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刃物あそび
 
     菊と刃物
             


 表題は「菊と刀」と張り合っているわけではなくて、話は全く関係がない。都内にはあちこちに刃物屋さんがあるが、なぜか「菊」の字のつく名前の刃物店が多いことが気になっていた。さて、何か由来があるのであろうか、それとも単なる偶然か。
【2008.2】   


 都心部で比較的名の知れた刃物屋さんで「菊」の字のつく店としては次の4つが思い浮かぶ。(創業以来の年数は京浜刃物専門店会の紹介文(2007.12.12)による。)
@  有限会社 銀座 菊秀
 東京都中央区銀座5丁目14−1銀座クイントビル1階
 100年近い伝統を持つ刃物の老舗。
 店名の「菊秀」は東京都中央区銀座5丁目14番1号 有限会社菊秀の登録商標。
(注)  別の「株式会社 菊秀」は神戸市内の大正8年創業の刃物店であるが商標登録はされていない。また、横浜市に「横浜 菊秀」があるが、大正4年に刃物専門店として横浜で創業した別の店である。
A  株式会社 菊季刃物店
 上野店(創業90年):東京都台東区上野4丁目4−5
 浅草店(創業80年):東京都台東区浅草1-5-1
 店名の「菊季」(読みは「キクスエ」。)は 東京都台東区上野4丁目4番5号 株式会社菊季刃物店の登録商標
B  銀座 菊藤
 東京都中央区銀座2-10-11
 昭和26年に当地で開店。「菊藤」の名は商標登録されていない。 
C  刃物司 菊一文字
 東京支店:東京都千代田区神田小川町2-1
 本店は京都市内で、明治9年創業。製品のチラシには、な、な、なんと!!「伝統七百有余年」とあるではないか!! 江戸の店とは格が違うようで、恐ろしいほどの伝統をうたっている。
菊一文字の製品チラシ




  「菊一文字」は京都市左京区北白川瀬ノ内町11番地泉富久子氏の登録商標となっている。
 チラシの文中ののマークは、乗馬の際の轡(くつわ)を図案化したものである。



 なお、三重県伊勢市には別の刃物店である「菊一文字則宗」がある。「菊一文字則宗」の名は三重県度会郡二見町大字江261番地木村修造氏の登録商標となっている。 
 以上の4店とも協同組合京浜刃物専門店会の構成員である。このうち@〜Bの店は何らかの縁戚関係があるとの話を聞いたことがある。深く詮索する気はないが、話としては面白い。

 菊は元々中国からもたらされたとされているが、国内での天皇家を含む家紋や表示、さらには長い園芸の歴史もあって、非常に親しみのあるものであると同時に、天皇家の家紋のせいか、やや格調が高い印象もある。多分その辺のねらいもあるのであろう。

 なお、裁ち鋏などで菊の紋が入った製品がある。大河原享幸(おおかわらたかゆき)、大河原辰雄(おおかわらたつお)両氏(兄弟)の手による打刃物である。「菊和弘」の商標と菊の紋(十弁一重菊)が裁ち鋏と包丁に刻印されている。裁ち鋏の最上級品は持ち手部分が溶接によらない総火造りの製法によることで有名で、高い評価を得ている。所在地は株式会社増太郎裁鋏製作所と同じ町内である。
        裁ち鋏の菊花紋          出刃包丁の菊花紋
和弘利器株式会社 東京都葛飾区金町1丁目10番8号