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木あそび
   ウッドクラフトは楽しい!


 親しみの持てる木製品や木製小物を身近に置き、あるいは実用品として生活の中でその感触を楽しむことで気分的なゆとりが得られる。しかし、家具類以外の実用小物となると意外と出る幕が少ないことに気づく。身の回りで、普段よく手にする木製品として何があるか身の回りを見渡してみれば明らかである。
 かつては生活に必要なもののほとんどが植物系、木質系のものであったわけであるが、金属や樹脂に置き換わったものも多く、要は素材が多様化したということである。モノをつくる素材は、その機能性、経済性といった観点から選択されているわけであるが、その一方で感性に素直に従って、敢えて木を選択するという嗜好面は今後もきっと変わらないであろうと思われる。
 以下は好感の持てる木のクラフト、その他の例である。 

1 北のフクロウたち

 北海道東川町の故太田久幸氏の熟練のろくろ技術による作品である。工業デザイナーの故秋岡芳夫氏がこれを書籍で紹介していた記憶があって、かつて同町に所用で訪れた際に入手したもの。このフクロウはデザインとしても永久保存ものである。
 
 下左のタマゴからヒナが顔を出した作品も太田氏の作品のシリーズである。下右のミニチュア版は、タマタマ札幌で見かけて購入(2005年)したものであるが、実は、これは太田氏に学び、氏の技術を継承した作家の作品であることを後日知った。
 いずれも素材はミズナラである。
 
2 オノオレカンバの肩たたき

  有限会社 プラム工芸(岩手県二戸市)
   
 
ここの製品は都内の複数の百貨店でも常設となっている。オノオレカンバへのこだわりが原点となっているようである。オノオレカンバの材の供給が先細りとなっていることを耳にして、あわててオノオレカンバの肩たたきを通販で購入した(2004年)が、未だにこの製品が供給されているのは誠に残念である。しかし、いつの間にかしっかり値上がりしていたのは喜ばしい。製品はこの材の強さを利用して首を細くした独特なデザインが印象的で、愛着の持てる一品である。
 この会社の取り扱い製品は、しゃもじ、スプーン、バターナイフ、箸等の台所、食卓用品のほか、靴べら、肩たたき、孫の手等がある。素材はオノオレカンバのほか、イタヤカエデ、唐木など。
 
3 スマートな孫の手

 ひきみ森の器工芸組合
 (島根県益田市匹見町 TEL 0856-56-1282)
 
 
 実は、写真の製品を購入したのは、オケクラフトはじめ各地の木工の技術指導で知られる大分県由布市湯布院町在住の時松辰夫氏の「アトリエときデザイン研究所」である。後日、この製品が「101種類の木の椀」で知られる島根県匹見町の製品であることがわかった。もちろんいうまでもなく、匹見町の木工は時松氏の技術指導によるものであり、秋岡芳夫氏がサポートしてきたことで知られている。
 前出のプラム工芸でもスリムな孫の手を作成している。孫の手はもちろん実用品で、その機能だけを考えれば、百円ショップでも竹のシンプルな製品を売っている。こちらはいずれも少々高いが、身近に置きたくなってしまう製品である。写真の製品の素材はミズメ
 
4 白い器 オケクラフト(北海道置戸町)

 オケクラフトセンター森林工芸館(北海道置戸町)    
 
 オケクラフトの生みの親、名付け親は故秋岡芳夫氏(工業デザイナー、東北工業大学教授)、技術指導は時松辰夫氏(アトリエ・ときデザイン研究所主宰、東北工業大学非常勤講師)と、いつものコンビである。
 エゾマツやトドマツを素材として仕上げが美しく、目の保養になる製品である。価格設定が当初から非常に高かったことでも知られ、北海道在住の市民のさめた感想もよく耳にした。
 しかし、地域での支援策もあって現在複数の工房でこれを生業とする者が育ったという事実があり、木工による地域興しの教科書のような存在である。写真の製品は地元の給食用セットで市販もされている。 
  
5 木のつべつの木の製品

 つべつ木材工芸館(北海道津別町)
 

 第一印象は、北海道の観光地の木工品とは一線を画したデザインの存在を感じたことである。道産の各種の材を素材としており、特にイチイの存在がアクセントとなっている。札幌在住でKEM工房主宰のウッドクラフトデザイナー煙山泰子氏の指導を得ており、製品ラインナップにも氏のKEMシリーズがある。
 右のトレーの素材は、ミズナラセン(ハリギリ)イチイ
 
6 小さな町のピエロたち

 工房 クラフトゆき(大分県由布市挾間町赤野 

  町はずれの静かなところにさりげなく工房がある。製品の主役はいろいろな仕草の木のピエロ人形である。デフォルメされたユーモラスで愛嬌のある姿で、デザインセンスもよく、そのために意外な印象を持った。合併前の挾間町ではこの「木製人形ピエロ」を特産品として認定していた。
 写真はお値段お手頃な小振りの製品で、高さは14.5センチ。いろいろな種類があって面白い。
 使用樹種は、帽子と靴はニャトー(アカテツ科)、本体はホオノキ、バイオリンは「赤杉」とのことである。赤杉とは耳にしない名前であるが、見たところは広葉樹である。Red cedar に由来する名前と言うことであれば、@センダン科チャンチン属の輸入材、Aエンピツビャクシン(Eastern red cedar)、Bベイスギ(Western red cedar)が候補となるが、広葉樹であるから@のセドロ、トゥーンなどが候補であろうか。
 台は手持ち品で、バットの材料になるアオダモの輪切りである。

【追記】
 この工房では、かあさんがガラス工芸を始めたようで、そのためか従来の名称は「木工房クラフトゆき」であったが、いつの間にか「工房クラフトゆき」に変わっていた。
 
7 旭川の小間物屋さん

 株式会社ササキ工芸(旭川市永山町)
 

 とにかく、品数の多いのにはびっくりものである。かつて、イベントの際のプレゼント用にお手ごろ価格の小物をまとめ買いしたことがあり、そのときも堅実、丁寧な物作りをしているという印象を持った。
 写真は美しいパンフレットの掲載品のごく一部。
 
8 豆カンナを携帯に?

 空沼工房(北海道札幌市 有限会社 三島木工)
 

 木のおもしろキーホルダー、携帯ストラップを製作している会社である。写真のカンナは本体長43ミリのミニサイズで、台はミズナラ、刃はイヌエンジュを使用している。しっかり二枚刃となっているのがうれしい。いろいろなシリーズがあって、これは道具シリーズの一つ。ほかにも黒板消しシリーズ、楽器シリーズ、森の木の実シリーズなどがある。材色の異なる木をうまく組み合わせて楽しい小物を楽しんで作っているといった印象。 
 
9 ティソのウッドウォッチ(木製腕時計)

 ティソ(TISSOT)はもちろんスイスの時計メーカーで、その歴史の中でユニークな時計を製造した実績がある。その一つがこのウッドウォッチである。1988年に世界初の木製腕時計として発売された。ケースの材はパイプの材料となるブライヤー(ツツジ科エリカ属)製である。
 写真は1991年にスイスで購入したもので、店ではこの時計の隣にティソが1985年に発売した、アルプス山脈の花崗岩を使用したこれまた世界初の石の腕時計「ロックウォッチ」が並んでいたのを記憶している。
 なお現在でも手に入る木製の腕時計としてはカナダTENSE社製のウッドウォッチがあり、材は白檀、メープル、ローズウッドの名を目にする。(2005年)
 
   
10 フランスの木柄のナイフ オピネルナイフ

 フランスの肥後守といったところで、ブナの柄材が手によくなじむおなじみのナイフ。値段がお手頃で、シンプルなロック機構と相まって、登山、アウトドアーの定番商品。サラミを切ったり袋開けなど、日常使いに都合がよくて重宝する。各種サイズがあり、刃はカーボンスチール(写真上)とステンレススチール(写真下)のものがある。柄材は写真のセイヨウブナのほかにも、ローズウッド、セイヨウトネリコ、オリーブなどもあるとか。ナイフであるが、やはり木の柄が主役といった風情である。
11 謎の木の椀

 
これは販売用としての展示ではなく、江東区の木場公園「木場ミドリアム」内に特別の説明書きもなく、単にガラスケースに収まっていたものである。目にしたスタッフに聞いてみても、全く素性はわからないという、奇妙なことになっている。たぶん、専任的な職員がいなくで、情報が途絶えてしまったのであろう。
 そこで、木材探偵団としての推定であるが、上記の3で触れた、島根県匹見町の製品で、かつて「101種類の木の椀」として取り組んでいたもの考えて、ほぼ間違いないであろう。現在では
 ひきみ森の器工芸組合としては、こうした製品は製作していないようであるが、どんな経過でここに存在するのかは謎のままである。たぶん当時のままの樹種名表示が個々に付されていて、まるで木材見本のようで見事である。