刃物あそび
絶滅寸前の目立て職人の技
刃物の産地である兵庫県三木市の金物祭りを見物した。依然として上質な鑿(のみ)、鉋(かんな)、鋸(のこ)を扱う店が多いのに驚いた。最近の大工は次第にこうしたものを使う頻度が低下しているはずなのに、一体誰が支えているのであろうかと不思議な印象を持った。こうした中で、祭りの演出として刃物研ぎ、鋸目立てを受け付けて実演している風景を目にした。 特に鋸の目立ては身近ではほとんど見かけなくなって久しい。たまに地方で「鋸目立て」と記した朽ちかけた看板を見かけても、今ではもうやっていないというのが普通で、大工鋸の目立てを生で見る機会がなかったため、これ幸いとじっくりと拝見させてもらった。 【2008.12】 |
近年の替刃鋸の大躍進の前に、伝統的な大工鋸であった両刃鋸を中心とした従来タイプの鋸は強烈な逆風下にあり、間違いなくその市場が細っている。大工も合板をどんな方向にもシャコシャコ軽快に切れる替刃鋸を愛用していると聞くし、目立てに回ってくる上質の鋸自体が随分減っているのであろう。 替刃鋸は片刃タイプが多いが、両刃鋸もある。「衝撃焼き入れ」と呼ぶ焼き入れ処理がされていて、表面硬度はなんと目立てヤスリの硬度を上回っている。「替刃鋸は目立てが効かない」とされる所以である。 祭り会場の一角で目立てを実演していた職人も、ボケ防止にやっているんだとやや自嘲気味に呟いていたが、今や貴重な伝統的な技術である。各地でも少なくなった目立て職人のもとには遠く離れた他県からの作業依頼もあると聞く。 山林用の腰鋸(手曲がり鋸)であればそんなに神経質になる必要はないと思われるが、大工鋸は鋸目が細かいし、横挽きの鋸刃は繊細な扱いが必要であろう。特に、胴付き鋸のような細かい目の鋸の目立てがどうしてできるのか、昔から不思議でならなかった。 |
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1 | 目立て風景 |
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2 | 道具拝見 |
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