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刃物あそび
  和ばさみは生きている

      釣り道具としても健在 和ばさみの系譜 


 かつて、小学校で技術・家庭科の授業があった頃、大工道具セットと裁縫道具一式を斡旋されるままに買ってもらったことを記憶している。裁縫箱には握りばさみがしっかり入っていた。
 この和ばさみ、別に日本で発祥したものではないものの、近世、もっぱら日本で使用されていることに由来する名前のようである。
 和ばさみの特徴としてよく言われるのは、洋ばさみのような交差(中間支点)がなく、シンプルで小型、手に取ってワンアクション(刃を開く工程なしで)で糸などを切れるということである。また、先の鋭さは縫った糸を引っ掛け上げて切るにも都合がいい。
 【2007】


 美しい博多はさみで知られる高柳商店の和ばさみである。やはり緻密な仕上げで美しい。おなじみの「宇」の字が入っている。形は典型的な関西型で、関東型より刃が長い。

高柳商店
福岡市博多区冷泉町6−28
 こちらは刃の短い関東型の普及品である。千代とあり、福井県武生の越前刃物の可能性が高い。
 
 ところで、和ばさみの製品の紙箱に「御絹はさみ」とよく書いてある。何のことなのか、ある刃物屋のオヤジさんに聞いたところ、はっきりしないが、たぶん薄い絹の布でもよく切れるという意味合いで前から使っているのではないかという軽い見解が示された。
 これは釣り用具で知られるダイワの釣り糸切断用のはさみのひとつである。収納時サイズは46ミリほどのミニサイズである。
 これもダイワ製で、折り込み収納方式で、開き具合は3段階となっている。上の製品より刃が大きく、収納時サイズは74ミリである。ダイワは大手だけあって、しっかりした造りとなっていて、切れ味も全く問題はない。
 
 和ばさみの方式が、姿を変えて、特定の世界で健在なのは面白い。

ダイワ精工株式会社
東京都東久留米市前沢3-14-16