製品も多い。銀の箸は特定の毒物に反応して変色する性質を利用して、かつて毒味用の箸にも使用されたとか。

先端部は滑り止めの加工を施してある。他にリング上の模様の滑り止め加工をしたものもある。
銀は変色するのが難点とされるが、変色を防ぐためには毎日使うのがよいとのことである。長く使えそうである。

浅草 もり銀
東京都台東区浅草1-29-6


Fステンレス製箸

ステンレス箸の本家は韓国であるが、見かけるものはステンレスの細くて平たい角棒状態で、慣れないと使う自信がない。
一方、和風箸のステンレス版が出回っている。

写真上

ステンレスの和風箸はいずれも中空・角柱構造で、重くなり過ぎないように配慮されているなかで、この箸は肉厚でやや重いが、持ち手部分の太さは普通でこの中では最も手に馴染む。先端部はやや細めである。多分国産と思われる。

写真中
LUCKYWOODの製品で、全体はやや細めで、先端部は削った鉛筆のような形状になっている。

写真下
中国産で一番軽く、しかも細いためやや頼りない感じである。最近多くの店で扱っており、価格も最安で2百円から3百円の間である。先端部は中国箸と同じでやや太めであるが、滑り止めの模様がある。ただしこの効果はほとんどない。【2008.1追加】
   ステンレス箸3種

 ステンレスのミラー仕上げの製品は銀の箸よりもツルツルしているため、好みが分かれるかも知れない。LUCKYWOODの製品にはサテン仕上げも用意されている。
   先端部拡大写真

G陶製箸

従前から持ち手側の端だけをアクセントとして陶製とした箸があることは承知していたが、全体が陶製のものはこれが始めてである。上半分は釉薬が掛かっていて手に馴染みやすく、下半分はわずかにざらついていて滑り止め効果が発揮される。強度は未知数であるが、スリルがあっていい。
【2008.1追加】
箸に関して気付きの点をメモすれば次のとおり。
塗り箸  塗り箸は福井県の若狭塗箸が圧倒的なシェアを有する。いいものは漆塗りで、ほとんどはフェノール樹脂塗装の大量生産の製品である。使いやすいのは先端に滑り止めのざらつきを付けた製品である。塗り箸もいいが、最近は食洗機に耐えないと生存が厳しくなって、食洗機対応の塗り箸も見られる。そこそこの製品であれば、かなりの耐久性がある。
堅木素地  紫檀、黒檀等の唐木を含めて、国産広葉樹の比較的堅い樹種の製品が見られるなど、バラエティーに富んでいるのはおもしろい。唐木類は見ても本物か否かはわからない。紫檀やツゲは怪しい気がする。白南天はナンテンではない。注意すべきは、色の濃い樹種で、ウレタン塗装のものと無塗装のものが見られるが無塗装のものでは台所の樹脂系カウンタートップにシミを付ける場合がある。ウレタン塗装は使っているうちに先端部分がはげて、素地が白くふやけてくるのは避けられない。
針葉樹素地  割り箸以外ではあまり見かけない。木曽谷の漆器店では木曽ヒノキの素地の製品と、拭き漆仕上げとした製品を見た。木曽ヒノキの素地の箸は、特に麺類を食べるときには滑りにくくて使いやすい。青森ヒバの箸もまれに見かけるが、抜群の保存性の源である匂いは好き嫌いが生じる。
割り箸  割り箸の多くは中国等からの輸入品で、材料はポプラ類のアスペン、シラカバ、竹が多い。国産はトドマツ(北海道産)、スギがあり、上端を斜めに落とした天削タイプが上級品である。
 竹の24センチの天削げタイプは使いやすく、日常使いとして最適で、反復使用・食洗機にもよく耐える。都内の合羽橋の道具街では腰を抜かすほど安い。料理用の箸としてもタフである。


<参考>

 東京銀座に箸の専門店「夏野」がある。箸、箸置きの品揃えの豊富さはめまいを起こすほどである。各地の漆器産地の製品はもとより、あちこちの製作家の作品、貴重木、木材素地、面白デザインの製品も多数ある。金物が好きな人には、銀の振り出しや、テレビでおなじみのシャキーンの金の箸ももちろん置いている。箸の博物館状態である。日本の箸の文化もすごいものである。

銀座 夏野本店
東京都中央区銀座6-7-4 1F