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こうした店がこのような環境に立地していること自体が全く意外であった。そもそも、この種の格調高い工芸品は、好きでなおかつある程度の予備知識がないとその価値自体がわかりにくい面がある。多数の製品が展示されていたが、価格表示が全くなく、わかる人にだけわかってもらえばよいという経験に基づくスタンスが感じられた。要は素人さんに製品の価値を理解してもらうことは諦めているのである。 |
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以下は店内の様子の一部である。 |
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あすなろ工芸の店内の様子 1 |
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あすなろ工芸の店内の様子 2 |
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刳物の長手盆で、杢が出ているが肥松(脂松)とのことである。ふつうに見かける肥松とは随分印象が異なり、見る角度により様々に表情を変える。こうした肥松の製品を見るのは初めてである。
何とも魅力的な製品で、猛烈に欲しくなったが、価格が18万円では残念ながら、拝むだけで諦めるしかない。
■あすなろ工芸
岡山県津山市高野本郷1258-26
代表者 松本三郎
http://mei-boku.com/ |
あすなろ工芸の展示販売品の長手盆 |
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製品の素材は、やはりクワ、ケヤキ、肥松、黒柿といった定番の魅惑の顔ぶれが多い。製品の種類は茶箪笥、座卓、衝立、文机、茶櫃、盆、置物、壁掛け、銘々皿、花台等々、指物から刳物、彫刻まで、目も眩むような品揃えである。厳選した貴重な素材を利用し、確かな技術により丁寧に仕上げたられたことによる魅力であることを痛感する。さらに一角には萩焼の製品も見られた。
これらはすべて店の主が自らの目で選び各地から仕入れたものとされる。手に取りやすい角盆等の刳物の裏を見ると、それぞれに作家の銘が刻まれていて、聞けば既に故人が多いとのことである。さらに主によると、作り手が高齢化して減っていて、こうした物はやがてできなくなるであろうとの悲観的な見通しを語っていた。そうなってしまったら文化財である。
限りない魅力を感じる製品群であるが、改めて考えてみると、各種銘木関連製品と同様に、一般の生活感覚から、特に若い世代からは距離のある存在になってきていることは否定できない。生活・住宅様式の変化がこの傾向に拍車をかけているのである。やがて、伝統工芸展でしかお目にかかれないものとなってしまうのであろうか。 |
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