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刃物あそび
 
 ピラニア鋸の謎

             


 ピラニア鋸といえば、工作好きであれば誰でも知っている製品である。日本古来の胴付き鋸のように背に補強(背金)があって、鋸身は非常に薄く、また鋸目が細かいため小物の切断には大変重宝で、プラスチックはもとより、釘も切れるとされる。自分でも2本持っていて、昔のものは確か、「特許」、“made in USA”の表示があったようなかすかな記憶があった。次に予備用として買ったものは、同じくピラニア鋸の名前であるが「株式会社城端(じょうはな)ブレード」の製品と表示されている。いつの間にこうなったのかが謎で、前々から気になっていた。 【2007】


城端ブレードのピラニア鋸の初期モデル
両面に歯のあるモデル
背金の先端近くの一部を欠いているのは、背側にも歯を付けていることが見えるようにとの配慮と思われる。
東急ハンズとの共同企画製品折り込み式で、折り込み時の長さは約10センチ。釘を切ったことはない。

      登録されている商標
城端ブレードのグルーガン
ピラニアの名称は鋸に限定したものではなく、例えば同社のグルーガンにもピラニアの名称が見られる。


 調べてもわからないことは直接聞くのが一番である。株式会社城端ブレード株式会社に聞いたところ、おおよそ次のとおりであった。

 「20年ほど前までは、これが米国の特許製品で、輸入販売していた。特許切れ等を背景にして国産化し、「ピラニア」の名称を商標登録して現在に至っている。
 現在、米国製の同じようなデザインの製品が国内で見られるが、かつての製造元の会社は今はないことから、これとは全く別の会社の製品である。」

 以上の通りである。

 現在輸入されている米国製品のメーカーは、米国の Zona Tool (親会社 Blackstone Industries, Inc.)である。米国内での名称はこれまた国産の製品にも同じ名前が見られるがレザーソー(Razor Saw)で、デザインは胴付きで木柄に二本線がある点はピラニア鋸と瓜二つ。替え刃が補強の背金とセットになっている点が異なっている。製品のラインアップは実に多種多様で、ピラニア鋸も真っ青である。これらはホームページ( www.zonatool.com )で紹介されている。日本の輸入元は「株式会社伊東屋」で、製品にはなぜか特許申請中の表示(PAT.P)が見られるが、改めて何を特許申請しているのか詳しいことはわからない。また、驚くべきことに、本製品の日本国内での製品名は「ピラニアン鋸」である。何とも商売のたくましさを感じる。

 なお、「Piranha ピラニア」は登録商標となっており、鋸製品に限定したものではなく、同社のグルーガンについても「ピラニア」の商標が使用されている。(商標の権利者は会社ではなく、東京都杉並区善福寺 尾田菊枝となっている。

 ついでながら、随分前に購入した折り込みナイフ式のミニ鋸がピラニア鋸と同じような刃であり、ひょっとしてと思って会社に問い合わせたところ、やはり城端ブレードの製品であった。聞くところによると、かつて東急ハンズと共同企画で製品化したものであったことがわかった。昔、都内のDIYショーで、釘も切れますとして出張・実演販売していた記憶がある。現在は販売されていない。


ピラニア鋸は現在のところ、以下のような種類が販売されている。
@ T  ピラニア鋸の当初バージョンで、歯は片面のみ(上で紹介)
A U  両歯式で、刃を反転させれば新品に早変わり (上で紹介)
B 大  刃渡りの長い大型
C 畦挽き付き  鋸刃の先端上部が畦挽き鋸として刃付けされたもの
D 替刃式スタンダード  一般的な替刃式鋸のような方式で刃を取り替え可能なタイプ
E 替刃式ミニ   同タイプのミニ鋸
F 弦鋸タイプ


株式会社城端ブレード
東京都新宿区高田馬場3丁目1-5-425