|
|
|
一般的な腰鉈については仕様が標準化されている。選択肢として、刃部は両刃と片刃があり、重さは細身のものから幅広のものが用意されている。長さ(刃渡り)については通常は21センチ(7寸)のものが使いやすいため、販売されている製品もこの長さが最も多い。腰がうっとうしくない小振りのものが好みであれば、18センチ(6寸)のものがあり、少々長目のものが望みであれば24センチ(8寸)のものが販売されている。
しかし、30センチとなると少々異質のものとなる。理由は次のとおりである。 |
|
|
|
|
|
第一に、こんなに長くては、地面を引きずることはないにしても、うっとうしくて仕方がない。佐々木小次郎のように、背中に背負うわけにも行かない。
|
第二に、これだけの長さがどうしても必要な場面は全く想定できない。山の中でマグロの頭を落とすこともないであろう。
|
第三に、この長さが好都合となる場面も想定できない。これだけの長さがあると、少々刃こぼれしても、使用部位を次々と移動すれば長く使えると言えなくもないが、刃の研ぎも大変になるだけで、積極的に選択する理由は思い当たらない。
|
第四に、スキーの板と同様に、長身であれば何ら問題はなさそうであるが、そのためには身長が2メートル余程ないとバランスがとれない。
|
|
|
ということで、このタイプの鉈は実用品というよりも、趣味性の極めて強いものと理解した方がよさそうである。仮に、面白半分でこんなものを手にしたらついつい振り回したくなる恐れがあり、危なっかしいことになりかねない。あるいは、これを使って大鉈を振るうか・・・
写真の鉈も、ふつうの人には使い勝手があまりよろしくないため、持て余した揚げ句にお蔵入りとなってしまったものと思われる。
しかし、製品のバリエーションとしては興味深い。数は少ないものの同じサイズの製品が販売されている事例がしばしば見られるのである。道具については実用に耐える機能性が不可欠であるが、その一方で実用から少し離れた遊び、趣味の要素も道具の文化を支える力となっていることは事実である。これも市場のひとつの風景である。
こうして普段使いの生活用具とは少々趣を異にする製品をこの場で紹介して、道具、民具の参考資料として記録に留めることとしたい。 |